2007年10月11日(木)「しんぶん赤旗」

低所得者への住宅 EU諸国と比べると?


 〈問い〉 「ホームレス」「ネットカフェ難民」の問題は、貧困の拡大で、生存の基盤である衣食住の「住」が深刻になっていることを示していると思います。“改革”の「光と影」の「影」に対策をとるというなら、住宅政策の抜本的見直しが必要なはずです。この点で、EU諸国と比べるとどうなのでしょう。(東京・一読者)

 〈答え〉 最近の国税庁の民間給与実態統計調査でも年収200万円以下の人は前年に比べて42万人増え、21年ぶりに1000万人を超えました。いまや貧富の格差拡大ばかりではなく、貧困そのものをなくすことが大きな課題になっています。

 貧困層の増大の要因には、減収だけではなく、定率減税の廃止など勤労者には増税を強いる一方、大企業には法人税の大幅減税という不公平税制があげられます。

 この点でEU諸国では、豊かな企業や個人からは多くの税金をとり、所得の低い人々には税を低くする税制と、社会保障の充実による所得再配分政策で、国民生活の底上げをはかってきました。

 加えて、日本と同様に第2次世界大戦で多くの住宅が焼失したイギリスや西ドイツでは、公的賃貸住宅の大量建設と公共による家賃補助をおこなうことによって国民の居住確保、安定を図る住宅政策に重点をおいてきました。

 日本の公的賃貸住宅の全世帯に占める割合は6・7%ですが、EU諸国のそれは、イギリス・世帯比22%(98年)、フランス・人口比18%(96年)、オランダ・世帯比36%(98年)となっています。

 いまひとつ力を入れている家賃補助は、基本的には資格要件を満たすものから請求があれば給付するというもので、イギリスは予算額2兆4000億円(390万世帯)、フランスは支給額で約1兆8000億円(対象世帯600万世帯)、ドイツの場合は連邦および州の半額負担で支給額は6400億円余となっています。

 日本では、生活保護の住宅扶助制度はありますが、家賃補助制度はほとんどないばかりか、約320万戸の公的賃貸住宅も「削減(統廃合)計画」がすすみ、国、地方自治体は撤退の方向をとろうとしています。

 貧困をなくすには、住まいの不安をなくすことを何よりも優先させるべきであり、いまや世界的流れとなっている居住安定を国、地方自治体、企業がそれぞれの役割に応じて果たすことが求められています。(高)

〔2007・10・11(木)〕


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