2007年11月30日(金)「しんぶん赤旗」
主張
テロ新法参院審議
自衛隊の再派兵を許さない
インド洋での海上自衛隊による米艦船などへの給油活動を再開する新テロ特措法案の審議が参議院ではじまりました。
衆議院では自民、公明両党が採決を強行しました。日本の油がアフガニスタン国民の無差別殺りくやイラク戦争に使われた疑惑の解明さえ十分ではありません。参議院では、アメリカのアフガニスタン「報復戦争」支援の実態を究明し、憲法を生かした日本の役割と方策について審議をつくす必要があります。それは参議院選挙で与野党の議席数を逆転させた国民にたいする責務です。
アフガンで大事なこと
アフガニスタンではいま、テロ根絶を旗印にしたアメリカの「報復戦争」がゆきづまっています。テロの拡散を防げず、アフガニスタン国民の反発を強めているからです。
米軍が海からの空爆を含む激しい武力攻撃を再開して以来、アフガニスタン情勢はかつてなく悪化しています。米軍だけでなく、国連安保理決議で治安任務に限定されているはずのNATO(北大西洋条約機構)中心の国際治安支援部隊(ISAF)をもまきこんだアメリカの攻撃作戦は、民間人の犠牲を大きく増やしています。部族社会のアフガニスタンでは一人の殺傷も恨みが広がります。七年にわたる無差別殺りく攻撃が憎悪の輪を大きくしているのはあきらかです。
国際人道機関による人道支援や医療援助も、戦闘激化で困難になっています。日本政府は、就学児童が増えたなどといって戦争を正当化しますが、その成果が戦争によってだいなしにされているのです。「報復戦争」をやめてこそ、復興事業と人道支援を加速できるのは明白です。
アフガニスタン問題でいま大事なことは「報復戦争」の継続ではなく、日本共産党の志位和夫委員長が二十二日の党首会談でものべたように、「何よりもアフガニスタンの現実がいま何を求めているのかから出発した冷静な議論」です。これは、アフガニスタン政府や議会が和平努力にふみだしているだけに重要です。
カルザイ大統領は、テロと関係のないすべてのタリバンと交渉するという「平和と和解のプロセス」をすすめています。議会上院も、この和平プロセスの実施のために米軍などにタリバンなどへの軍事掃討作戦を中止するよう求めています。
日本政府がなすべきことは、このアフガニスタンの和平のとりくみを促進する外交努力であり、和平の障害となっている軍事作戦の中止をアメリカに求めることです。福田康夫首相は和平のプロセスを「重要だ」といいつつ、党首会談で志位委員長に和平と軍事作戦の「同時並行」を強調しました。こん棒で殴りつけながら話し合いをするなどできるはずがありません。政府は、戦争支援ではなく、アフガニスタンの現実をふまえた、政治的・外交的役割を積極的に果たすべきです。
廃案においこむたたかい
政府は、海自の給油活動が国際社会のためなどとごまかしています。しかし、今年八月までの米軍艦船への給油量が全体の約八割だったことが示すように、アメリカのためであるのは明白です。しかも、テロ新法はアフガニスタン空爆を行う米艦船への給油も認めています。政府見解でも憲法違反である「報復戦争」支援を許すわけにはいきません。
国会の会期を延長してまで強行成立をねらう政府・与党の策動を許さず、新テロ特措法案を廃案においこむ国民のとりくみが急務です。