2007年10月24日(水)「しんぶん赤旗」

自共論争! 「政党政治」とは何か

志位委員長と加藤元幹事長が対論

CS放送 詳報


 日本共産党の志位和夫委員長は二十日放映のCS放送・朝日ニュースター番組で、番組キャスターを務める自民党の加藤紘一元幹事長と「自共論争! 『政党政治』とは何か」と題して対論しました(二十一日付既報)。その一時間におよぶ対論の焦点を紹介すると――。


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(写真)加藤紘一元幹事長(左)と対論する志位和夫委員長

福田内閣どうみる

 「福田総理になって、共産党はやりにくくなったでしょ」と問いかけた加藤氏。志位氏は、「そういうことはないですね。『構造改革』路線の基本、アメリカとの関係の基本は国会で質問してみると変わりません」。ただ「変わった」という点で両氏が一致したのはアジア外交、北朝鮮問題の対応です。

 志位氏は、福田首相が国会答弁で「日朝平壌宣言」(二〇〇二年)に基づいて核、拉致、過去の清算などを包括的に解決して国交正常化をはかる立場を表明したことにもふれ、「強硬一点張りでない対応をおこなう可能性をはらんでいる」と今後の動きに注目。加藤氏も「そうそう。そこは大きく違うんですよ」と応じました。

 安倍前首相が唱えた「価値観外交」の名による中国包囲網論も話題になりました。

 加藤氏は「共通の価値観だといえば、共通でない価値観はどこだとなる」と疑問視。これに志位氏が「(『価値観外交』の考えは)中国包囲網を日本とインド、オーストラリアとアメリカでつくろうという。そんな時代じゃないですよ」というと、加藤氏も「ないです。だいたいインドは中国とうまくやることを何年も前から手を打っている」。

 志位氏は「いまの世界は異なる価値観をもつ文明、異なる政治体制の国でも、お互いに認めあい、相互に理解しあって共存していこうというのがあたり前の流れで、ASEAN(東南アジア諸国連合)はそうやって成り立っているわけでしょ。イデオロギーとか価値観で線を引いておくのはいまの世界ではないと思います」とのべました。

歴史問題、靖国問題

 歴史問題や靖国問題にも話がすすみました。

 加藤氏が「志位さんからいただいた文献集をみたら“A級戦犯が合祀(ごうし)されている問題もあるが、それ以上に靖国神社の(軍事博物館である)遊就館の歴史観そのものが問題だ”と書かれていた。遊就館の史観はかなり反米的なんじゃないか」と発言。

 志位氏は「反米だと思いますね。私たちが『靖国史観』とよんでいる遊就館の史観は、日本の過去の戦争は全部正しかった、正義の戦争だったという立場です。日米開戦についても“ルーズベルトは日本に開戦を強要したから”と。(『靖国』派は)『自存・自衛の戦争』という、当時の軍部と同じ言い方であの戦争を賛美する。これはアメリカにとっても許容できない話です」

 加藤氏は「遊就館の陳列をここ二、三年で十数回、三、四十時間みた」とのべ、知り合いの外務省、米国務省関係者も遊就館の内容を批判しているエピソードを紹介しました。

日本共産党のアメリカ論、日本外交について

 北朝鮮問題の包括的解決の努力の重要性や「価値観外交」の誤り、過去の侵略戦争の正当化論への批判的立場では一致しつつも、日米安保条約への態度、アフガン戦争支援問題などへの態度ではがっぷり向き合うものとなりました。

 「私は親米。日米安保は必要だと思っています。志位さんは反米ですよね」と加藤氏。志位氏は「反米といわれるとちょっと違うんですよ」として、日本共産党がアメリカの動向を「複眼」でみていることを説明しました。

 志位 (アメリカは)一方で、イラク戦争みたいに軍事的な覇権主義をとっている。これは許せないことで反対する。しかし、そのアメリカも軍事ばっかりやっているわけじゃない。外交のオプション(選択肢)をもって外交的な解決をやろうということが、とくにブッシュ政権第二期になってはっきり出てきた。北朝鮮については本気になって外交的解決をやろうとしていますよね。アメリカは軍事と外交を使いわけて両方やっている。
 ところが、日本はどうか。政府・自民党は軍事的覇権主義には追随するけど、アメリカが外交の活動をやったときにはついていけなくなっている。たとえば、北朝鮮が去年の秋、核実験をおこなったでしょ。あのときにアメリカも中国も、国連の舞台、六カ国協議という舞台などで、シャトル外交もやって、外交的解決の道に戻そうとした。そのとき日本は、「周辺事態法」を発動したらどうかとか、日本も核兵器を持ったらどうかとかの議論ばかりでした。

 これにたいし加藤氏は「自民党にもいろんな議論がある」としつつ、当時、加藤氏自身は、「ほんとに話し合えば(北朝鮮は)ミサイルも核も廃棄する用意があるはずだと意見を持っていた」と発言しました。

 志位氏が「(北朝鮮問題の)包括的解決という場合、核問題が先行して解決されていく場合もある。それは拉致問題にマイナスではなくて、核問題が道理ある形で解決されたら拉致の解決の条件も開けるという関係だと思います」とのべると、加藤氏も「そう思いますよ」と応じました。

アフガン戦争支援――どちらも憲法違反

 話題は当面の焦点のテロ特措法の問題に移りました。民主党の小沢一郎代表が唱えるISAF(国際治安支援部隊)への参加論の受けとめをきいた加藤氏に、志位氏は答えました。

 志位 ISAFのやっていることは戦争なんです。ISAFはもともと(アフガニスタンの)カルザイ政権の治安支援のためにつくられた部隊ですが、いまは空爆をやり、ミサイルを撃ち、掃討作戦までやっているわけですから、アメリカのやっている戦争と区別がつかない、まさに戦争そのものです。ISAFの兵士はNATO(北大西洋条約機構)軍が中心ですが、戦死者が数百人の単位で出ている。ですからこれに参加するのは海外での武力行使であり、憲法違反以外の何ものでもない。

 同時に、志位氏は、政府のすすめている海上自衛隊による給油活動も、米軍の報復戦争への兵たん支援であり、戦争の一部だから、海外の戦争に参加している点では同じ憲法違反だとずばり批判しました。

海外での武力行使と憲法問題

 加藤氏は、「日本が海外で武力行使するということを時の政権が決定したならば、憲法改正をして国民に問わなきゃだめだ」と指摘しました。

 その想定ケースとして、(1)日米安保条約の双務性としてアメリカが助けを求めてきた場合(2)国連常設軍ができて指揮権も国連がもつ場合(3)NATO軍のようなものがアジア諸国の間に結ばれ日本に要請があった場合―をあげました。志位氏はこれに一つひとつ答えました。

 志位 第一のケース。双務性というが、これはイラクで肩を並べて戦争をしましょうという話です。集団的自衛権という言葉はついているけれども、実際にアメリカが求めているのは集団的先制攻撃戦争です。これにいくのはほんとに無法な道になると思う。
 第二の常備軍のケース。日本は国連に加盟した際の宣言文で、憲法上可能な手段で国連での貢献を行うとし、それが承認され加盟しています。国連常備軍というのは、国連憲章でも各国の憲法上の定めに従って兵力を供出するとあり、憲法九条があればこれは出せません。行かさなければいいだけです。
 三つめのケース。東南アジアには、昔はSEATO(東南アジア条約機構)という軍事同盟があったが、なくなっていまASEANという平和の共同体がつくられ、仮想敵をもたない平和の流れをつくっている。アジア版NATOはおよそ想定しがたいことです。軍事同盟から平和の共同体への変化が、世界の大きな潮流になっているところが大事だと思います。


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