2007年10月7日(日)「しんぶん赤旗」
始まった郵政民営化
手数料10倍も■簡易局閉鎖■集配廃止
塩川議員に聞く
十月一日からスタートした郵政分割・民営化。政府は「国民に不便をかけない」といいますが、簡易郵便局の閉鎖が相次ぐなどサービス低下に直面し、利用者から不安の声があがっています。サービスの現状や今後の対応について、日本共産党の塩川鉄也衆院議員(党国会議員団総務部会長)に聞きました。
遠のく金融窓口
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郵政民営化は、小泉内閣(二〇〇一年発足)以来の自民・公明政権が「構造改革の本丸」として推進してきました。そのなかでも小泉純一郎元首相や竹中平蔵元担当相らは「民営化で郵便局はなくならない」「サービスはよくなる、低下させない」と強調してきました。
福田康夫首相も所信表明演説で「利用者の方に不便をおかけしないよう着実に推進する」とのべています。この政府の「約束」がいま問われているのだと思います。
民営化後の現状について、三つの問題点を指摘したいと思います。
第一は金融サービスの低下です。十月一日から各種手数料が値上げになりました。これまで免除されていた印紙税負担分を利用者に転嫁するためです。例えば一万円以下の振込手数料(窓口払い込み)は、百円だったものが十月から百二十円になりました。定額小為替の発行手数料は十円から百円と十倍ものアップです。
ある新聞の投書欄には「郵政民営化で値上げは困る。値上げのための郵政民営化だ。国民はだまされた」との声も寄せられています。
簡易郵便局の廃止やATM(現金自動預払機)の撤去など、金融窓口の減少も重大です。
二〇〇五年三月末に、四千四百四十七局あった簡易局は四千二百九十九局(十月一日時点)に減少しています。今年一月以降だけでも、九十局が廃止になりました。
受託者がいなくなり一時閉鎖されている簡易局も四百十七局にのぼっています。
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局外に設置されたATMも年間利用三万五千件以下を対象に撤去が進んでいます。〇五、〇六年度の対象台数七百十九台のうち、すでに六百七十八台が撤去されました。〇七年度も百三十一台を対象にさらに削減を進めようとしています。
金融サービスに関してもう一つ指摘したいのは、一人の外務職員が郵便、貯金、保険の三事業すべての仕事をこなす「総合担務」が廃止されたことです。民営化に先立つ三月末に実施されました。以後は、郵便配達職員に貯金などを預けることはできなくなりました。「お金を貯金しようにも郵便局にいけない」というお年寄りから困惑の声があがり、「金融サービスから隔絶された人が増えている」との指摘も出ています。
日本郵政の西川善文社長は、簡易局減少の対策として「移動郵便車を増やすなどの手だても考える」としています。しかし、これでは従来どおりのサービスは維持しないことを告白しているようなものではないでしょうか。
遅配・誤配が増加
第二は郵便事業のサービス低下です。
一つは、集配郵便局の再編で千四十八局が集配業務を廃止したことです。集配廃止は過疎地の郵便局に集中しました。もう一つ、トヨタ方式(JPS)の導入によるコスト削減策による影響も重大です。
具体的には郵便物の遅配や誤配の増加、取り集め回数の削減となって表われています。時間外窓口の閉鎖も見逃せません。平日の朝、夕の時間や土日の数時間程度、時間外窓口を開設していた郵便局のうち、三千五百五十九局が取り扱いをやめました。
長期病欠3倍に
第三は、郵政労働者の労働条件の悪化です。トヨタ方式の導入と民営化移行に伴う労働強化が労働者の健康に悪影響をおよぼしています。精神疾患による長期病欠職員は十年間で三倍に増加しています。正規職員と非常勤職員(ゆうメイト)の健康保険証の書き換えに時間がかかり、空白が生じるという制度設計上の重大問題も起こっています。職員の中には受診抑制も起こっているといいます。
根本見直し求め全力 共産党
日本共産党は「郵政民営化は国民にとって百害あって一利なし」と反対を貫いてきました。現状は、その指摘のとおりになっています。公共性を投げ捨て、国民の共有財産を大企業の利潤追求に提供する「構造改革」路線の誤りを象徴しています。「官から民へ」のスローガンの欺まん性も明らかになっています。
郵政民営化法や附帯決議は「サービスの現行水準の維持」や、簡易局は重要なネットワークであることをうたっています。日本共産党は政府答弁や法律に反するサービス低下は許されないという立場でこの問題を国会で追及していきます。政府にはサービス低下の現状を検証するように要求していきたい。
金融サービスが全国の郵便局であまねく公平に提供されるために、金融のユニバーサル(全国一律)サービスを義務付けるなど、郵政民営化の根本的な見直しを求めていきたいと思います。
全国各地で「郵便局を守れ」「サービスの後退を許さない」という地域住民の運動が起こっています。日本共産党もそうした運動の前進のために力を合わせていきます。
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