2007年12月1日(土)「しんぶん赤旗」

株のもうけ 税金がフランスの35%って本当なの?


 〈問い〉 日本では、株でもうけをあげる富裕層に税金をすごく安くしていると聞きましたが本当ですか? 欧米と比べてどうですか?(埼玉・一読者)

 〈答え〉 株のもうけにかかる税金は、日本は欧米主要国に比べて大変安くなっています。株を中心に多額の金融資産を持つ富裕層は特別に優遇され、「富めるものがますます富む」しくみです。

 株への課税には、売買差額の利益にかかる株式譲渡益課税と、企業利益から株主に分配される配当にかかる配当課税があります。政府は「貯蓄から投資」を旗印に、上場株式等への譲渡益と配当にかかる税率20%(国と地方合計)を、半分の10%にする時限措置を2003年から続けています。

 大門実紀史参議院議員の求めで財務省が計算したところ、上場株式等の譲渡益・配当課税額は、日本はおおむね欧米主要国の2分の1から4分の1に軽減されていることが明らかになりました。

 例えば1億円の配当への課税額は、日本は1000万なのに対し、アメリカは2308万円、イギリス2278万円、ドイツ1859万円、フランス2799万円で、日本はフランスの35%です(比較の単純化のため収入をすべて配当所得とし、夫婦子ども2人世帯で計算)。

 なぜこれほど軽くなるのでしょうか。一つは、欧米主要国では株への課税は総合課税が中心なのに対し、日本は分離課税だからです。

 総合課税は、事業収入、給与など、さまざまな所得を合算し、高額所得者ほど高い税率を課します(累進課税)。例えばアメリカ、イギリスでは譲渡益も配当も総合課税で、イギリスでは最高税率が譲渡益では40%、配当では32・5%です。しかし、日本では株への課税は分離課税といって、他の所得とは別に一律の低い税率10%を課しているのです。

 もう一つは、分離課税の国と比較しても税率が低いことです。フランスの譲渡益への課税は分離課税ですが税率は27%です。

 当初5年間の時限措置で07年(配当は08年3月)に終わるはずだった優遇措置は、今年度(07年度)税制改正で1年延長されました。政府税調は11月20日の答申で、来年度税制改正で優遇措置の廃止を提言しました。しかし、証券業界、経団連を先頭に、さらなる延長を求める政官財の動きが強まっています。格差拡大をすすめる証券優遇税制の廃止と、高額所得者、大資産家への応能負担原則に基づく適正な課税を求める世論と運動が求められています。

 (注)ドイツでは再来年1月より金融所得(譲渡益も配当も)への分離課税が導入されます(税率25%)。(丸)

 〔2007・12・1(土)〕


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp