2007年10月11日(木)「しんぶん赤旗」
CS放送「各党はいま」
志位委員長が語る
国民のたたかいで政治が動く新しい情勢
日本共産党の志位和夫委員長は九日放送のCS放送・朝日ニュースター「各党はいま」に出演し、福田内閣をどうみるか、テロ特措法問題などについて、朝日新聞の本田優編集委員の質問に答えました。要旨は次の通り。
福田内閣は安倍内閣と比べて変わったか
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――福田内閣、安倍内閣と比べて変わったのか、変わっていないのか。
志位 前内閣が掲げた「戦後レジームからの脱却」「美しい国」という色合いはかなりなくなりました。前首相は「従軍慰安婦」問題など歴史の事実をわい曲する言動を繰り返して、世界とアジアから孤立しました。それらの点では変化が感じられます。
ただ、代表質問と答弁をつうじて、大きな政治路線という点では、従来の政治の枠内から出ていないと感じました。
一つは、「構造改革」路線です。この路線によって弱肉強食をあおり、貧困と格差が拡大した。私は、貧困と格差の根源にある労働法制の規制緩和路線、社会保障の予算抑制路線を転換する意思があるかとただしましたが、(首相は)部分的な手直しをにおわすけれども、基本は変えないという姿勢でした。
もう一点はアメリカとの関係です。アメリカの(アフガニスタンでの)報復戦争への支援は、新法を持ち出してでも、何が何でも続けるという姿勢です。
切実な要求実現に向け、国民のたたかいで政府を追い詰めるとき
――安倍内閣のときは強行採決の連発でしたが、国会運営は変わりますか。
志位 国会の新しい力関係のもとで、これまでのような数を頼んでのごり押しは、簡単にはできなくなるでしょう。国民の声にある程度でも耳を傾けなければ、国会運営が成り立たないという状況になったと思います。
――これはこの前の参院選の大きな成果であると。
志位 国民の審判がつくった新しい局面です。このなかで相手(与党)の対応にもいろいろ変化が出てきています。たとえば、高齢者の医療費負担増の一時凍結、障害者自立支援法の見直しなどを、与党は言いだしています。
ただよく見る必要があるのは、社会保障予算の自然増を毎年二千二百億円削っていく、この路線を変えるのかと聞くと、変えるといわない。そうなると財源がないわけです。国民の審判という大きな圧力のもとで取り繕いをいうわけですが、基本のところは変えないとなると、ここにぶつかって矛盾がおこるわけです。
こういうときには、国民の運動を大いにおこし、福田内閣を追い詰めて、要求を現実に勝ち取っていくたたかいが大切です。後期高齢者医療制度についても、一時的なものにせよ手直しをいわざるを得なくなったということは、この制度が破たんしていることを認めたことになるわけですから、それならば撤回せよと追い詰めていく必要があります。
沖縄戦教科書問題―不当な政治的介入をおこなった責任は政府にある
――沖縄戦での「集団自決」をめぐる教科書検定でも。
志位 ここでも県民ぐるみの大きなたたかいがおこった。そうしますと、政府は、一応は県民の声に耳を傾けるようなことをいうわけです。しかし、政府は、自らの責任を認め、自らの責任で解決するという態度をとっていません。ここに一番の問題があります。
この問題を引き起こした責任は、政府・文部科学省にあります。文科省の教科書調査官が記述を変えなさいという(軍の強制を削除すべきとの)「調査意見書」を(検定調査)審議会に出して、(審議会は)ろくに審議もせずに(答申を)決めてしまった。政府は、「教科書に政治的介入はできない」というけれども、教科書の内容に政治的に介入したのは政府なのです。これをただせ、不当な検定意見は撤回せよ、強制記述を回復せよというのが沖縄県民の要求ですが、これは「政治的介入」でもなんでもありません。事実に即して政府による不当な政治的介入をただせというまっとうな要求です。
ここでもこれからのたたかいが大切です。どの問題でも、国民のたたかいで政治が動く新しい情勢が生まれていると思います。
報復戦争への軍事支援が実態――「海上阻止活動」への支援というごまかし
――テロ特措法について、政府は新法案の骨子案を出しました。
志位 新法であれなんであれ、枠組み自体が問題です。つまり、アメリカが9・11テロの報復として始めた戦争を軍事的に支援するという枠組みに変わりはない。
この点で、石破防衛大臣など、政府の説明を聞くと、大変なごまかしをやっています。(海上自衛隊がやっているのは)海上阻止活動への支援――テロリストや資金、麻薬などを海上で取り締まる警察活動への支援程度なのだと盛んに言っている。
しかし、現実にやっているのは、米国がアフガンで行っている報復戦争への軍事的支援です。日本の補給艦から給油を受けた米国の強襲揚陸艦からハリアー攻撃機が飛び立ち、アフガンを空爆している。つまり日本の油は空爆に使われているのです。今年に入ってからも三百人以上の子ども、女性、お年寄りを含む民間人が犠牲になっている。そういう戦争を支援しているのです。
こういうやり方を六年間続けてきたけれど、テロはなくなるどころか、世界中に拡散し、温床を拡大しています。タリバンは、アフガンの半分を実効支配しているところまで復活しているといわれています。タリバンを戦争で根絶やしにしようというのが米軍の方針ですが、それが民間人の犠牲を増やし、自爆テロを増やす、悪循環をつくっています。戦争でテロはなくせないことがはっきりしたのですから、その総括をきちんとやって(自衛隊は)撤退する。それ以外にありません。
――政府は情報を開示していないと。
志位 アフガンへの報復戦争についても、イラク作戦への転用問題についても、開示していませんね。国会で、「イラク戦争への転用はないと言い切れるか」と質問したら、首相は「ないと思うが、調査中」と答えた。ないとは言い切れない。ないと言うのだったら、その証拠を出す必要があります。
国連決議があれば武力行使をおこなっても憲法違反ではないという議論について
――民主党の小沢一郎代表が雑誌で、(ISAF=国際治安支援部隊への参加など)国連決議にもとづく活動ならば、武力行使も含め憲法違反ではないという趣旨の論文を載せています。
志位 これは二つ問題があります。
一つは、国連決議があれば、(自衛隊が)どんな活動をおこなおうと、日本が国家として武力行使をおこなったことにならないから、憲法違反にならないという議論は、およそ通用しない議論です。たとえ(正規の)国連軍が作られたとしても、そこへの兵力の提供がされるなら、それは日本の国家意思としておこなわれることになるわけですから、憲法違反であることは明らかです。ましてやアフガンに展開している国際治安支援部隊(ISAF)は、もとより国連軍ではなく、(国連の指揮でなく)派兵した国々の指揮で活動し、その活動は戦争行為そのものですから、(小沢氏が主張するように)これに参加するなら憲法違反となることは、あまりにも明瞭(めいりょう)です。
もう一つは、国連決議にもとづく活動ならば、すべてが正しいか。そこは自主的な吟味が必要です。ISAFといわれる部隊が、いまどんな活動をおこなっているのか。この部隊は、アフガンにカルザイ政権ができたときに、暫定政権と国連要員の安全確保を目的としてつくられた部隊でした。しかし最近の実態をみますと、一方で、米軍による報復戦争(OEF)が継続し、それに並行してISAFがNATO(北大西洋条約機構)軍中心におこなわれ、この両者の活動の区別がつかなくなっているといわれています。たとえばISAFの部隊も、空爆や武力掃討作戦などをおこなっています。本来の「治安支援」「安定化」から離れた活動(戦争活動)になっている。その活動が、軍事力行使とテロ拡大の悪循環に加担することになっている。ドイツなどのISAFに参加している国でも、撤兵が世論となっています。そこに日本が参加することは、憲法違反という大問題にくわえて、アフガン問題の解決のうえでも有害ということになります。
――アフガン戦争が始まって六年、ISAFが始まって五年。見直す時期だということですね。
志位 そうです。報復戦争への軍事支援はただちに中止し、自衛隊は撤退する。(テロ根絶を)報復戦争から、政治的解決の方向に転換させる。貧困、飢餓、干ばつ、教育の問題など、貧困の土壌をとりのぞくための民生支援に徹する。戦争で人を殺しながら、助けることはできません。殺すこと、殺すことへの支援をまずやめることが必要です。