2007年11月14日(水)「しんぶん赤旗」
主張
株安・ドル安
大混乱に裸で向き合う日本
アメリカの住宅ローンの大規模な焦げ付きをきっかけにした信用不安が、世界の為替市場や株式市場を巻き込んで連鎖的に広がっています。
先週の米国株の大幅安を受けて十二、十三日の東京株式市場は連日で年初来安値を記録しました。ドル安が続く為替市場では十二日、一気に二円以上の円高がすすんでいます。
空前の値上がりを続ける原油もドル建てです。ドル安は原油市場への資金流入をうながし、原油高騰に油を注いでいます。
破たんの真っ最中
信用不安のはじまりは「サブプライムローン」と呼ばれるアメリカの住宅ローンです。金融機関が、信用力が低いとみなす借り手に高金利で融資し、当初数年の支払額を低く抑える代わりに、その後の支払額が急増する無謀なローンです。
これがアメリカの「最先端」の金融技術によって証券化され、ほかの証券と組み合わされて幅広く売り出されて、欧州や日本の金融機関、投資家に拡散しています。「サブプライムローン」が急増したのは二〇〇三年ごろからです。現在は、少額返済で済む期間がすぎて破たんが表面化している真っ最中です。
七、八月に欧州の銀行が巨額の損失を公表し、ここにきて米証券大手のメリルリンチや米大手銀行のシティが数千億から一兆円に上る損失を明らかにしました。日本の金融機関の損失も、数十億円から数百億円に上っています。
日本の金融機関はアメリカにならって、「証券化」を新たな利益拡大の柱に位置づけています。小泉「改革」で「貯蓄から投資へ」の掛け声のもと、アメリカを手本に住宅ローンの証券化をすすめる(金融審議会)、「貸出債権の流動化、証券化を促進」(金融庁)するなど、金融市場の「アメリカ化」を推進してきたことが拍車をかけました。
小泉内閣は「市場を活用してリスクシェアリング(危険の分担)能力を高める」(金融審)という建前を掲げました。しかし、極限まで高めたリスクが次々と破裂しているのがアメリカの実態です。日本の金融をいっそう利益優先の投機的な方向に誘導した責任は極めて重大です。
金融機関の損失だけではありません。小泉内閣以来、輸出頼みで経済成長を図ってきたやり方が、米経済の混乱や円高ドル安の影響を一段と重くしています。
巨額の貿易赤字と財政赤字の「双子の赤字」を垂れ流すアメリカ経済を支えるために、小泉内閣は公的資金でドルを買いあさりました。今では外貨準備は百兆円規模に達しています。ドル安がすすむなら、巨額の政府資産の目減りに直面せざるを得ません。アメリカに盲従し、アメリカに頼った経済運営の「つけ」が回ろうとしています。
対米自立と家計支援を
「双子の赤字」に苦しむアメリカ経済とドルの価値がいつまでも維持できるはずがありません。ヨーロッパ諸国は、独自の通貨圏を築いてアメリカに対する自立性を高めることに力を入れてきました。中国は外貨準備のドル以外への多様化を模索しています。
一方で日本は、アメリカ経済とドルの混乱に丸裸で直面しようとしています。さらに対米従属を続けるなら、日本経済と国民が受ける損害は計り知れません。金融、為替、貿易のあらゆる分野で自主性を確立するとともに、内需と家計を温める方向に経済運営のかじを切ることが、日本経済の将来を左右する極めて重要な課題になっています。