2007年11月20日(火)「しんぶん赤旗」
「消費税含む税制改革を」
財政審 福祉・教育さらに抑制
財政制度等審議会(財務相の諮問機関)は十九日、二〇〇八年度予算編成にむけた意見書(建議)をまとめ、額賀福志郎財務相に提出しました。同意見書では、「財政健全化」にむけ「消費税を含む抜本的な税制改革を実現」することを求めました。国の歳出について議論する財政審が、歳入の個別税目である消費税にふれるのは極めて異例です。
西室泰三会長は記者会見で、意見書の記述が消費税率の引き上げを意味していることを言明しました。
また同意見書は、「(消費税は)今後増大する社会保障給付を安定的にまかなう財源として極めて重要な税目」とも強調。社会保障財源として消費税率を引き上げることを示唆しました。
意見書は、〇八年度予算編成に向け、社会保障や教育関係予算などをいっそう抑制することを提言しました。具体的には、診療報酬の「改定」や生活保護の扶助基準「見直し」、公務員定数の純減、教職員定数の純減などを求めています。
意見書は、後期高齢者の医療費負担増を凍結する問題について、「〇六年医療制度改革の理念や方向性は堅持すべき」だと言及。西室会長は会見で「(凍結は)極めて残念な政治的決着だ」と批判しました。
解説
財政審
「構造改革」ノーの国民世論に挑戦
異例の消費増税言及
個別税目についての言及を避けてきた財政制度等審議会が消費税の問題に言及したのは異例のことです。
「もう黙っているわけにはいかない」。西室泰三会長は強い口調で語りました。財政審は、毎年春と秋に、「歳出改革」を提言してきましたが、西室氏には「財政構造改革が進んでいない」とのいらだちがあります。
「財政健全化」や社会保障の「安定財源確保」のために、増税色の濃い意見書を打ち出した背景に何があるのか。来年度の消費税増税見送りを表明した福田首相や自民党首脳への批判がにじみます。同時に浮かびあがるのは、医療費負担増の凍結など、財政「構造改革」推進者の西室氏らにとって、“バラマキ”としか感じられない施策が進められようとしていることへの憤りです。
しかし、消費税増税のスケジュールを狂わしたのも、高齢者の医療費負担増を凍結させたのも、国民の世論と運動の成果にほかなりません。財政審の意見書は、こうした国民の世論と運動への真っ向からの挑戦状です。
大企業に応分の負担を求めながら、無駄な大型公共事業や巨額の軍事費を見直せば、消費税増税に頼ることなく、社会保障の財源を確保しながら、財政健全化の道を開くことができます。
増税と社会保障改悪、教育改悪で、国民に痛みを強いる財政「構造改革」路線こそ改めるべきです。
(山田英明)
財政制度等審議会 財務相の諮問機関で、国の財政のあり方等について議論し、毎年十一月に来年度予算編成等に関する建議(意見書)を財務相に提出します。委員は財界代表や学識経験者らで構成されています。会長は、西室泰三東京証券取引所会長(日本経団連評議員会議長、東芝相談役)。委員には勝俣恒久東京電力社長(日本経団連副会長)、柴田昌治日本ガイシ会長(同評議員会副議長)などが名を連ねています。
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