2007年11月1日(木)「しんぶん赤旗」

伊勢神宮奉賛募財を自治会が集めていいの?


 〈問い〉 伊勢神宮式年遷宮奉賛募財として、自治会を通じて1戸700円以上の募金を集めています。隣組の組長が集約して班長に届け、地区の氏子総代(区役員)が集めるのですが、憲法20条の規定からみても、違和感をもちます。日本共産党の見解をお聞かせください。(長野・一読者)

 〈答え〉 行政機構の末端を事実上担っている自治会が伊勢神宮という特定宗教のために募財活動をすることは、憲法第20条の信教の自由と政教分離の原則にてらして、ふさわしくありません。現代社会には多様な宗教が存在し、地域住民はそれぞれが信仰の有無をふくめ、独自の宗教的立場や信条をもっています。町内会や自治会が各世帯に頭割りで募金をおこなうなら、個々人の信教の自由、思想・信条の自由を脅かすことになります。

 戦前の国家神道の時代は、地域住民全員がその地域にある神社の氏子にされ、参拝を義務付けられました。その神社の頂点に位置づけられたのが伊勢神宮でした。

 伊勢神宮は「皇祖」とされる天照大神を祭神とし、7世紀ごろに天皇家の氏神として創建されたとする説が有力です。8世紀中葉には天皇家の氏神から国家神と位置づけられ、神社から「神宮」となりました。白木造りの建造物の耐久性から20年くらいで建て直しが必要で、8世紀初頭から20年に一度の建て替え(遷宮)がおこなわれてきました。江戸時代以降は、豊作の神、商売繁盛の神として民衆の「お伊勢まいり」も盛んになりました。

 祭政一致をかかげた明治政府は、民衆の信仰も利用して、伊勢神宮を国家神道の“総本山”にし、遷宮も国営事業になりました。

 戦後、国民を天皇崇拝と侵略戦争にかりたてた国家神道は解体され、新憲法は信教の自由と政教分離の原則を明記しました。伊勢神宮は他の宗教と同じ民間の一宗教法人となりました。1949(昭和24)年は式年遷宮の年でしたが、実施できませんでした。そこで、反動勢力は式年遷宮奉賛会を組織し、地方神社の氏子組織が利用されました。さらに伊勢神宮国有化がたくらまれ、首相の伊勢神宮参拝が新年の仕事始めとされるようになりました。自民党の「新憲法草案」には「社会的儀礼又は習俗的行為」という表現で、政教分離原則の空洞化をくわだてる文言がもりこまれています。

 自治会と氏子組織との混同をあらためる努力が必要です。(平)

 〔参考〕藤谷俊雄・直木孝次郎『伊勢神宮』(新日本新書)

 〔2007・11・1(木)〕


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