2007年10月17日(水)「しんぶん赤旗」

日本の労働生産性は低い?


 〈問い〉 OECD(経済協力開発機構)調査によると、日本の労働生産性は低いそうです。われわれはこんなに働いているのに割にあわない感じがします。どう考えたらいいのでしょうか?(東京・一読者)

 〈答え〉 労働生産性とは、一人の就業者が1年間にどれくらい国内で新たな価値をうみだしたかを見るもので、[GDP(国内総生産)÷就業者]で計算されます。OECDの労働生産性の国際比較によれば、日本のGDP生産性は5万9651ドルで、OECD加盟30カ国中19位、主要先進7カ国のなかでは最下位になっています。

 しかし、労働生産性の国際比較は、正確に計算できるものではありません。まず、分子のGDPです。これは、各国の通貨を購買力平価に換算したドルで比較することになります。しかし、どの時点の為替レートを用いて購買力平価を計算するのか、その計算に必要な物価指標として何を用いるかによって値が変わってきます。これらのデータが異なれば、日本のランクが上がることもありうるのです。

 分母の就業者数にも問題があります。統計上は、不法に入国した外国人労働者や他国からの通勤者などは、その国の就業者数にカウントされません。しかし、これらの労働者が働いた分だけGDPはかさ上げされることになります。ですから、隣国からの通勤者が就業人口の4分の1を占めているルクセンブルクのGDPが高くなり、OECDの国際比較では、労働生産性トップになるのです。

 統計上に表れない不法入国した外国人労働者は、日本でも社会問題になっていますが、アメリカやヨーロッパ各国では、就業者の中でかなりのウエートを占めるようになっています。アメリカでは全就労者の10%に上るともいわれています。この点に着目して、労働生産性を再計算すると、日本の労働生産性は19位から一気に7位に浮上するという試算もあります。

 問題は、OECDのデータを使って、日本の労働生産性は低い、国際競争に勝てないといって、働くものの労働条件をいっそう切り下げる動きがあることです。しかし、国際競争力が問題になる日本の製造業の労働生産性は、こうした不十分なOECDの国際比較によっても、全体で4位、主要先進7カ国ではアメリカに次いで2位にランクされています。

 労働生産性を口実にして働くルールを切り下げる動きを許してはなりません。(藤)

 〔2007・10・17(水)〕


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