2007年10月11日(木)「しんぶん赤旗」

世界遺産・屋久島 除草剤の影

埋設地の管理ずさん


 世界遺産の屋久島(鹿児島県)で、人体に障害をもたらす疑いがあるとして使用が中止された除草剤約三・八トンを埋めている場所がずさんに管理されていることが十日、分かりました。除草剤の埋設現場は、立ち入りを禁止する看板は文字が消えかかり倒れ、安易に立ち入れるようになっています。

芝生広場の脇

 屋久島北部の宮之浦にある屋久島町立「憩いの森」公園。入り口の先にある駐車場の近くにセメントと混ぜ合わせ固めた「2・4・5T系除草剤」が埋められています。埋設現場は世界遺産登録地域には入っていませんが、民家が迫っています。

 埋設現場は、黄色と黒のロープ二本で約四十メートル四方を囲っているだけ。すぐ脇に芝生の広場が広がります。なぜロープが張っているのかを表示する木の看板は文字が消えかかり、腐りかけて倒れています。

 同剤の埋設場所の管理については、一九八四年の林野庁長官の営林(支)局長あての通達で、(1)2・4・5T剤の埋没箇所である旨、立ち入り及び土石採取が禁止されている旨等の必要な事項を表示した標識の設置(2)入林者の立ち入り及び土壌かく乱行為を防止するための措置―を構ずるとしています。

 現場を視察した日本共産党の田村貴昭衆院比例候補は「世界遺産の島であるにもかかわらず、管理がずさん。改善のため政府にも要請していきたい」と話しました。

 同除草剤については、これまでも国会で問題になり、日本共産党の紙智子参院議員や吉井英勝衆院議員が取り上げてきました。

枯れ葉剤同様

 国会議事録や林野庁の資料などによると、2・4・5T系除草剤は一九七一年に「催奇性について疑問があり、世界各国において調査検討が行われている」として使用を中止。全国五十四カ所で埋設処理されました。埋設量は粒剤約二十五万トン、乳剤約千八百リットル。

 同除草剤は、ベトナム戦争のときにアメリカ軍が使用した枯れ葉剤をつくる成分の一つで、ダイオキシンを含みます。ベトナム戦争では、枯れ葉剤使用後に、先天性異常、流産、がん、健康障害などの障害が多発しました。

 世界遺産条約は、締約国が遺産の保護、保存、整備などを義務であると定めています。また遺産を脅かす危険の除去に努めるとしています。

 日本共産党の渡辺博之屋久島町議は「世界遺産の島にこういうものがあっていいのかと思う。民家も非常に近い場所にある。議会でも数回取り上げてきたが、登録地域に入っていないので問題ないという答えだった」と話します。

 全国の埋設現場を点検調査している林野庁は、本紙の問い合わせにたいし、八四年に周辺土壌と周辺水質を調査、八九年にも土壌調査をして、いずれも2・4・5T系除草剤が検出されなかったと説明。「除草剤を掘り出すことについては検討委員会のなかで、2・4・5T剤が散乱してしまい、かえって危険で、触らないのが一番良いということになった」としています。

 ずさんな管理については「言われている通りだとすれば管理上、問題がある。担当している森林管理局の支所に早急に直させたい」と話しました。(藤川良太)



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