2007年10月11日(木)「しんぶん赤旗」
過酷な負担 貧困生む政治 大本から転換を
佐々木議員の総括質問 衆院予算委
日本共産党の佐々木憲昭議員が十日の衆院予算委員会でおこなった総括質問。大企業優遇の“逆立ち税制”、非正規雇用、企業・団体献金という焦点課題で福田内閣の姿勢を問い、国民的打開の道を示すものとなりました。
佐々木氏 法人税率戻し高齢者負担増正せ
福田首相 「国際競争力」口実に合理化
逆立ち税制
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「(参院選の結果は)年寄りをばかにしてきた政権与党の仕返しだ。年寄りはもう要らないから死ね、といわんばかりではないか」。佐々木氏は、参院選直後に一般紙に掲載された投書も紹介しつつ、高齢者にたいする過酷な負担増の是正を求めました。
自民・公明内閣による庶民増税・社会保障抑制路線の下、年金課税強化や低所得高齢者の住民税非課税限度額の廃止、定率減税全廃による過酷な増税が高齢者を襲いました。さらに、これらの増税に連動して国民健康保険料や介護保険料も跳ね上がってきました。(グラフ上)
佐々木氏の追及にたいし、福田首相は「社会保障費は節減しなければならないが限界がある」と述べる一方で、「財源には限りがある。我慢ができるところで、共生の理念でやっていかなければいけない」と言い訳。参院選時に安倍首相(当時)が「上げない可能性もある」とした消費税についても、今年六月の「骨太の方針2007」に「消費税を含む税体系の抜本的改革」を明記していることを挙げ、「(参院選後に増税を言い出しても)ウソではない」と述べました。
佐々木氏は「政府は財源といえばすぐ消費税というが、税金は所得や利益のある者が負担能力に応じて納めるのが筋だ」として、大企業の税負担を取り上げました。
大企業はバブル期を超える空前の利益を上げています。その一方、自民党政治による大企業減税の恩恵をうけ、大企業の税負担(二〇〇六年度)は、九〇年度と比べると減少しています。
「ぎりぎりの生活をしている高齢者に何倍もの負担を押し付けておいて、空前の利益をあげる大企業が、なぜまともに税金を払わないのか」と迫る佐々木氏。首相と額賀福志郎財務相は「国際競争力」をいいわけに、大企業減税を合理化しました。
佐々木氏は、法人税率を十年前の水準に戻すだけで約四兆円、この上さらに、研究開発減税などの政策減税をただせば、合計約五兆円もの財源を確保できると提起。「国民にだけ負担を負わせるのでなく、大企業は適正な応分の負担をする、そういう方向に踏み出すべきだ」と求めました。さらに、企業の空前の利益が株式配当に回っている実態(グラフ中)を示し、大資産家のための証券優遇税制も「すぐにでもやめよ」と迫りました。
これにたいし、福田首相は今秋の税制「改革」議論に言及。「税制改革の中において企業、民間、いろいろなバランスを見ながら決めていく」とのべ、明確な態度を示しませんでした。
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佐々木氏 「日雇い派遣」を直ちに禁止せよ
舛添厚労相 明確な答弁せず
非正規雇用
大企業がばく大な利益をあげる一方で、従業員の賃金は、この五年間で一・四兆円も減っている現実―。佐々木氏は、その背景として、大企業が正規雇用を減らしながら、派遣・契約など低賃金の非正規雇用に次々と置き換えていった労務政策があると追及しました。
二〇〇七年の非正規雇用者数は千七百三十一万人で、全労働者に占める比率は33・2%にまで増加。なかでも年収二百万円に満たない「ワーキングプア」は派遣社員の49・6%を占め、圧倒的多数が低賃金の不安定雇用を強いられています。
その原因に、政府がおこなった労働法制の規制緩和がある(グラフ下)と指摘した佐々木氏。「一連の規制緩和がなければ、これほど多くの非正規労働者は発生しなかったはずだ」と政府の責任を追及しました。
福田首相は「(非正規雇用の拡大は)価値観や働き方の多様化ということもある」などと若者の自発的選択であるかのようにいいつつ、「(非正規が)発生していることについては、いろいろな角度で施策を進める必要がある」などと述べました。
「希望してワーキングプアになりたい若者がどこにいるか」。批判した佐々木氏は、派遣会社に登録し、派遣された期間だけ「労働契約」を締結する「登録型派遣」や、一日単位で派遣される「日雇い派遣」の現状を取り上げました。
“賃金が安くアパートを借りるお金がない。通勤の交通費も大変なので、仕事場近くのネットカフェに泊まっている”―佐々木氏は、労働者から直接聞いた悲痛な声もぶつけ、「こんな状況を放っておいていいのか」「非人間的な『日雇い派遣』はただちに禁止し、『登録型派遣』についても原則禁止すべきだ」と迫りました。
舛添要一厚労相は「九月から労働政策審議会で、(派遣労働法制の)見直しの検討を開始させたところ」と答弁。「登録型派遣は禁止という方向で議論しているのか」という佐々木氏の質問に対しては「あらゆる角度から検討している」(舛添厚労相)と述べ、明確な答弁は避けました。
佐々木氏は、厚労相の審議会で「登録型派遣」の禁止に真っ向から反対しているのは経営者側の委員であることを指摘。その背景に、雇用・労働分野での規制緩和推進を掲げる日本経団連の方針があることを明らかにして、違法な偽装請負まで指摘されているキヤノンの御手洗冨士夫会長(日本経団連会長)の参考人招致を強く要求しました。
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佐々木氏 経団連の要望に沿うと増額
福田首相 「お願いしてない」と言い訳
企業献金
日本共産党の佐々木憲昭議員は、「総理は、経団連に頭があがらない状況があるのではないか」と、福田首相にずばり問いかけました。
佐々木氏は、非正規雇用で問題になっている「日雇い派遣」や「登録型派遣」の禁止を政府が明言しない背景に、日本経団連など財界の圧力があると指摘。そのうえで自民党が日本経団連の要望に沿った政策を出すと、自民党への献金額が増えている実態を示し、「(企業献金が)政治をゆがめている。この方式をやめる考えはないか」と迫りました。
福田首相は「政治献金を受け取ったから、その業界・団体に有利にしようと考えるほど、私たちは貧しくない」「(献金を)お願いしているわけではない」などと答弁。国民には耐えがたい負担増の痛みを押し付けておきながら、自らの献金には目をつむる態度を見せました。
佐々木氏は、日本経団連が二〇〇四年から「政策評価」という名の「通信簿」をつけて、その点数を目安に会員企業が献金額を決めていることを明らかにしました。「通信簿」はABCDEの五段階になっており、日本経団連が毎年発表する「優先政策事項」にそった政策を出せば「A」がとれるという仕組みです。
佐々木氏が示したグラフのパネルでは、〇四年には、「A」が三個で献金額は二十二億二千万円だったものが、「A」を九個とった〇六年には二十五億三千万円に増えています。
「政策買収」そのもののシステムです。「企業団体献金は政治全体をゆがめる。きっぱり禁止すべきだ」という佐々木氏。首相の口からは、国民の立場に立った政治に切り替える道に踏み出す決意は、最後まで聞かれませんでした。
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