2007年11月14日(水)「しんぶん赤旗」
薬害肝炎 50人告知
死亡・住所不明30人
国・企業が放置し被害拡大
「助かった命を見捨てた責任は重い」―。肝炎ウイルスに汚染された血液製剤「フィブリノゲン」を投与されてC型肝炎に感染した薬害肝炎問題で、厚生労働省は十三日、感染した疑いのある四百十八人のうち五十人に告知したことを明らかにしました。被害者からは「人の命を何だと思っているのか。国と製薬企業の悪意に満ちた怠慢がはっきりした」と、対応の遅れに改めて怒りの声が上がっています。
国は、感染者を特定できるリストを持っていながら本人に伝えず、リストを地下倉庫に放置してきました。
厚労省によると、薬害肝炎訴訟の被告企業の田辺三菱製薬(旧ミドリ十字)は、四百十八人が投与をうけた医療機関二百四十三のうち二百二十三の病院が現在も開院していることを確認。二百二十二人の身元をほぼ特定しました。そのうち五十人に感染告知をしました。
しかし、すでに十一人が死亡していたり、十九人が住所不明になっていたりして告知できない人が三十人いました。
五つの医療機関からは「検査や治療費用の負担の方向性が明確にならないと調査を行うことは難しい」と、告知に協力を得ることができませんでした。
大阪訴訟原告の桑田智子さん(47)は、「(資料が作成された)二○○二年の段階で調べていれば、多くの人がもっと早く治療できました。伝えられない人が三十人もいるとは、不誠実極まりない。多くの患者の無念を思うと胸が痛む」と沈痛な口調で語りました。
一連の訴訟は、七日の大阪高裁の和解勧告に続き、福岡高裁も十二日、和解による解決に言及しました。
桑田さんは、「資料を放置していた罪は非常に重い。本当はこの四百十八人以外にも報告は上がっているのではないか。訴訟の進行とは別にして、問題を徹底的に追及したい」と語ります。
全国原告団代表の山口美智子さん(51)も「告知があまりにも遅すぎるし、やっぱり少なすぎる」と批判します。「作業チームの初会合が突然、中止になった時点から、本当に調査できるのかと思っていた不安が的中した。担当者がどこまで本気でやっているのか疑問を感じざるを得ない」と指摘。「一人でも多くの人に告知するために、さまざまな方法を取ってほしい」と話しました。
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