2007年10月5日(金)「しんぶん赤旗」
被爆の実態把握不十分
原爆症検討会で医師ら陳述
原爆症認定基準の見直しを議論する厚生労働省の「原爆症認定の在り方に関する検討会」(座長・金沢一郎日本学術会議会長)の第二回会合が四日、同省内で開かれました。日本被団協(日本原水爆被害者団体協議会)が推薦した医師と科学者、原爆症認定を審査する厚労省の医療分科会代表から意見聴取しました。
福島生協病院(広島市)の齋藤紀院長は、三十年間にわたり被爆者医療に携わってきた立場から陳述。疫学調査のデータを示して、一般と比べ被ばく線量が少なくてもがん発生のリクスが大きいこと、放射線被ばくが被爆者に持続的な病態をつくっていることを紹介し、残留放射線被ばくを軽視する「原因確率」では被爆者の実相を十分に把握することは困難だとのべました。
被爆者で物理学者の名古屋大学名誉教授の沢田昭二氏は、現行基準で考慮されていない残留放射線と内部被ばくについての研究結果を紹介。急性症状や時間を経てから起こる晩発性障害などから、遠距離被爆者や入市被爆者への放射線の影響を引き出すことが大事だと強調しました。
医療分科会の佐々木康人会長と草間朋子会長代理は、現行の「審査の方針」を説明。急性症状について草間氏は、下痢や脱毛は「放射線にあたらなくても起こる」との主張を繰り返しました。
会合後、記者会見した原爆症認定集団訴訟全国弁護団連絡会の安原幸彦副団長は、佐々木、草間両氏の発言を批判し、「現行基準の原因確率は維持し、小手先の手直しで済まそうとすることは受け入れられない。抜本的改定をめざしていく」と語りました。
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