2007年11月22日(木)「しんぶん赤旗」
シリーズ 命と暮らしの焦点 日本共産党国会議員に聞く
児童扶養手当
“削減ありき”止めた
――シングルマザーと力合わせて
高橋千鶴子 衆院議員
母子家庭に支給される児童扶養手当について、与党のプロジェクトチームが来年四月の支給削減を「凍結」する方向で合意しました。国会で追及を続けてきた衆院厚生労働委員の高橋千鶴子議員に聞きました。
――与党の合意をどう見ますか。
二〇〇二年の法改悪で、児童扶養手当を来年四月から最大で半減させることが自民、公明、民主各党の賛成で決まりました。五年以上受給し、末子が八歳以上の世帯が対象です。与党の「凍結」案は、削減対象を「就業意欲がみられない者」に限定する内容です。
母子家庭の一割が生活保護世帯で、84・5%は就労しています。病気や障害等は除かれるので、削減対象は限りなくゼロに近くなります。事実上の「撤回」に追い込みました。今後、完全撤回させる必要があります。
「凍結」「中止」を求める世論の広がりが、政府と与党を追い詰めた結果です。私も新婦人(新日本婦人の会)の方々と政府交渉や院内集会を行うなかで、深刻な実態に胸がつまりました。NHKスペシャル「ワーキングプアII」で紹介された福島県のお母さんたちが市議会で意見書を可決させるなど、各地の運動も広がっています。
――共産党は早くから取り上げてきましたね。
私たちは削減法案にきっぱり反対し、法の成立後も、一貫して削減の撤回を求めてきました。
今年初め、志位和夫委員長や佐々木憲昭議員が予算委員会などで質問し、私も昨年来、重ねて取り上げてきました。十六日には削減撤回を求めたのに対し、舛添要一厚労相が「全力をあげて取り組みたい」と答えました。
政府は、「母親の就業支援の強化」を手当削減の口実にしていました。それに対して私たちは、就業支援が五年でうまくいって、手当を削減しても暮らしていけるようになるという保証が何もないのに、「先に削減ありき」の政府の姿勢を批判してきました。その心配が現実になっています。
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――就業支援の実態はどうなのでしょうか。
就業支援は必要なことですが、政府の支援は母子家庭の実態に見合ったものではありません。
国の施策として就業・自立支援センターが開設されましたが、登録しても一切仕事の紹介がなかったという人が半数以上です。私も山形のハローワークを見に行きましたが、特別相談窓口というのがあって、障害者と高齢者とシングルマザーと青年と、全部一つの窓口なのです。しかも、朝九時から夕方五時までしか開いていないところが多い。これでは、仕事を休んで行かなければいけないし、パートだったらその分減給になって、そもそも行けない。
単に窓口をもうけるだけでは、問題の改善にはつながりません。保育所の拡充など子育てしながら働ける環境づくり、企業の意識改革などの条件整備が不可欠です。
――母子家庭の状況は厳しいままですね。
厚生労働省の実態調査(十月公表)によると、〇五年の母子家庭の平均年収は二百十三万円で、三年前と比べて一万円増にとどまっています。全世帯の平均所得の四割以下の水準です。
新婦人の調査では、12%が複数の職場をかけもちして働く「ダブルワーク」「トリプルワーク」という実態があります。また、四割の人が、児童扶養手当をこれ以上削減されたら、さらにかけもちで仕事を増やすしかないと答えています。
社会保険にも入れない未権利の状態で、自分が体をこわしたら子どもはどうなるのかという不安を抱えながら、昼も夜も働いているお母さんたちの実態が浮かび上がってきます。シングルマザーが、わが身を犠牲にしなければ子育てできない社会が、まともな社会といえるのでしょうか。
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――今後、大切なことは。
与党案にある「就業意欲が見られない」という条件の解釈が、恣意(しい)的に使われないように注視する必要がありますね。
さらに運動を広げて、手当削減の法案そのものを完全撤回させ、母子家庭の命綱である児童扶養手当を拡充させることが必要です。就業支援を実効性あるものにする環境整備も、引き続き迫っていきます。
聞き手・秋野幸子
写 真・山形将史