2007年10月30日(火)「しんぶん赤旗」

守屋前防衛事務次官 証人喚問


 米艦船への給油量をめぐる情報隠ぺい問題や、軍需専門商社「山田洋行」の宮崎元伸元専務との癒着問題が焦点とされた守屋武昌前防衛事務次官への証人喚問。29日の衆院テロ特別委員会で、日本共産党の赤嶺政賢議員をはじめ各議員の追及で明らかになったことは…。


給油量隠ぺい

米側と口裏合わせ

 防衛庁・自衛隊内で当時発表の給油量(二十万ガロン)が誤りだと気づきながら、今年九月に市民団体が指摘するまで隠ぺいしていた給油疑惑。赤嶺氏は、イラク戦争への転用に深くかかわる問題として、守屋前事務次官に、この事実関係を厳しく迫りました。

 二〇〇三年五月、イラク戦争に参加した米空母キティホークの艦長は「海上自衛隊から八十万ガロンの給油を受けた」と発言しました。赤嶺氏は、この問題を国会で追及した当事者です。当時の福田康夫官房長官、石破茂防衛庁長官は、防衛庁が「米側に確認」した結果として、“イラク作戦には使用されなかった”“給油したのは二十万ガロンだった”とのべ、アフガンでの「対テロ報復戦争」(「不朽の自由作戦」)支援であったことを強調していました。

 当時、防衛局長として、この大臣答弁の要綱を作成し、米側への確認にあたったのが守屋氏です。

 赤嶺氏は、守屋氏が米側に具体的事実関係をどう確認したのかを追及しました。

 赤嶺 あなたはキティホークが、いつからいつまで「不朽の自由作戦」に従事していたかを確認したか。

 守屋 あのー、大変恐縮ですが、当時のことについては記憶が…。

 赤嶺 (一連の)キティホークの行動を確認しなかったのか。

 守屋 日程とか、そういうことについてですね。まったく、あの、覚えておりません。

 転用疑惑の核心となるキティホークの行動の確認については、しどろもどろになり「覚えていない」を連発し、事実関係を何一つ示せない守屋氏。一方、守屋氏が米側に「確認した」と認めた唯一の事柄は、「給油の目的外使用はないとはっきりさせてほしい」と要望したことだけでした。

 赤嶺 あなたはアメリカ側に事実関係を確認したのではなく、「テロ特措法の趣旨を外れていないとアメリカ側にいってほしい」、こうお願いしたということですね。

 守屋 テロ対策特措法は、テロの抑止活動に従事する艦船に給油をするというのが法律の目的ですから、給油されたアメリカが、その目的の中で油を使っているということをはっきりしてほしい、ということを申し上げました。

 守屋氏は、駐日米大使館の公使に「疑惑をまねくので、しっかりとしてほしい」と要請したことも証言。結局、米側と口裏合わせをしていただけだったことを認めました。守屋氏の証言からは、当時の福田官房長官、石破防衛庁長官の発言に何の裏付けもなかったという事実が明らかになりました。


商社と癒着

宴席に複数政治家

 防衛庁長官経験者を含む複数の政治家が、軍需専門商社「山田洋行」の宮崎元専務と守屋前事務次官との宴席に同席していた―。守屋氏の証言は軍需企業との癒着が官僚だけでなく、政治家にも広がっていることを明らかにしました。

 政治家の同席を追及したのは、赤嶺氏でした。

 赤嶺 元専務と飲食した際、政治家が同席したというのは、一人ですか複数ですか。

 守屋 一人ではなく複数だったと思います。いろんな政治家のおられる席に元専務がいたというような会議の仕方もあるし、少数の席に一人の先生(政治家)がおられて私が入ったこともあります。

 守屋氏によると、政治家を交えた宮崎元専務との宴席は、事務次官在職中の「去年か、おととし」のことでした。その政治家とは―。

 赤嶺 大臣経験者はおられたわけですね。

 守屋 はい、おられました。

 赤嶺 大臣経験者か長官経験者ですか。

 守屋 防衛庁長官経験者もおられたと思います。

 赤嶺 「長官も」とおっしゃいましたが、防衛大臣(経験者)もおられたという理解でいいのですね。どなたですか。

 守屋 いつごろか記憶がはっきりしていないので、特定の名前をあげるというのはご迷惑をおかけするので控えさせていただきます。

 同席した政治家は誰か、元専務への便宜供与はなかったのか、癒着の全容解明が求められます。

 証人喚問では、元専務による守屋氏への接待攻勢の実態も明らかになりました。

 元専務とのゴルフについて、守屋氏は「明らかに自衛隊員倫理規程違反であり、接待だと認識していた」と語り、十一年ほど前からその回数は「二百回を超えている」と明らかにしました。また、「私と妻のゴルフセットをいただいた」と証言。提供は、ゴルフを始めたころと四、五年前の二度にわたっていたといいます。

 夏休み、冬休みを利用した元専務との家族ぐるみの旅行についても「資金は元専務がお払いになったと思う」と語り、妻への接待は「(元専務から)バッグをもらったということは聞いている」「赤坂のカラオケクラブに二、三度連れていっていただいた」などとしました。

 そのほか、お歳暮、お中元、海外旅行のおみやげもやりとりしていました。


給油量隠ぺいの経過

2003年
2月25日 海自補給艦「ときわ」が米補給艦ペコスに約80万ガロンを給油、ペコスからイラク戦争に参加する米空母キティホークに約67.5万ガロンを給油。
2月26日頃 海幕防衛部運用課担当者が給油量を取り違えて入力(防衛省報告)
3月20日 イラク戦争開始
5月6日 空母キティホークの艦長が記者会見で「海上自衛隊から補給艦経由で約80万ガロンのディーゼル燃料を受け取った」と発言。
5月7日 日本共産党の小泉親司議員(当時)が参院決算委で艦長証言についてテロ特措法違反だと追及。石破茂防衛庁長官(当時)は米側に確認したとして流用を否定。
5月8日 石川亨統合幕僚会議議長(当時)が記者会見で、「海自から米補給艦(ペコス)に約20万ガロンの補給を実施」と発言。
5月9日 海幕装備部需品課担当者、防衛部防衛課長に誤りを指摘。防衛課長は「キティホークへの間接給油問題が鎮静化しつつあったことを考慮し」上司や内局への報告をせず。
同  日 福田康夫官房長官(当時)が記者会見で、海自補給艦「ときわ」から米補給艦ペコスへの給油量を「約20万ガロン」である旨説明。「キティホークの燃料消費量は1日20万ガロンで、(海自提供の燃料は)ほとんど瞬間的に消費してしまう」とイラク作戦への転用疑惑を否定。
5月15日 小泉親司議員、参院外交防衛委で再び給油問題を追及。石破長官は給油量について、米補給艦に「20万ガロン」と答弁。
5月16日 衆院安保委で日本共産党の赤嶺政賢議員が給油問題で質問。
2007年
9月20日 市民団体「ピースデポ」が給油量の誤りを指摘。
9月21日 防衛省、 03年2月のペコスへの給油量を80万ガロンに訂正
10月10日 日米両政府がイラク転用疑惑を否定
10月17日 新テロ特措法案を閣議決定
10月22日 防衛省が給油問題をめぐる報告書を提出

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