2007年10月25日(木)「しんぶん赤旗」
主張
テロ新法審議入り
戦争の支援しか頭にないのか
インド洋での海上自衛隊による米艦船などへの給油活動を継続する新テロ特別措置法案の審議がはじまりました。
世論調査で国民の六割以上が「給油活動はテロを抑えるのに役立っていない」とみています。戦争ではテロをなくせないことも六年間の経過で明白です。自衛隊が給油した米艦船の搭載機がアフガニスタン攻撃をくりかえし、イラク作戦に転用されていることまであきらかになっています。新テロ特措法案は、「報復戦争を支援」し、テロを拡散させるだけの憲法違反の悪法です。反対の声が大きくなっているのは当然です。
戦争でテロはなくせない
日本共産党の赤嶺政賢議員が衆院本会議で、アフガニスタンにたいするアメリカの報復戦争がテロと武力報復の悪循環をつよめ、今年だけですでに一千人にものぼる民間人を犠牲にしていることや、人道復興支援活動をさまたげていることを示して、戦争支援をやめるよう求めたのにたいし、福田首相は実態を直視せず、まともに答えようともしません。
戦争でテロをなくせると政府ですらいえなくなっているのに、戦争支援の継続に固執するのは問題です。アフガニスタンの人道・復興をいうなら、政府は戦争支援をただちにやめるべきです。
衆議院本会議での質問で焦点になったのは、イラク作戦を実施した米空母キティホークへの自衛隊の給油をめぐる政府の隠ぺい問題です。しかし、政府から納得のいく説明は聞かれませんでした。
二〇〇三年二月二十五日に自衛隊が米補給艦を経由して同空母に給油した量は八十万ガロンだったのに、当時官房長官だった福田康夫首相は同年五月九日の記者会見で、給油量は二十万ガロンと断言し、それは一日で消費する量だからイラク作戦で使われてはいないと説明しました。同空母がペルシャ湾に入り、イラク作戦を支援することにつながらないという証明として二十万ガロンをもちだした福田首相の責任は重大です。いまになって責任を自衛隊に押し付け、「わたしまでが疑われる」などというのは、無責任のきわみです。
防衛省は、海上幕僚監部の担当課長が「誤りに気づいた」が、それを上司や内局に報告しなかったといいますが、一課長が勝手に判断するなど軍隊組織であるはずがありません。四年以上も隠し通し、いまになって担当課長一人に責任を押し付け一部の者を処分するだけで、政府の責任を免れようとするのは許せません。
現行テロ特措法のもとで行われてきたアフガニスタン空爆への支援やイラク作戦への転用がそのまま継続されるのではないかという疑問は新テロ特措法案の大きな問題です。赤嶺議員が、政府が「アフガン空爆は対象としない」(高村外相)、「補給艦への給油は中止したい」(石破防衛相)といってきたことがどこで規定されているかと質問したことにも政府は答弁を避けました。これでは、給油は海上阻止活動に従事する艦船に限るといっても、空爆を支援しないという保証にもなりません。
政治的解決がかなめ
人道援助団体の日本国際ボランティアセンターは、報復戦争は「アフガニスタンに平和も安定ももたらしてはいません」と批判しています。戦争支援をやめることが不可欠です。
いまアフガニスタンでは、政治的交渉による和平をめざす機運が生まれつつあります。日本政府がやるべきことは戦争支援ではなく、和平の動きを後押しする外交的努力です。
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