2007年10月13日(土)「しんぶん赤旗」
ハケン集う駅
追跡グッドウィルの日雇い (上)
荷台に積まれ オレは物?
大手派遣会社グッドウィルの日雇い派遣労働者がどんな扱いを受けているか―労働者から本紙に寄せられた告発を受けて、日雇い派遣労働者の集合場所になっている千葉県内のJRの駅を中心に、実態を探ると――。(今田真人)
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「夕べ、駅前からトラックの荷台に乗せられて、仕事場に連れていかれた。モノ扱いのようで不安でならなかった」―グッドウィルの日雇い派遣労働者で、都内に住む男性から、こんな電話があったのは、まだ暑い日が続く九月のある日でした。
別件の派遣労働の取材のため、千葉県内の同じ駅前で利用したタクシーの運転手からも、前日深夜、次のような電話がありました。
「きょうの夜、駅前で客待ちしていたら、集まってきた七十人ぐらいの若者を、二台のトラックが保冷車のような荷台に乗せて、どこかに運んでいる。違法ではないのか。同じようなことを最近、何度も目撃している」
派遣労働者の話とタクシー運転手の話は、日時と駅名がぴったり一致。さっそく、この派遣労働者に会い、詳しい話を聞きました。
●ここはどこ
「派遣先は西武運輸の倉庫内作業だとグッドウィルからは聞かされていた。駅前から、トラックのアルミ金属の覆いのある荷台に乗せられた。外は真っ暗な道路。目隠しされて連れていかれるのと同じで、どこで働かされたのか、さっぱりわかりませんでした」
この労働者の話に基づき、この日の仕事を再現すると―。
集合時間は午後七時半。千葉県市川市のJR京葉線の二俣新町駅前に、約七十人の派遣の男性労働者が集まりました。
日が暮れて真っ暗になった駅前の広場に、車の横に「西武運輸」と書かれたトラック二台が横付けに。労働者を数十人ずつ乗せて出発。
「荷台の覆いの中は小さなライトがついていて、見える程度には明るい。運転席の後ろあたりに、弁当と作業服を入れた段ボール箱が積まれていた。それを取り巻くように労働者が座る。まるで、軍隊の行軍のようだった」
十五分ぐらいで、トラックターミナルのようなところで降ろされ、真っ暗な屋外で、社名のない青い作業服に着替えさせられました。倉庫に入ると、食堂のような場所に手荷物を置き、派遣労働者は三班に分けられ、午後九時から翌午前五時まで、食事休憩をはさんで荷物を仕分けするなど、力仕事の倉庫作業をさせられました。
帰りも三十人ぐらいずつ集まって、駅まで同じトラックで運ばれたといいます。
●事実認める
運輸業者を管轄する国土交通省の担当者は「西武運輸がそんなことをやったとはにわかには信じがたい」といいながら、「一般論として、トラックの荷台にたくさんの人間を乗せて運ぶことは、道路交通法や道路運送法に反する違法行為。直接的には警察が取り締まるが、国交省としては業者への行政処分もありうる」と話します。
西武運輸本社は本紙の再三の取材に「労働者たちを西武運輸のトラックの荷台で運んだことは事実だ。指摘を受け、貸し切りバスに切り替えた」(同社総務課)と回答しました。(つづく)
日雇い派遣労働者 派遣会社に登録し、携帯電話メールなどで紹介された派遣先の職場を、毎日のように転々と替わる労働者で、若者を中心に急増しています。就業時にだけ派遣会社(派遣元)と雇用関係が生じます。ほとんどが事業主負担のある健康保険などの社会保険・雇用保険の適用を受けていません。きわめて低賃金で、アパート代も払えず、インターネットカフェなどに寝泊まりする労働者もいます。
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