2007年11月29日(木)「しんぶん赤旗」
参院審議入りの新テロ法案
再派兵は和平に逆行
アフガンの現実を見よ
参院本会議で二十八日審議入りした、海上自衛隊をインド洋に再派兵するための新テロ特措法案。日本共産党は、衆院の論戦で、この法案が米国の報復戦争支援のためのものであり、テロ根絶に逆行するものであることを明らかにし、強く反対してきました。
「テロ根絶というのなら何よりも、アフガニスタンの現実がいま何を求めているのかから出発した冷静な議論が必要だ」
志位和夫委員長は、二十二日の福田康夫首相との党首会談でこう指摘し、軍事掃討作戦の中止とアフガンにおける和平を促進する外交努力を求めました。しかし福田首相は、「和平の交渉は時間がかかる」などとし、タリバン掃討作戦継続の必要性を強調しました。
焦点となっているアフガンの現実―。それは、日本共産党の主張こそ、テロ根絶に向けた真に道理ある方向であることを明瞭(めいりょう)に示しています。
軍事作戦が激化
アフガンでは現在、米軍などによる軍事掃討作戦が激化の一途をたどっています。現地からの報道によれば、二十五日にも東部で激しい空爆がおこなわれ、七十人から八十人のタリバンとされる武装勢力が死亡するなど、大規模攻撃が日常的に繰り返されています。軍事攻撃は必然的に一般市民の犠牲を拡大し、二十八日には、東部での空爆により、十四人の道路建設労働者が死亡しました。ロイター通信などによれば、今年だけで六百人が命を落としています。
掃討作戦の結果、逆に武装勢力の側の(自爆)攻撃は激化し、今月六日には北部での爆発で、多数の子どもを含め八十人近くが死亡しました。米軍への攻撃も激しさを増し、昨年八十七人だった米兵死者が、今年はすでに百人を超えています。
現地入りした国連人権高等弁務官事務所(UNHCHR)のルイーズ・アーバー高等弁務官は二十日、タリバンを批判する一方、外国軍の作戦による民間人犠牲者が「驚くべきレベル」に達しているとし、それは国際法に反するだけでなく、アフガン政府にたいする国民の支持を破壊するものであると警告しました。
一方、現地情勢で重要なのは、暴力の応酬の激化にもかかわらず、武装勢力とアフガン政府の双方から、話し合いによる和平を求める動きが活発になっていることです。
アフガンのカルザイ大統領は二十二日の記者会見で、「われわれにたいするタリバンからの接触が増加している」とのべ、それまでの一週間だけで五、六回以上の重要な接触があったことを明らかにしました。その上で、「われわれはアルカイダの一部でなく、テロリスト・ネットワークの一部でもないタリバンと交渉することを望んでいる」と、交渉による和平への意欲を示しました。
外交努力こそ
アフガンをめぐる一連の事態は、ただひたすら米国に追随して報復戦争支援をつづけることは、事態をいっそう悪化させるだけであり、和平にむけた外交努力こそが、現場の実態にも、アフガン国民の願いにも応えるものであることを浮き彫りにしています。
日本国際ボランティアセンターなど、アフガニスタンで活動する五つの日本の非政府組織(NGO)は二十八日、与野党各党に対し、「軍事支援でなく復興支援を中心にした平和的なアプローチを」と訴えました。
新テロ特措法案の参院審議では、アフガンの現実をふまえた「冷静な」議論こそ不可欠です。
(小泉大介)