2007年11月5日(月)「しんぶん赤旗」

PKK対策を約束

周辺国会議 米占領で事態混迷

イラク


 【カイロ=松本眞志】トルコのイスタンブールで開催されたイラク周辺国閣僚級会議は三日、イラク内外でのテロ活動の防止、宗派間抗争、イラク難民問題などの解決に向けて最終宣言を採択し終了しました。会議の焦点の一つとなったトルコとクルド労働者党(PKK)の対立について、イラク政府はPKKの厳重取り締まりを誓約しました。

 会議にはイラク周辺国、国連安保理常任理事国、主要国サミット参加国、アラブ連盟、国連などの代表が参加。本来はイラク国内の治安対策を中心課題とする会議でした。しかし、PKKがイラク北部のクルド人自治区を拠点にトルコ領内での軍事行動を活発化させ、トルコ国会が対イラク越境攻撃を承認する情勢のなかで開催され、トルコ・クルド問題がイラク治安情勢の新たな焦点として浮上しました。

 イラク政府のダバグ報道官は、PKKのメンバーを逮捕・拘束すると明言しつつも、イラク国内の問題として対応するとの姿勢を強調。ゼバリ外相もトルコ・米両国代表との会談後、トルコとの共同軍事行動を当面行わないことを示唆しました。トルコ政府は、軍事解決は選択肢に残っていると主張し、越境侵攻の可能性を否定していません。

 ブッシュ米政権はこれまで、イラク占領政策の柱として旧フセイン政権を支えてきたイスラム教スンニ派の対抗勢力にシーア派やクルド人勢力を利用してきました。石油の利権とも絡み、イラク政府に対してクルド人自治区により強い自治権を与えるよう働きかけてきた結果、クルド人の間で独立を目指す動きが生まれました。米国が「テロ組織」と指定したPKKも勢力を強めてクルド人自治区とイラク政府、トルコとの間であつれきを生む結果となりました。

 ライス米国務長官は、本会議とは別にトルコのババジャン外相、イラクのゼバリ外相と三者会談を行い、トルコ政府と歩調を合わせる形でPKKを「共通の敵」と強調。一方でトルコに対してイラクへの越境進撃が同国の治安情勢を不安定化させるとして自制を求めました。イラクのマリキ首相も今まで以上にPKKを批判する態度をとりました。

 米・イラク両政府はこれまで、クルド勢力に遠慮してPKKへの直接的対応を控えてきました。これに対してトルコは、両国の対応を不十分だと非難しました。トルコは北大西洋条約機構(NATO)でも有力な軍事力をもつ米国の同盟国であり、ブッシュ米政権としても無視できない存在です。米国は、先見の明のないイラク政策によってトルコ・クルド問題をより複雑にし、トルコとの関係修復を迫られるジレンマに直面しています。



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