2007年11月8日(木)「しんぶん赤旗」
キリスト教・仏教・イスラム教の平和教義とは?
〈問い〉 10月23日付外信面、世界宗教者平和会議の記事を読み、ローマ法王が「神の名による暴力やめよ」とよびかけたことをうれしくうけとめました。ところで、キリスト教、仏教、イスラム教など主な宗教の平和教義とはどんなものですか?
(京都・一読者)
〈答え〉 仏教は釈迦(仏陀)が創唱者で、約2500年前、奴隷制と身分差別、殺りくの社会のなかで、世間と距離を置いた平等な人間関係の集団(出家によるサンガ)を形成します。
釈迦晩年に出身の釈迦族が隣国の軍隊に攻め亡ぼされますが、このとき釈迦は侵略者にたいして非暴力だったと伝えられています。
釈迦の言説をまとめた書物が経典で、そこには「殺すなかれ、殺さしむなかれ」などの不殺生の平和思想が随所にみられます。
キリスト教は、約2000年前、イエス・キリストの宣教活動から始まります。古代ローマ帝国に支配されたイスラエル地方で、ローマの圧政のもとで苦しむ民衆が解放される神の国の到来が近いことを説きました。
この活動が弾圧されて、イエスは磔(はりつけ)刑にされます。
キリスト教の聖書(バイブル)には「剣をうちかえて鋤(すき)となし、槍(やり)をうちかえて鎌となす」などの軍備と戦争の廃棄の教えがもりこまれています。
約1500年前に生まれたイスラーム教は、ムハンマド(マホメット)が創唱者です。幼少期に両親と死別し、苦労して成長して商人となります。
ローマ帝国とペルシャ帝国の戦争の時代にあって、苦悩しているときに神(アッラー)から啓示をうけて布教を始めますが、弾圧されます。そこから立ち上がり、アラブの諸部族をまとめていきます。
ムハンマドの死後に神の啓示がクルアーン(コーラン)として編纂(へんさん)されました。イスラームという言葉は「平和」や「神への服従」という意味をもっています。
これらの宗教の草創期に共通する教義は、真理と清貧、平和と抑圧からの救済などでした。しかし、民衆の支持が広まると、各時代の支配者が宗教を利用し、宗教の側も権力に接近したり支配者になったりして、創唱者の教えがゆがめられたこともありました。
10月21日のローマ法王の「暴力が神の名で正当化されている」という発言は、いまだに「宗教が憎しみを運ぶ手段」となっていることへの警告です。
三大宗教は多様に分岐して伝わっていますが、各宗教の平和思想の解明とローマ法王がメッセージをおくった世界宗教者平和会議のような諸宗教間の平和的交流、現代社会との関係の探求のとりくみがすすめられています。現在では、日本にみられるように、憲法9条と同じ立場で平和の教義を説く宗教者がふえています。(平)
〔2007・11・8(木)〕