2007年10月28日(日)「しんぶん赤旗」

薬害肝炎

今 何が問われているか

政・官・業・医の癒着断て


 肝炎ウイルスに汚染された血液製剤「フィブリノゲン」を投与されてC型肝炎に感染させられた患者を特定できるリストがあったにもかかわらず、厚生労働省は長期にわたって患者に知らせず、救済には生かされませんでした。日本共産党の志位和夫委員長は二十五日、責任の明確化と真相解明、被害者への医療・生活支援の措置が必要であることを強調しました。何が問題で、被害者救済と薬害根絶に何が求められているのかリポートします。(菅野尚夫)


厚生省と製薬会社

隠ぺい、20年前から

 二十五日、参院厚生労働委員会。「厚労省には感染被害が起こった段階で報告があがっていたはずだ」。質問する日本共産党の小池晃参院議員の声が響きます。

 一九八七年四月、当時の厚生省と薬害肝炎の加害企業の旧ミドリ十字(現田辺三菱製薬)は、発生した薬害肝炎の公表を積極的には公表しないことで打ち合わせをして合意していました。薬害被害の隠ぺいの始まりでした。

 小池議員は、真相の究明とともに、患者への告知、早期全面解決を舛添要一厚労相に迫りました。被害者リストの写しはあるものの「原本は廃棄した」と答える医薬食品局長。「責任は重大だ」と畳み掛ける小池議員。「徹底的に洗い出す」と答弁する厚労相。薬害被害者の「命の記録」にかかわる真相を解明するための息詰まる攻防です。

 感染・発症した患者を特定できる可能性のあるリストは四百十八人分。そのうち百六十五人分が実名やイニシャルなどで記載されていました。

 肝炎ウイルス感染者を特定できるリストは、「地下倉庫に眠っていた」と厚労省の官僚はいいます。しかし問題は、「なぜ二十年余もの長きにわたって地下倉庫に埋もれていたのか」です。

 八七年発生当時に厚生省と製薬会社が隠ぺいを約束。二〇〇二年、坂口力厚労相(当時)は、「フィブリノゲンから肝炎が発生するのはだれしも予測できた」と国会で答弁し、リストの存在を知りながらそれから五年も放置してきたからです。坂口厚労相の責任は重く問われます。

 C型肝炎は、自覚症状がほとんどない場合があります。感染者の70%くらいが慢性化し、慢性肝炎になる可能性があります。さらに、一定の割合で肝硬変に進行し、肝がんになります。早い段階で発見して治療すれば、がんを予防することができることが分かっています。「命の記録」でもあるリストの事実が患者本人に伝えられていたならば、助かる命の数は計り知れず、やるべきことをやらなかった「悪意」は許されません。

繰り返される薬害

背景に献金・天下り

 薬害が繰り返し起こる背景には政・官・業・医の癒着の構造がたち切られずにいるからです。

 加害企業の旧ミドリ十字は、自民党の政治資金団体の国民政治協会に毎年数百万円から一千万円を超える多額の政治献金をしてきました。

 厚生族議員の橋本龍太郎元総理や、薬務局長を務めた後に一九八六年に自民党から政治家になった持永和見元衆院議員などもミドリ十字から政治献金を受けています。

 さらに、「政治の場によき理解者を求め、政治活動を支援する」ことで田辺三菱製薬や藤沢製薬、塩野義製薬など製薬企業で設立した「製薬産業政治連盟」を通じて自民党、民主党への政治献金は続いてきました。自民、民主両党の厚生労働族議員の政治家にも献金は行われています。〇五年の政治資金収支報告書によると、「坂口力先生(公明)と日本の社会保障を考える会」に二十万円。〇六年には、川崎二郎元厚労相、武見敬三元厚労副大臣などが在職中献金を受けています。

 薬害を起こすもう一つの要因は、官僚の天下りです。

 松下廉蔵元薬務局長が一九八三年に、小玉知己細菌製剤課長補佐が同時期に副社長に就任。今村泰一元厚生省企画課長補佐を取締役に迎えています。

 小玉氏は、ミドリ十字がフィブリノゲン製剤の承認申請をしたときに担当者で、同製剤が発売される三カ月前にミドリ十字に天下り、この製剤の販売を担当しました。八三年から八六年まで副社長として同社の薬事部を統括する立場にあり、厚生省との間の交渉窓口でした。薬害エイズ事件では、大阪地検から事情聴取をうけました。

共産党 救済と真相究明に全力

写真

(写真)質問する小池晃議員=25日、参院厚生労働委

 日本共産党国会議員団は、なぜみぞうの被害を広げたのか、真相究明と早期救済、国の責任を一貫し追及してきました。

 七〇年代から九〇年代に相次いで起きた薬害スモン、薬害エイズ、薬害ヤコブ病と薬害事件で、国と製薬企業の責任追及に大きな役割をはたしてきました。

 二〇〇一年三月と同年五月二十四日には、小池参院議員がフィブリノゲンなどすべての血液製剤の投与を受けた人たちを対象に公費負担で検査を受けられるように主張しました。同五月三十日、七三年に当時の厚生省がフィブリノゲン製剤からの感染の危険性について認識しながら販売を中止させず被害を拡大してきたことを追及。同六月、七四年にさかのぼって危険性の認識について調査することを厚生労働省に約束させました。

 今年三月、薬害肝炎東京訴訟の判決を前に、「フィブリノーゲン・ミドリ」を「フィブリノゲン・ミドリ」と一文字だけを変更した名称にして、厳格になった再評価審査をすりぬけていた問題をただしました。

 二〇〇六年七月、日本共産党は「薬害肝炎被害者とすべてのウイルス性肝炎患者の救済のため恒久的対策の確立を政府に求める提言」を発表しました。感染経路の立証を前提にせずに、救済策を講じること、被害者には責任を認めて謝罪と補償をすること、真相究明のために第三者機関を設置して解明すること―などを提言しています。

 救済の具体策としては(1)患者への医療費や生活支援(2)感染可能性の周知、無料の検査制度(3)全国どこでも専門治療が受けられる体制の確立(4)ウイルス性肝炎の知識啓発や就学・就労差別をなくす施策―などを提言しています。

 日本共産党がこうした抜本的な早期全面解決の方針を出すことができるのは、団体・企業献金を一切受け取っていない政党だからです。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp