2007年10月16日(火)「しんぶん赤旗」
ハケン集う駅
追跡グッドウィルの日雇い (下)
偽装、二重、虚偽…の闇
九月中旬のある日の夕方、日雇い派遣労働者が「トラックの荷台に乗せられた」というJR京葉線の二俣新町駅前(千葉県市川市)にいってみました。
午後七時前から、携帯電話を持ち、ジーパンとTシャツといういでたちの若い男性が集まってきます。中年男性の姿もあります。駅前のコンビニで買ったカップラーメンなどを食べながら、暗くなった駅前広場の石段などに腰掛け、だれもが黙って待っています。
●暗闇から声
午後八時前、若い男性が「グッドウィルの方で、点呼を受けていない人はいますか」と一人ひとりに声をかけて回ります。
午後八時ごろ突然、「貸切」と表示された大型バスが駅前広場に横付けされました。若い男性の一人が「えー、きょうはバスかよ。先週はひどかったぞ」と歓声をあげます。どうやら、派遣労働者の告発と本紙の取材などが西武運輸を動かしたのは本当でした。
午後八時すぎ、バスは駅前から二回に分けて派遣労働者を乗せ、そのあとの駅前にはだれもいなくなりました。タクシーで追跡すると、バスは、とある倉庫の敷地内に消えていきました。
本紙に電話をかけてきた日雇い派遣労働者の男性はいいます。
「翌朝、仕事から帰る際、いったいどこの会社で働かされたのか、少し倉庫内を探したんです。そうしたら、外資系大手運送会社『DHL』の事務所を見つけました」
●3つの社名
日雇い派遣労働者は仕事の前日、携帯電話でかんたんな派遣先を知らされます。そのときの派遣先は「西武運輸」。ところが、就労後、労働者に交付された「就業条件明示書兼労働条件通知書」には、派遣先の欄に(1)西武運輸(2)日本トイザらス(3)京義倉庫―の三つの社名だけ。「DHL」の名前はありません。
日本トイザらスは「そもそも、そのような深夜業務を派遣労働者にさせたという事実はない」(本社広報担当者)といいます。
二重派遣どころか、「通知書」への虚偽記載の疑いも出てきました。これは、労働者派遣法三四条(就業条件の明示義務)に違反し、経営者は三十万円以下の罰金を科せられます。
西武運輸は本紙の取材に最近になって「DHLの作業を請け負って、派遣労働者に作業をさせた」(本社総務課)と明かしました。
労働現場の住所の倉庫に行ってみました。
対応した倉庫関係者によると「京義倉庫」が倉庫のオーナーで、一―二階を「トイザらス」、三階以上を「富士ロジテック」が借りているといいます。
「富士ロジテック」の責任者は、そのテナントをさらに「DHL」に貸していると答えました。ついに、四階にある「DHL」の事務所を発見しました。現場責任者は説明します。
「派遣労働者を西武運輸に集めてもらっていたが、労働者が使う作業道具などのシステムはDHLのもの。最近、西武運輸が突然、うちとの取引を打ち切ったので、毎日、労働者を集めるのに苦労しています」
「偽装請負」や「二重派遣」「派遣先の虚偽通知」など、さまざまな違法手段を講じて、派遣労働者をモノのように使っている大企業の実態の一端にふれた瞬間でした。(おわり)
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