2007年11月10日(土)「しんぶん赤旗」

「集団自決」

軍の構造の中で命令

沖縄戦裁判 大江健三郎さんが証言


 沖縄戦の「集団自決」で、旧日本軍の命令を否定する元軍人らが、軍関与を指摘した大江健三郎氏の著書『沖縄ノート』などで名誉を傷つけられたとし、同氏と出版元の岩波書店を相手に出版差し止めと賠償を求めた裁判の口頭弁論が九日、大阪地裁(深見敏正裁判長)であり、原告・被告双方への尋問が行われました。大江氏は「(軍の縦の構造の中で)命令はあったと考えている」と証言。原告の元隊長が『沖縄ノート』を読まずに提訴したことも明らかになりました。

 大江氏は、「自決命令は隊長個人の資質や選択によるものではなく、日本軍―(沖縄駐留の)三二軍―守備隊という縦の構造の力が島民に強制した」と主張。著書でもその構造を問題にしたので、あえて隊長の個人名は書かなかったとのべました。手りゅう弾を渡されたという体験は自身も何度も聞いているとし、「(新たな証言も発表されて)命令があったという確信は強くなっている」と語りました。

 原告で元座間味島守備隊長の梅沢裕氏(90)は、自決命令は出していないと主張。自分には「責任はない」とのべました。

 多くの住民が「自決するように」と手りゅう弾を渡されたことについては「知らない」としつつ、隊長の許可なしに手りゅう弾を渡すことはありえないと認めました。『沖縄ノート』を読んだのは「(提訴後の)去年」だと証言。「名誉を傷つけた」と訴えた本を読んでいなかったことが明らかになりました。

 原告で元渡嘉敷島守備隊長(故人)の弟、赤松秀一氏(74)は、兄に事実の確認をしたことはないと証言。人に勧められて裁判を起こしたことを明らかにしました。

 文部科学省は教科書検定で、梅沢氏らの主張を根拠の一つに軍強制の記述を削除させています。



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