2007年11月3日(土)「しんぶん赤旗」

主張

薬害肝炎問題

患者救済し、癒着の根を絶て


 「私たちの人生を奪った責任を認めて謝罪してほしい」「国と製薬企業は汚染の実態を知っていながら隠していた。ほんとうに怒りを覚えます」。肝炎ウイルスに汚染した血液製剤「フィブリノゲン」を投与されてC型肝炎に感染した患者情報を、厚生労働省が製薬会社から得ていながら本人には隠していたことが明らかになり、薬害肝炎訴訟の原告をはじめ国民の怒りが広がっています。

 肝炎訴訟では、政府は原告患者らの怒りにおされ、和解の動きも見せていますが、患者の救済には薬害肝炎を放置してきた国の責任を認めることが不可欠です。国と製薬会社との癒着の根は絶たねばなりません。

告知しなかった重い責任

 C型肝炎訴訟の原告・弁護団の求めに応じるかたちで、厚労省がようやく公表した薬害肝炎の被害者の特定につながる資料には、症例リスト四百十八人のうち、二人の氏名と百十六人のイニシャルが記載されていたとされます。製造販売元の田辺三菱製薬(旧三菱ウェルファーマ、旧ミドリ十字)から二〇〇二年に報告を受けたものです。田辺三菱製薬はさらに、報告した四百十八人の症例のうち、百九十七人については実名の記載を把握しており、四十人は住所もわかっていたといいます。

 厚労省は〇二年以前の肝炎発生の報告書原本と、写し二百七十四例を廃棄処分にまでしていました。同省が感染例四百十八人の資料を発表した直後の参院厚生労働委員会(十月三十日)で、日本共産党の小池晃参院議員の追及によって医薬食品局長が明かしたものです。五日前の同委員会で同局長は「原本は廃棄したが、写しが残っている」と答えており、虚偽答弁をしたことになります。患者の命にかかわる情報を、人の命を第一に考えるべき厚労省が廃棄するなどは、絶対に許されません。

 輸血や血液製剤の投与など主に医療行為で感染するウイルス性のC型肝炎は、自覚症状がないまま、二十―三十年後に肝硬変や肝がんになるケースが多くあります。ある日突然、肝硬変が発症し、その後、肝がんに進行して死に至る危険性が高い病気です。出産や外科手術の際に血液製剤「フィブリノゲン」を止血剤として投与され、本人が感染を知らないケースが少なくありません。新生児向けの止血剤などに使われた第九因子製剤「クリスマシン」「PPSB―ニチヤク」による感染者もいます。

 C型肝炎は早期に病気を発見できれば、症状の進行を遅らせることができます。インターフェロンの投与など必要な治療をおこなえば発症を抑えることもできます。このため、感染した可能性のある人に一刻も早く告知することがきわめて大事です。製薬会社から報告を受けながら患者に知らせなかった厚労省の責任は大きいものがあります。

うみを出しきるとき

 厚労省が製薬会社から得た患者情報を、患者本人には伝えていなかった背景には、国民の命や健康よりも製薬業界の利益を優先する「政・官・業・医の癒着構造」があります。小池議員が一日の国会でただしたように、製薬会社に天下りした官僚と現職官僚とが口裏を合わせてもみ消しをはかった「国と製薬会社の共同の犯罪」だった疑いが濃厚です。

 薬害エイズ事件でも、この癒着の構造が厳しく指摘されました。国=厚労省と製薬会社は、情報を隠ぺいし、患者を放置してきた責任の重さを自覚し、直ちにすべての被害者に告知するとともに謝罪し、命を守るために全力をつくすべきです。


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