2007年11月13日(火)「しんぶん赤旗」
「大連立」の動き、国会対応について
NHK「日曜討論」 志位委員長の発言(大要)
日本共産党の志位和夫委員長は十一日、NHK「日曜討論」でインタビューにこたえました。聞き手は影山日出夫解説委員。
自民・民主の「大連立」協議
同質・同類の党を自ら示した
影山 まず「大連立」の話ですが、志位さんは「国民への背信行為」とおっしゃっていましたが、共産党はこれまで、憲法「改正」とか消費税の問題をとりあげて、自民党も民主党も実は根っこは同じだといってこられました。だとしますと、そのふたつの党が手を組むのは当然の成り行きだという見方はされていないんですか。
志位 まず、国民との関係でいいますと、この前の参院選挙でああいう審判が下ったわけですね。その民意に背くということは、まずいわなければならないと思います。
自民党の側からいいますと、あれだけ厳しい「自公政治ノー」という審判が下ったわけですから、それを受けとめて、これまでやってきた政治を反省して、政策の転換をやるのが当たり前のはずなのに、まちがった政治を続けるために数合わせをして、「大連立」に走るのは、邪道の政治だと思います。
一方、民主党の側でいいますと、「自公政権打倒」といって選挙をたたかったわけですから、その「打倒」の相手と手を組むというのは、裏切り以外のなにものでもない、(自公政治の)延命に手を貸すものだといわなければなりません。
同時に、もうひとついいたいのは、いまおっしゃられたこととの関係でいいますと、今度の事態を通じて「『二大政党』の正体見えた」というところがもうひとつ大事な点だと思いますね。
私ども、これまで、(自民、民主の)両党が憲法の問題、消費税の問題などで、同じ流れのなかにあるという批判をしてきました。やはり「大連立」までいってしまう、ともかくもいったんは頓挫した格好になっているけれども、両党の党首がそこまで合意してしまうということは、両党の間で、よく「対立」「対立」といわれますが、対抗軸の中身がない、対抗する政治の中身がない、同質、同類の党だということを自ら示したというのが、今度の一連の顛末(てんまつ)だったと思います。
共産党の存在感
改革の党としてがんばりどころ
影山 そうしますと、そこがむしろ手を結んでくれた方が共産党の存在感がはっきりしてよかったんじゃないですか。
志位 事柄の性格が非常に分かりやすくなったと思うんですよ。同質、同類の党ですから、今後もいつ「大連立」という問題が再燃する、あるいは浮上するか分からない、そういうことを常にはらみながらの情勢です。
そういうなかで共産党が、そういう間違った政治にたいして正面から対決する。それから、アメリカ、大企業いいなりの政治を大本から変える、この改革の党としておおいにがんばりどころだと思っています。
連立協議のねらい
根っこに自衛隊海外派兵の恒久法づくり
影山 ひとつ分からないのは、選挙で勝つために野党協力を推進してきた小沢さんが、なぜ自民党と連立協議に入ろうとしたのか、そのへんの本当の狙いは、どうごらんになっていますか。
志位 ひとつの根っことして、あの(自民、民主の)党首会談、密室の協議のなかでの重大な合意事項として、自衛隊の海外派兵のための恒久法、これをつくることでだいたい意気投合したと伝えられています。
恒久法というのは、これまでアフガニスタンとかイラクの戦争に自衛隊を出す場合に、特別措置法という時限立法をつくっていたものを、いつでもどこでも(海外に自衛隊を)出せる立法(の仕組み)にしてしまおうというもので、非常に危険な、常時、憲法を破る法律です。
この合意をしたというのが、ひとつの大きな動機になって、ほかの事は話し合った形跡がないんですね。国民の大事な生活の問題とか、いっさい話し合った形跡がない。憲法を破るという恒久立法をつくる、この点での合意ができたら一足飛びに「大連立」にいく。ここに非常に危険なところがあると思います。
今後の国会対応
論戦の力、世論の力で再派兵を許さない
影山 これまで共産党は国会のなかで民主党と一定の共同関係を組む場面もあったと思うんですが、連立政権協議に入らなかったとはいえ、いったんこういう途中経過があったということになりますと、民主党との関係は、これからは完全に一線を引くということになるんでしょうか。
志位 私たちは国会で、さまざまな問題で、一致点があれば野党間で協力するという立場は、これまでもやってきましたし、この立場は変わりません。
ただ、やはり、民主党と自民党の間で、こういう(「大連立」への動きという)事態が起こったという事実は重いものがあります。
そして、民主党が恒久法の具体化として出している「対案」というのは、ISAFとよばれるアフガニスタンへの国際治安支援部隊の陸上部隊に、陸上自衛隊を出すというものです。これを「対案」として小沢さんは掲げていますね。これは多国籍軍であって、まさに戦争をやっている部隊です。そこに出すというのが、これが民主党の「対案」ですから。
かたや自民党のほうは海上自衛隊を(再派兵する新テロ特措法案を)通そうとしている。かたや民主党のほうは陸上自衛隊を出そうとしている。こういう関係にありますから、今後の国会がどういう展開になるかということは、予断を持っていえません。
ですから、今度の新テロ特措法案を廃案に追い込む一番の力は、国会論戦での正論の力とともに、国民世論のしっかりとした多数が再派兵を許さないという状況をつくる、この力だと思っています。そこの力に働きかけていくたたかいをおおいにやりたいと思っています。
衆参の「ねじれ」状況
悪い法案は通らない、いい法案は通りやすくなった
影山 今回の「大連立」という話は、そもそもいわゆる「ねじれ」現象をどう解消するかというところから出発しているんですけれども、共産党は衆参の「ねじれ」現象は解消する必要はない、野党と与党が対立している問題についてはいっさい法案が成立する必要がないというお考えなんでしょうか。
志位 国民の立場からいいましたら、今の状況というのは、なにか不都合が起こっているわけじゃないんですよ。
たとえば、インド洋に派兵していた海上自衛隊の艦船が初めて撤収するという事態になったわけですね。これは、戦前、戦後を通じて、国民の声で軍隊を撤収させたというのは歴史上初めてのことで、私はなかなか喜ばしいことだと思うんですよ。
それから先ほどから(他党のインタビューで)いわれている被災者生活再建支援法、この問題については、かねてから、“住宅本体の再建にたいする公的支援を”という被災者のみなさんの長年の運動があったわけです。この問題について私は記者会見で、(参院選の結果を受けて)与野党を超えて、そういう方向に踏み出したんだから、超党派で(改正案を)成立させようじゃないかというよびかけもしましたけれども、これが実ることになりました。
ですから、国民からすれば、悪い法案は通らない、いい法案は通りやすくなる状況が生まれているわけですから、何も不都合はないと思います。
解散・総選挙
国民の前で国政の根本を議論し信を問う
影山 そういうなかで、党首会談が物別れに終わったことによって、結果的に解散の時期が早まるんじゃないかといわれていますが、共産党としてはどう対応していかれますか。
志位 これは国民の前で、正々堂々と国政の根本問題についてしっかり議論したうえで、(解散・総選挙で)信を問うということを私たちは求めていきたいと思っています。
やはりいま、とりわけ、新テロ特措法案を何がなんでも力ずくで通すという動きを許さないこと。それから防衛利権ですね。これは守屋前防衛事務次官の問題、大変なあれだけの接待をやって見返りがなかったというのはだれも信用できない。しかも、それに政治家が介在していた、元防衛庁長官が介在していたということですから、この徹底究明をやっていきたいと思います。
影山 どうもありがとうございました。
志位 ありがとうございました。