2007年11月26日(月)「しんぶん赤旗」

主張

思いやり予算

全廃せまるのが筋ではないか


 来年度の軍事予算編成作業をにらみながら、在日米軍駐留経費(思いやり予算)をいくらにするかが日米政府の重大問題になっています。

 財政事情を理由に基地で働く日本人従業員の人件費を削減するというのが日本側の方針で、これに反発しているのがアメリカです。福田康夫首相は、日米首脳会談でアメリカの言い分に反論さえしませんでした。

 本来日本側に負担義務のない巨額の思いやり予算を存続させること自体が重大です。削減交渉にわい小化できる問題ではありません。

負担義務はない

 思いやり予算は、円高・ドル安で「苦しんでいる」米軍を支援するため、一九七八年に金丸信防衛庁長官(当時)が日米地位協定さえも無視してふみきったものです。米軍基地整備費に加え、八七年から五年ごとの思いやり協定で基本給や光熱水料などへも対象を広げ、いまや米軍給与以外のほぼすべての経費を日本が負担し、負担額も当初は六十二億円だったものが今年度は二千百億円強にもふくれあがっています。

 アメリカが結んでいる他の軍事同盟諸国には、思いやり予算などという卑屈なしくみはありません。思いやり予算は世界の笑いものです。

 米軍再編の関係で昨年期間を二年とした特別協定は、来年三月で期限切れです。思いやり予算を全廃する絶好の機会です。ところが政府にはその意思がまったくありません。

 政府がアメリカに示すのは、日本人従業員の人件費のうち百億円ほどの削減をいうだけです。財政制度等審議会が人件費の見直しを要求していることを理由にしています。しかし、削減をいうのは、こののち米軍再編経費の負担が待っているからでもあります。三兆円もの新たな負担にふみだす危険は明白です。

 本来、思いやり予算の内容はすべてアメリカが負担すべきものです。日米地位協定二四条は、「合衆国軍隊を維持することに伴うすべての経費」は「合衆国が負担する」と明記しています。基地の施設整備費はもちろん、日本人従業員の人件費も光熱水料も米軍駐留を維持するための経費です。日本が負担すべき筋合いのものでないことは地位協定でも明確です。だからこそ、政府も思いやり予算を例外扱いにし、五年間という特別の時限立法にせざるをえなかったのです。

 地位協定を押し付けたアメリカが思いやり予算全廃に反対する資格などありません。アメリカいいなりに思いやり予算を存続する卑屈な態度を政府はあらためるべきです。

 政府は、米軍が「日本防衛」の任務にあたっているからということを思いやり予算を正当化する理由にしてきました。それももはや通用しません。在日米軍がイラク戦争やアフガニスタンなど海外の戦争を実施するのが最大の任務であることは明白です。日本の思いやり予算で浮いた米軍予算が無法な戦争にまわされています。世界平和のためにも思いやり予算は全廃させるべきです。

国民生活にまわせ

 政府は社会保障費や教育費など生活予算を削減するとともに、増税につぐ増税で国民に大きな痛みを押し付けています。米軍ばかりを思いやる政府に国民の怒りが噴出するのは当然です。財政難をいうなら、海外派兵のための経費ととともに思いやり予算を廃止し、米軍再編経費を中止すべきです。社会保障を支える財源を確保するためにも、五兆円にのぼる軍事費にメスを入れることがいよいよ重要です。



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