2007年11月9日(金)「しんぶん赤旗」
強まる親米色
仏外交の“両刃の剣”
【パリ=山田芳進】訪米したサルコジ仏大統領は改めて親米姿勢を鮮明にしました。しかしその親米路線は、協調しつつ対米自主性を保持してきた仏外交にとって“両刃の剣”だとの見方も出ています。
サルコジ氏は五月の大統領就任後、夏のバカンス、国連総会出席と二度米国を訪問していますが、公式訪問は今回が初。現役大統領としては二〇〇一年十一月のシラク前大統領以来となります。
今回の最大の狙いは、シラク前大統領が〇三年に国連決議で容認されない米国主導のイラク侵略戦争に反対したことから生まれた二国間の溝を埋めることでした。
そのためサルコジ氏は、米独立戦争への参加で米国内でも英雄視されている仏貴族ラファイエット将軍の生誕二百五十年にあたる事実に触れ、仏米両国が将軍とジョージ・ワシントン初代大統領の関係以来の「古い友人」であることを強調しました。
その上で、「友人」であることの証しとして「米国は対テロ闘争でフランスを頼りにできる」と述べ、二つの約束を明確にしました。一つはアフガニスタン関与の強化であり、サルコジ氏は「フランスは、必要な限りアフガニスタンに関与し続けることを、きょう公式に宣言する」と表明。もう一つは対イラン関係で、イランの核保有は「絶対に受け入れられない」とし、「制裁を強化する必要性」を強調しました。
これらの約束は、まさにブッシュ米大統領が望むものでした。サルコジ氏は、大統領選挙中には、フランスのアフガン関与に疑問を投げかける態度を見せていましたが、就任後は同国南部に軍事教官や戦闘機ミラージュなどの派遣を決定し、関与を強めています。
一方、サルコジ氏がイラク問題で沈黙を守ったのは、仏世論で引き続き圧倒的多数をしめる反戦論を考慮せざるをえなかったからだとみられます。
バーンズ米国務次官はサルコジ氏の姿勢を「(米国の戦略への)大変建設的な貢献だ」と評価しました。またイラン問題では、フランスが働きかけ、国連の枠外での独自の「強い態度を取ること」に期待を寄せています。
米国の外交政策に影響力を持つ米ブルッキングス研究所のジェレミー・シャピロ氏は、七日付仏紙ルモンドで、サルコジ氏の手法は「自己破壊の種を包含している」と述べ、米国に接近すればするほど、欧州諸国を説得しにくくなると指摘しています。
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