2007年12月3日(月)「しんぶん赤旗」

主張

日本の核決議

全面廃絶の実効性が伴わない


 日本が中心になって国連に提出した「核兵器の全面的廃絶に向けた新たな決意」決議が、十月末の国連総会第一委員会で賛成百六十五、反対三(米国、インド、北朝鮮)、棄権十(中国、フランスなど)で採択されました。今月初旬予定の本会議で表決に付されます。

 決議は昨年とほぼ同じで、「全面的廃絶」をうたってはいるものの、全面禁止条約も条約作成のための交渉など実効的措置がないことにかわりありません。これで核兵器廃絶のための実効性があるのかと疑問の声がでているのは当たり前です。唯一の被爆国である日本政府の基本姿勢が問われています。

米核態勢の後押し

 政府が四十八カ国と共同で提出した今回の決議は、核兵器保有国に核兵器廃絶を要求していません。核兵器保有国に「核兵器廃絶の明確な約束」を義務付けた二〇〇〇年の核兵器不拡散条約(NPT)再検討会議の最終文書を「想起する」としながら、核兵器保有国に約束を履行し、核兵器廃絶にふみだせといわないのは重大な後退です。

 日本の決議が全面廃絶のための実効的措置を求めず、廃絶一般ですますのは、強まっている全面禁止条約作成交渉を求める流れを押しとどめる狙いがあることは否定できません。それは、マレーシアなど二十八カ国が提出した全面禁止条約の早期締約に向けた交渉の開始を求める「国際司法裁判所の勧告的意見の後追い」決議や非同盟諸国が提出した核兵器の開発、製造、貯蔵の即時停止を求める「核軍縮」決議に、日本が棄権したことでもあきらかです。

 しかも政府は、マレーシア案にたいする投票理由のなかで、全面的禁止条約の早期締結につながる多国間交渉の開始を「求める」のは「時期尚早」とのべ、交渉開始それ自体に反対しました。これでは廃絶への道筋がみえません。「全面的廃絶」を口にしながら、実際には、全面禁止条約の作成を押しとどめる役割を果たしているとしかいいようがありません。一日も早く核兵器をなくしたいという国民の願いを裏切るようなことを政府はすべきではありません。

 政府が廃絶の実効性がない決議をだすのは、アメリカの核兵器政策に従属しているからといわれても仕方がありません。

 ことし七月、アメリカのエネルギー長官、国防長官、国務長官が連名で米議会に提出した文書は、「核兵器は予見できる将来にわたって必要であり続ける」と明記しています。日本国民をはじめ世界の「核兵器をなくせ」の願いに背を向けた核態勢の恒久化の表明にほかなりません。

 アメリカの核態勢強化路線の恐ろしさは、米科学者連盟が最近公表した米政府の核戦略資料が、イラク、イラン、北朝鮮、シリア、リビアなど比較的小さな国にまで攻撃対象を広げていることでもあきらかです。

 アメリカの核態勢に反対することが緊急の課題です。政府はあいまいな決議に固執せず、アメリカに核兵器廃絶を要求し、核兵器全面禁止条約の作成とそのための交渉を開始する方針に大きく転換すべきです。

核兵器廃絶でこそ

 日本は唯一の被爆国であり、政府が世界の核兵器廃絶運動の先頭にたつのは当然です。形だけにせず、実質が問われています。

 核兵器廃絶を中心にすえた外交を進めてこそ日本への国際的信頼を広げ、新たな核兵器保有国づくりの動きを阻止するための日本の主導権にもつながります。



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