2007年11月14日(水)「しんぶん赤旗」

「思いやり」予算 矛盾が激化

(米) “払って当然”

(日) 国民の目厳しく


 十六日に予定されている日米首脳会談を前に、来年三月に期限切れとなる在日米軍駐留経費の「思いやり」予算特別協定をめぐって、日米間および国民との矛盾が激化しています。(竹下岳)


 「思いやり」予算として日本政府が負担しているのは、(1)基地建設費(2)日本人従業員の人件費(福利費など)(3)光熱水費(4)「訓練移転」費―です。これらは在日米軍の特権を定めた日米地位協定上も負担する義務がありませんが、政府は(1)(2)について「地位協定の枠内」と強弁。(3)(4)および人件費(基本給や諸手当)は、「地位協定上、負担できない」との立場を繰り返していたにもかかわらず、一九九一年度から「特別協定」で負担しています。

交渉は大詰め

 今年度予算で計上された「思いやり」予算は二千百七十三億円で、このうち特別協定分は千四百九億円です。

 来年一月の新協定締結に向けた交渉は大詰めを迎えていますが、政府の財政制度審議会は、「思いやり」予算の大幅な見直しを要求。これに基づいて、日本政府は光熱水費と人件費の削減を求めています。

 しかし、米側は光熱水費の大幅な増額を要求。「新協定最大の難関」(交渉担当者)となっています。光熱水費については、米兵が住宅のエアコンをつけたまま一時帰国するなど、電気・ガスの「使い放題」といった不明朗な実態が問題視されていました。このため、二〇〇一年度以降は引き下げざるをえなくなっていました。

 一方、人件費について日本側は百億円以上の削減を計画しています。具体的には、基地従業員の基本給に10%をかけて上乗せする「格差給」や語学手当、退職手当などを廃止する方針です。「米側が困ることはない」(前出の担当者)ため交渉では問題になっていません。

 しかし、基地従業員は猛反発。全日本駐留軍労組(全駐労)は十六日に防衛省と最終団交を行い、決裂した場合は二十日以降に時限ストライキを決行するかまえです。

 このような矛盾の背景には、庶民増税や社会保障の連続改悪で財政に対する国民の目が厳しくなり、いつまでも米軍「思いやり」予算だけを聖域扱いできなくなった日本側の事情があります。

総額の52%強

 一方、米側は「思いやり」予算を日米同盟強化の「戦略的責任」と位置づけ、“払って当然”という態度です。イラク・アフガニスタン戦争の長期化による戦費増大という事情もあります。

 米国防総省の「共同防衛への同盟国の貢献度報告」(〇四年版)によると、〇二年度に日本が負担した米軍駐留経費の負担額は、米国の主要同盟国二十七カ国の負担総額の52%強を占めます。

 日本政府は小手先の削減策ではなく、まず、世界でも異常な米軍への財政支援を根本的に改めるべきです。


 「思いやり」予算 ベトナム戦争による財政悪化に苦しむ米軍を支えるため、一九七八年度に始まりました。当初は労務費の一部(約六十二億円)だけでしたが、一九九〇年代には二千七百億円を超える水準になりました。二〇〇七年度までの累計は五兆円超に達しています。第二の「思いやり」予算であるSACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)関連経費や、総額三兆円の在日米軍再編経費を含めると、負担はさらに膨らみます。

表


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