2007年10月13日(土)「しんぶん赤旗」

衆院予算委 赤嶺議員の質問 (要旨)

「集団自決」の軍強制 教科書に真実回復を


 日本共産党の赤嶺政賢議員が十一日の衆院予算委員会で行った質問(要旨)を紹介します。


沖縄県民の思いは

赤嶺 教科書検定意見の撤回は総意

首相 重く受けとめたい

写真

(写真)質問する赤嶺政賢議員=11日、衆院予算委

 赤嶺政賢議員 九月二十九日に沖縄で教科書検定意見撤回の県民大会が開かれました。十一万人余が集まった熱気が地元の報道でも伝えられています。一面トップどころか両面ぶち抜きで、十一万余、そして会場行きのバスに乗れなくて行列をなして、町じゅう人があふれていた、そういう一日でした。

 参加者の中には、戦争で犠牲になった自分の身内に、きょうは手を合わせてから来たよ、という人もいましたし、四十一市町村長、すべての市町村長が参加しました。宮古島、八重山でも集会が開かれ、県民の十人に一人が大会に結集しました。戦争体験者、そして子ども連れの家族、高校生の姿が目立ちました。

 文字通り、県民の総意として、教科書検定意見の撤回、それから記述の回復、これが確認されたわけですが、なぜこれだけの人々が集まったと総理は考えますか。

 福田康夫首相 沖縄県民の方々が、六十数年前に受けたあの悲惨な出来事、このことを思い起こし、そのことを次の世代にもつなげていこう、こういう気持ちがあの大会になったのではないのかな、こう思っています。皆さん方の思いをこれからも重く受けとめてまいりたい。

 赤嶺 県民の思いは、教科書検定意見の撤回、それと記述の回復です。この点はいかがですか。

 渡海紀三朗文科相 教科書の検定制度というのは、厳正また中立公平な立場で専門家に意見をお聞きするという制度でございまして、時の政治的な思惑の介入があってはならないというこの原則があります。そういうことを考えながら、この件にどういうふうに対応をしていったらいいのかを検討しているということでございます。

 赤嶺 ですから、文科大臣、厳正、中立公平に検討して、沖縄県民の求める検定意見の撤回、記述の回復、この点はどうなさるんですか。

 文科相 例えば、この意見を撤回せよというふうに私が申し上げるということは、これはまさに政治的介入であります。また、この制度そのものはそういうことを許さないという制度になっているわけであります。

 赤嶺 文科大臣は、教科書会社からの訂正申請を受けて、教科書検定調査審議会を開いてとおっしゃっているわけですけれども、その場合に、三月にすでに教科書検定意見がつけられているわけですね。「沖縄戦の実態について誤解するおそれがある」、こういう意見がつけられたわけですから、訂正申請が出されても、そういう三月の教科書検定意見がそのまま、あるいはそれは変えられるんですか。

 文科相 検定意見そのものを撤回するということにはならないのではないかというふうに考えています。

検定経過の実態は

赤嶺 削除は文科省ぐるみ 専門的審議あったか 

文科相 それほどなかった

赤嶺 沖縄戦専門家もいない 

 赤嶺 三月の意見は撤回しないというわけですね。それでは、今回の検定意見にいたる経過について聞いていきたいと思います。

 これまで二十年間、沖縄戦というのは、「集団自決」について、軍の強制的関与は教科書に記載されてきたんです。二十年間意見がつかなかったんですね。二十年つけられなかったのに何で突然という気持ちをみんな抱いたわけです。一体誰が言い出したんだと、みんなそう思っているんですよ。それは、文部科学省の常勤職員である教科書調査官がまとめた調査意見書、これが発端だったんじゃないですか。

 金森越哉文科省初等中等教育局長 教科書検定は、検定の時点における客観的な学問的成果に照らして、教科書検定審議会の専門的な審議に基づき検定意見を付しているところです。

 沖縄戦における「集団自決」につきましては、従来、日本軍の隊長が住民に対し「集団自決」命令を出したとされ、これが通説として扱われてまいりましたが、この点について、現在、さまざまな議論があると承知しております。教科書検定調査審議会における専門的な調査審議の結果、不幸にも「集団自決」された沖縄の住民のすべてに対して自決の軍命令が下されたか否かを断定できないという考えに基づき、教科書の記述としては、軍の命令の有無について断定的な記述を避けることが適当であり、検定意見を付したものであると理解しております。

 赤嶺 それでは、聞きますが、申請本の中に、隊長の命令によって「集団自決」に追い込まれた、このように記述しているものが一カ所でもありますか。

 金森局長 平成十八年度の日本史教科書の検定意見は、不幸にも「集団自決」された沖縄の住民すべてに対して自決の軍命令が下されたか否かを断定できないという考えに基づいて付されたものです。

 赤嶺 局長、県民をごまかすのもいいかげんにしなさいよ。私は、教科書の中に、隊長命令によって「集団自決」に追い込まれたという記述があるかと聞いたんですよ。ないんですよ、一カ所も。ないけれども、あなた方は勝手に意見をつけたんですよ。

 ここに、文部科学省初等中等教育局教科書課から(送られてきた)文部科学省原議書というのがあります。この原議書には、主任教科書調査官照沼さん、高橋さん、村瀬さん、三谷さん、この四人の印鑑が押されまして、起案者の印があり、そして係長、専門官、企画官、課長、それから総合調整課長、審議官、局長、合計七名の印鑑が押されて、その中に調査意見書として、「日本軍によって…あるいは集団自決に追い込まれた住民もあった」という部分ですね。これは、日本軍によってというところであって、隊長命令によってではないですよ。それで、「沖縄戦の実態について誤解するおそれのある表現である」。こう書かれているわけですね。

 ということは、この調査意見書というのは、調査官はじめ文部科学省ぐるみでこういう意見をつくったということになるんですか。

 金森局長 ただいまご指摘になりましたのは、教科用図書検定調査審議会に調査審議の参考となる資料として提出される調査意見書でございます。教科書調査官が委員や専門委員、教科書調査官の調査の結果を取りまとめ、審議会に提出いたしたものです。

 赤嶺 それは、文部科学省が全体として承認したわけですね。文部科学省ぐるみでこういう調査意見書をつくった、教科書の書き換えを行う意見書をつくったという認識ですね。

 金森局長 教科書調査官が行う調査などは、専門的、学術的観点から中立公平に行われるものでして、政治的、行政的意図が入り込む余地がないものと考えております。

 赤嶺 今度の場合は二十年ぶりに書き換えられたんですよ。それを、中身もきちんとしないで調査官がやったことだからといってはんこを押しているという、このこと自身に大変な驚きを私は持つんです。

 調査官は審議会にかけるんだ、学問的、専門的な検討を経るというわけですが、この調査意見について、審議会の中でどんな専門的、学術的議論があったんですか。

 金森局長 審議会におきましては、各委員が、検定の時点における客観的な学問的成果に照らして、それぞれの知見により審議した結果、最終的に審議会として調査意見書における指摘と同じ内容の検定意見を付すことが適当と判断したものと承知しております。

 赤嶺 専門的、学術的議論があったのかどうか、確認しておられないんですか、大臣は。

 文科相 検定調査書を、審議会で諮って最終的に決めた。その段階でいわゆる意見があったかなかったかといいますと、それほど多くなかったというふうには聞いております。

 ただ、私は、もう少しこの審議会のあり方についても検討する必要があるのではないかなというふうな私の所感を記者会見で述べさせていただいたところです。

 赤嶺 学術的、専門的な議論はなかったんですよ。ただ審議会に検定意見書を諮った、諮ったけれども何の意見も出なかったんです。

 社会科、日本史については部会や小委員会があります。そういう部会も含めて議論はあったんですか、なかったんですか。

 文科相 いろいろな意見が出たのかということについていえば、あまり大きな異議がなかったというふうな報告をいただいております。

 赤嶺 意見の中身がもしあるというなら、おっしゃってください。調査意見書を審議にかけただけというなら、そうおっしゃってください。

 文科相 いわゆる意見について、今その議事録を作成したり公表したりということについてはやらないというのがこれまでの原則です。

 赤嶺 私が聞いているのは、教科書調査官の、誤解を受けるおそれがないような記述に変更するという意見について、沖縄戦についてどんな意見が出たか、これを聞きたいんです。

 金森局長 沖縄戦の「集団自決」にかかわる指摘個所につきましては、委員から特段の異論はなかったところです。

 赤嶺 調査官というのは文科省の職員ですよね。職員がつくった原案に、学術研究者の集まりである審議会や部会でも何も意見が出なかったというのが、信じられないですね。二十年間同じような記述を経てきたけれども、今年急に変わった、学術研究者を集めても意見が出ない。

 この学術研究者、審議会の中に、小委員会や部会の中に、沖縄戦の専門家はいたんですか。

 金森局長 沖縄戦を専門に研究している方はいなかったとしておりますが、審議会におきましては、専門的、学術的な調査審議が行われたと承知しております。

 赤嶺 大臣、いなかったんですよね。沖縄戦の専門家はいなかったけれども、局長は学術的、専門的審議が行われた、こういう認識を持っていると言うんですよ。おかしいんじゃないですか。

 きょうの沖縄の新聞に、教科書検定調査審議会の日本史小委員会の委員をしている筑波大学(教授)の波多野(澄雄)先生がインタビューに答えています。

 意見は出なかったというような答弁を繰り返して、「沖縄戦の専門家がいない。調査官の方がよく調べており、委員より知っている。説明を聞いて、納得してしまう部分がある。沖縄戦の専門家が入っていれば(結果は)だいぶ違っただろう」。自分たちは知見がなかった、専門家として集められたけれども、調査官の知見以上のものは持ち得なかったと。

 しかし、この方は、こう言っているんですよ。県民大会にあれだけの人が集まって、「驚いた。あらためてこの問題の重要性を知った。そういう意味ではもう少し慎重にすべきだった」と。

 審議委員の中からももう少し慎重にすべきだったと。県民感情について、沖縄戦について研究し、実績を積み重ねてきた、そういう人が全く入らない場所で意見書を出して、これがひとり歩きしているんですよ。

 調査官は文科省の職員ですが、調査官が自分の意見をまとめるときに、専門家の意見を聞くことになっています。専門委員や審議委員、臨時委員に申請本を配布して、意見があれば寄せてくださいということになっています。

 今回、沖縄戦について、審議会の委員や臨時委員、専門委員から意見は寄せられたんですか。

 金森局長 平成十八年度検定の沖縄戦「集団自決」に関して専門委員等から意見は出されておりません。

赤嶺 検定意見に固執する文科省こそ政治介入

 赤嶺 今回の教科書検定意見というのは、文科省の一職員が自分の考えで意見をつくって、手続きはとったといいながら、学術的にも専門的にも、肝心の沖縄戦を体験した沖縄県民の検証にまったくたえられない意見なんですよ。検証にたえられないのが何で学問ですか。

 そして、検証にたえられないような意見が、一回教科書検定意見として手続きをしたんだから、これは撤回できないといったら、間違っても、未来永劫(えいごう)、日本政府はそういう意見の撤回はしないということじゃないですか。間違ったまま進めていこうということになるじゃないですか。こんなのは民主主義じゃないですよ。大臣、いかがですか。

 文科相 教科書の検定制度というのは、時の政府がやはり介入できない仕組みというのをきっちりとつくったわけです。ですから、そのことについてしっかり守っていくということも、これはやはり大事なことであろうと思います。

 赤嶺 これは『沖縄戦と民衆』という本です。実は、文部科学省の調査官が、この本こそ誤解を受けるおそれがある証拠だといって根拠に挙げた本なんですよ。著者は怒っていますよ、文科省は何てひどいことをするんだ、自分の意見をねじ曲げていると。

 客観的に、軍の強制なしには、「集団自決」、当時「集団自決」と言わないんですよ。玉砕というんですよ。玉砕を命じられたんです、沖縄県民は。なのに、軍の強制的関与によって自決に追い込まれたというような表現が、何で学問的検証もなされないで、文部科学省の一役人の起案で削除されることが許されるんですか。

 首相 先ほど私申し上げました沖縄に対する思いというのはそういうことでございまして、この問題は、文部科学大臣にしっかりと対応させてまいります。

 赤嶺 文科大臣、教科書検定意見の撤回を求める、記述の回復を求めるのは政治の介入ではありません。真実を回復してくれという、やむにやまれない県民の要求です。そういう要求を聞き入れない、文部科学省が勝手につくったそういう検定意見に固執することこそ政治的な介入です。

 政治的介入は文科省こそやっている。教科書検定意見の撤回、そして記述の回復まで私たちは何回でも頑張るということを申し上げまして、質問を終わります。

写真

(写真)赤嶺政賢議員が示した、文科省作成の「調査意見書」の原議書。作成にあた った4人の教科書調査官の印と、担当局長ら7人の決裁印が押されています



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