2007年10月5日(金)「しんぶん赤旗」
志位委員長 福田首相の基本姿勢ただす
「希望」と「安心」をいうのなら
日本共産党の志位和夫委員長は、衆院本会議での代表質問(四日)で、貧困と格差をどう打開するのか、財源問題にたちいって、福田・自公政権の姿勢をただしました。参院選で下された民意に応え、根本的で現実的打開策を示した論戦で浮かび上がったものは――。
非正規の規制にふみだす決意は
雇用
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「若者が明日への希望を持てる国」をつくるというなら、非正規雇用の規制にふみだす決意はあるか―。志位氏は、こう述べ、若者の間で広がる貧困への対応への首相の決意を鋭く迫りました。
大企業が空前の利益をあげる一方で、労働者の所得は減りつづけています。特に、懸命に働いても生活保護水準以下の生活から抜け出せない「ワーキングプア」への対策は、首相も「十分な注意が必要」と認めるように、待ったなしの政治的課題です。
政府は、一九九九年に派遣労働を原則自由化し、二〇〇四年には製造業まで拡大。この結果、人材派遣会社に登録し、一日単位で仕事に派遣される「日雇い派遣」に従事する労働者が若者を中心に急増しています。
「日雇い派遣」では、一日働いて得られる賃金は六千円から八千円。仕事がなかったり、体調を崩して休めば、たちまちアパートの家賃も払えなくなります。
志位氏は、「こうした働かされ方を強いられる若者が、いったいどこに明日への希望を見いだすことができるのか」と述べ、労働法制の規制緩和路線を根本的に見直すとともに、「日雇い派遣」をなくす対策を迫りました。
これに対し、首相は「『日雇い派遣』は不安定な働き方であり、さまざまな問題が指摘されている」と認めながらも、具体的な対策は、労働者派遣制度の「見直しを検討」と述べるだけ。
志位氏が「『ワーキングプア』の実態調査を緊急におこなうべきではないか」と提起したのに対しても、「既存の統計で、その把握につとめる」と、後ろ向きな姿勢に終始しました。
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予算抑制路線の転換こそ
社会保障
「お年寄りが安心できる国づくり」をいうなら、社会保障費抑制路線からの転換をはかる決意はあるか―。国の社会保障費は、小泉内閣発足後の二〇〇二年度以降、抑制されつづけ(図)、社会保障制度そのものから多くのお年寄り、国民が排除される事態が起こっています。志位氏は、この根本的な問題を指摘し、転換を迫りました。
医療分野では、高すぎる国保料が払えない世帯が保険証を取り上げられて「資格証明書」に置き換えられ、病院に行けず重症化、死亡する事件が続発。国民生活の最後の命綱である生活保護制度でも、生活困窮者の締め出しが横行しています。
志位氏は、連続して三人の男性が餓死、自殺に追い込まれる異常事態が起こった北九州市を例にあげ、「生活保護行政の現場で無法が横行している」と首相の認識を追及。首相は「生活保護の申請権を侵害しないことはいうまでもなく、侵害していると疑われる行為自体も厳に慎むことが必要」と答弁しました。
しかし、制度からの「排除」を生む原因である社会保障費抑制路線については、「引き続き歳出全般にわたる抑制努力をおこなっていく必要がある」などと主張。抑制路線を堅持していく姿勢を強調しました。
では、首相が公約した「高齢者医療費負担増の凍結」や「障害者自立支援法の見直し」の財源は、どうやってねん出するのか―。首相は「将来にわたり持続可能なものにする観点から、(社会保障)給付の合理化、効率化を進める」と答えました。それは結局、首相の公約も「一時しのぎの取り繕い」「他の社会保障分野への新たなしわ寄せ」(志位氏)にならざるを得ないことを示しています。
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大企業優遇と軍事費2つの「聖域」にメスを
財源
「消費税は一つの弁当を二食、三食に分けてぎりぎりの生活を耐え忍んでいる人々にも容赦なく襲いかかる税金だ」。志位氏は、社会保障の「安定財源」を消費税増税に求める福田首相の姿勢をただしました。
ところが首相は消費税に対する基本的な認識を示すことなく、社会保障などの安定財源を口実に「消費税を含む税体系の抜本的改革については、今後早急に本格的な議論をすすめる」と消費税増税に固執する姿勢を示しました。
これにたいして、志位氏は、大企業・大資産家へのゆきすぎた減税と年間五兆円におよぶ軍事費という二つの「聖域」を挙げ、ここにメスを入れれば、消費税を頼りにしなくても「財源をつくる道はいくらでもある」と強調。歳入・歳出両面での根本的な転換を求めました。
大企業はバブル期を超える空前の利益を更新しつづけながら、その税負担はこの九年間でほぼ横ばいで推移しています。自民党政治による五兆円規模(一九九七年度から二〇〇七年度)の大企業減税の結果、もうけ相応に大企業の税負担は増加していません。
この上さらに自民党政治は、大資産家にたいし、二兆円規模の減税を講じてきました。
志位氏は、ここを見直せば、「数兆円規模で財源がつくれる」と強調。歳入のあり方を転換して社会保障と暮らしのための財源を確保する道を示しました。
歳出の面では、年間五兆円規模の軍事費にメスを入れることを求めた志位氏。「まっさきに削減すべきは、アメリカの戦争を支援するための軍事費だ」と強調し、アフガニスタンとイラクからの部隊の撤退や海外派兵用の兵器の購入をやめることを求めました。
また、この二十九年間で累計五兆円を超過した米軍への「思いやり予算」の撤廃や、グアムでの米軍住宅建設費七千億円をはじめ三兆円にものぼる「米軍再編」計画の中止を求めました。
首相は、経済のグローバル化などを口実に法人実効税率の引き下げを正当化。さらに軍事費も、「同盟国である米国の協力および国際社会との協力に必要な経費」だと合理化しました。
憲法にそくして責任果たせ
テロ根絶
日本共産党の志位和夫委員長は、四日の代表質問で、海自による「対テロ報復戦争」支援の問題で福田内閣の姿勢をただしました。
戦争でテロなくせず
志位氏がまず強調したのは、テロにたいして戦争という手段で対応したことが問題の解決につながったのかを事実に即して検証することでした。
日本共産党は、二〇〇一年の9・11テロに際し、犯罪行為を糾弾しつつ、テロは“法にもとづく裁き”にかけることが必要で、報復戦争は事態を泥沼に導く危険があると訴えました。
その憂慮は現実のものになり、六年間の「対テロ報復戦争」で、テロは世界中に拡散し、アフガニスタンでは自爆テロが急増するなど、深刻な悪循環がおこっています。
志位氏は、こうした事実を突きつけ、「報復戦争は、テロ根絶に有効でないばかりか、事態の悪化をもたらした。戦争でテロはなくせない。この動かしがたい事実を認めるべきではありませんか」と迫りました。
福田首相は「アフガニスタンが再びテロの温床とならないようにする」と述べ、同国が「テロの温床」から脱したかのように答弁。一方で、「復興支援と治安・テロ対策の双方にとりくむことが必要」と述べるだけで、報復戦争がテロ根絶に有効である根拠を何一つ示すことができませんでした。
海自提供燃料で空爆
ここで重大なのは、海自が行っている活動が、この報復戦争への軍事的支援だということです。
志位氏は、海自から給油を受けた米海軍の強襲揚陸艦から飛び立った攻撃機ハリアーが、アフガン空爆に出撃している実態を、米側の資料を示して追及。海自が提供した油が、民間人も犠牲にしている空爆のために使われている事実を認めるのかとただしました。
福田首相は「不朽の自由作戦(報復戦争)に従事する米軍に対するわが国の補助活動は、(テロ)特措法に従って行っている」と述べて、事実上認めました。にもかかわらず、「(市民の被害を最小限に回避するよう)関係国は最大限考慮している」とも述べ、戦争の実態から目をそらしました。
テロ特措法にも背反
海自の給油が、イラク戦争に転用されている疑惑はどうか。
海自が米給油艦を介して給油した米空母「キティホーク」が、イラク南方監視作戦とイラク戦争に参加したことも明らかになっています。志位氏は、アフガン戦争への支援に限定しているテロ特措法にも背反するものだと批判し、給油活動の全貌(ぜんぼう)とともに、政府が「イラク戦争に転用された事実はない」というのであれば、証明する資料を明らかにすべきだと求めました。
福田首相は「防衛省において、再度確認している」と述べ、イラク戦争への転用を否定できませんでした。
最後に志位氏は、いま日本がなすべきこととして、「憲法に則して果たすべき責任」を三点にわたって強調しました(別項)。
福田首相は「海自の撤収は考えていない」と述べ、派兵継続に固執する立場を示しました。
■志位委員長の提案■
(1)報復戦争を支援する憲法違反の活動は中止し、海上自衛隊をインド洋から撤退させる
(2)テロ根絶の方途を、報復戦争から国連中心の警察と司法による解決、政治的解決を中心とした道へきりかえる外交努力を
(3)貧困と飢餓をなくし、干ばつ対策、教育改善など民生援助を抜本的に強化し、テロが生まれる根源を除去する