2007年11月21日(水)「しんぶん赤旗」
毎年秋に米国から届く「年次改革要望書」とは?
〈問い〉 毎年秋になるとアメリカから「年次改革要望書」なるものが届くそうですが、どんなもので、いつから始まったのですか? 郵政民営化もここから始まったそうですが、本当ですか? ことしの要望書には何が書いてあるのですか?(福島・一読者)
〈答え〉 現在の日本は、「今日の世界の国際関係のなかで、きわめて異常な国家的な対米従属の状態」(日本共産党綱領)にあります。軍事・外交だけでなく、日本の経済にも、アメリカの世界戦略とアメリカ独占資本主義の利益のために、従属の強い鎖がかけられています。
それを象徴的に示しているのが、「年次改革要望書」(正式名称・日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく要望書)です。
これが始まったのは1993年のクリントン大統領と宮沢首相との首脳会談でした。
その仕組みとは、(1)毎年秋に、政治・経済のあり方について、アメリカが文書で注文をつける、(2)その注文書にそって、日本政府がその実施方を検討し、実行に移してゆく、(3)その実行状況をアメリカ政府が総括し、翌年春、その成果をアメリカ議会に報告する―というものです。まるで、部下が上司から指示をうけ、その遂行状況を点検されるようなものですが、こういうシステムをつくることに首脳会談で合意してしまったのです。
このシステムは、いまでも確実に動いています。毎年秋になると、アメリカ政府から「要望書」という形で、アメリカ側の要求一覧が届きます。日本政府はこれを受け取ると、これは農水省の分、これは経産省の分というように仕分けして各省にくばり、担当の省庁がその対応策を研究して、できるものから実行に移してゆく、その進行状況を日米の担当者が定期に集まって点検し、翌年3月には、アメリカ政府がその全成果を「外国貿易障壁報告書」にまとめて議会に報告、日本とのあいだで、貿易の壁を打ち破るうえで今年度はこれだけの成果をあげたと、実績宣伝をするわけです。
このシステムが、合意の翌年94年から始まり、続いています。「郵政民営化」も、このシステムを通じて要求されました。
ことしの「要望書」は10月18日付でだされています。その内容は、規制改革路線の継続を迫るもので、具体的には、(1)米企業が強みを持つ医療機器や医薬品分野の市場開放(2)銀行窓口での保険商品販売については今年12月までに全面解禁する(3)物流コストの引き下げ(4)郵政関連では、ゆうちょ銀行やかんぽ生命保険と民間企業との間で課税や当局による監督基準を同一にする、郵便事業の通関手続きで差別的な取り扱いをしない―などとなっています。
経済の問題でこんな上下関係が押しつけられて、アメリカの介入が制度化されている国は、日本以外には世界でありません。日本経済を健全化し国民生活を向上させるには、この「異常」をただすことこそが求められています。(喜)
〔2007・11・21(水)〕
訂正
17日付「海行かば…」の記事中下段30行目の「家持は一方で、防人の歌も」以降を「つくり、編集しています。家持が選んだ一つが次の歌です」と訂正します。