2007年10月8日(月)「しんぶん赤旗」
ゆうPress
派遣だって人間だ!!
若者に仕事を
パワハラ・一方的契約打ち切り
仲間と立ち向かう
「私の命綱は日本共産党のホームページ(HP)でした」。派遣社員歴7年の八重山美和さん(28)=仮名=。派遣会社から派遣先の仕事を一方的に打ち切られ、途方に暮れているとき、日本共産党に救われました。首都圏青年ユニオンに加入した今、派遣会社に未払い賃金の支払いを求めて、労働審判でたたかいを始めています。 菅野 尚夫
美和さんが首都圏の大学で就職活動を始めた時は「就職氷河期」といわれ、有効求人倍率は0・59人。正社員への道は閉ざされ、アルバイトや派遣社員の就職先しかありませんでした。昨年友人が「疲れた」と言い残して命を絶ちました。長いこと仕事が無く、体を壊して生きる希望を失ってしまったのです。「ルートを絶たれたんです。私も、もし日本共産党や首都圏青年ユニオンのみなさんと出会わなかったら、同じ道を選んでいました」
美和さんからふとでた言葉は、ズシっと重い。「福田さん(首相)が『希望と安心の国づくり』を言うのならば、正社員の雇用を増やし、いつまでも派遣社員にとどめているような雇用制度は禁止にしてください」といいます。
◆ ◇
美和さんが解雇されたのは今年5月末でした。派遣先の映像制作会社との雇用契約は、まだ2カ月残っていました。
派遣先の会社は、テレビコマーシャルなどを手掛ける大手企業です。この会社の課長から、会議室に呼び出されて長時間にわたり、業務とは直接かかわりのない、「夢はあるのか」「なぜ契約を更新したんだ」など、詰問されました。
仕事について十分な説明もうけず、達成できそうにもないノルマを与えられました。「仕事が遅い」などと執拗(しつよう)に詰め寄られました。精神的に苦痛を与えられるパワーハラスメントでした。
美和さんは、恐ろしくなって、どうきが激しくなり、冷や汗がでてきました。上司の退室後、急性の呼吸困難に襲われ、トイレに駆け込みました。呼吸が落ち着くのを待ちましたが、なかなか回復しません。涙があふれ、ふたたび呼吸ができなくなり、トイレから出ることもできないのです。
「明日は来なくていい」。歩行もままならない美和さんに派遣先の映像制作会社の上司は、無慈悲に告げました。
トイレに「閉じこもり状態」となったのは午後6時半から9時半すぎでした。
後日、派遣会社は、「無断でいなくなって(派遣先の会社に)心配をかけた」という理由で、雇用契約を打ち切ったのです。
◆ ◇
漠然とした思いから「共産党なら助けていただけることがあるだろう」と、日本共産党のHPをのぞいていた美和さん。「若者に仕事を」のコーナーは「役に立つと2―3年前からチェックしてきた」といいます。弁護士らが労働相談に回答している欄などを見て、働くものの権利について理解を深めてきました。
事件後、HPのアンケートに自分の体験を書き込みました。
すると、親身になった返信が届きました。
さらに、HPの担当者が近くの党事務所に連絡し、地元の若者が訪ねてきてくれました。弁護士を紹介され、首都圏青年ユニオンを知りました。
「日本共産党から助言を受けるまで、どこに相談すればよいのか分からず、孤立したままでした。絶望して命を絶った友達の二の舞いになっていたと思う」と振り返ります。大学卒業後、美和さんが派遣社員として働いた会社は十数社。「どの労働組合が味方になってくれるのか分からず、人権侵害や不法な扱いを受けても泣き寝入りでした。首都圏青年ユニオンと出会って、近づきがたい存在だった労組が、頼もしい存在となりました」
8月に開催された「首都圏青年ユニオン夏祭り」に参加して、「どうしてよいのか分からずに、悩んで苦しんでいるのは私だけではない。協力してくれる仲間とともに解決できる」という確信を得て、「とても心強く思いました」。
美和さんの心の傷はまだ癒えていません。新しい仕事にもつけないでいます。それでも、働くものの権利と法律を知った美和さん。「だれかがやるのではなく、知識を得た私自身が理不尽な社会と立ち向かうんだ」と、歩み始めています。
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私の命綱
日本共産党ホームページ
日本共産党は、青年の雇用をふやすこと、人間らしく働ける職場をつくることは、日本社会の大問題と考え、その解決に全力をあげています。ホームページの中に「若者ネット」「若者に仕事を」のコーナーがあり、若い世代の深刻で切実な声がたくさん寄せられています。
首都圏青年ユニオン
1人でも入れる労働組合
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首都圏青年ユニオンは2000年12月に結成されました。パート、アルバイト、フリーター、派遣、正社員などどんな働きかたでも、どんな職業でも、一人でも入れる若者のためのユニオン(労働組合)です。組合員数は約320人。
この1年で、残業代未払い、不当解雇、社会保険・雇用保険未加入、退職時のいやがらせなどの問題にとりくみ、二十五の案件を団体交渉などで解決しました。
9月30日には第10回定期大会を開き、貧困とのたたかいの強化、400人の仲間を増やす目標、学習会の開催など、労働基準法以下で働かされている若者たちが人間らしく働ける社会にするための活動方針を決めました。
こうした「青年ユニオン」は、全国で相次いで結成されています。5・20全国青年大集会の後も、岩手、山形、滋賀、兵庫の各県で新たに結成され、全国で準備会を含めて約30ユニオンが活動しています。
お悩みHunter
「友達との用事」では有給休暇取れないの
正社員として働きはじめて、8年になります。先日、上司に「友達との用事ができたので、有給休暇をください」と言ったら、認められませんでした。「そんな理由ではだめだ。親や家族の関係ならいいが」といわれたんです。正直に言うんじゃなかったと後悔しました。 (30歳、女性)
理由を明かす必要はない
そもそもあなたは、理由を言う必要はありませんでした。
有給休暇は、働く者が健康で文化的な生活をし、自分らしさをとりもどすために不可欠の権利です。使用者は、正規・非正規を問わず、6カ月間継続して勤務し、8割以上出勤した労働者に与えなければなりません(労基法第39条1項)。
ですから、有給休暇をとる場合は、労働者がいつとるかを届け出ればいいのです。使用者の「承認」を取る必要はありません。まして、有給休暇をとる理由を明らかにする必要はないのです。
ただ、労働者が希望した日に休むと、事業の運営を妨げる場合にのみ、使用者は「別の日に休んでほしい」という「時季変更権」を有するにすぎません。
あなたの上司が「そんな理由ではだめだ」というのは、有給休暇を与えない理由にはなりません。
労働契約というのは、労働者が一定の時間、自分の労働力を提供する対価として賃金をもらう契約です。ですから労働時間以外の時間は、あなた自身の私的な時間ですから、上司にとやかく言われる筋合いのものではありません(ただし、休日でも会社の営業秘密保持などの義務はあります)。
会社に労働力を提供していても、あなたの人格まで会社や上司に従属させているのではないことを忘れないでください。
弁護士 岸 松江さん
東京弁護士会所属、東京法律事務所勤務。日本弁護士連合会両性の平等に関する委員会委員。好きな言葉は「真実の力」。
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