2007年12月5日(水)「しんぶん赤旗」

ロボットの無人工場で、搾取はなくなるか?


 〈問い〉 ロボットの無人工場を見学しましたが、労働者の姿はなく生産が行われていました。無人工場では『資本論』のいう搾取はないのでは?(東京・一読者)

 〈答え〉 資本主義のもとでは、いわゆる「無人工場」でも搾取はあります。

 まず、「無人工場」といえども、完全に無人な工場にはなりません。夜間や休日でも機械だけが動く「無人工場」は、「トラブルもロボットが監視し、ロボット自らが修理する」と言われます。確かに、想定内のトラブルであれば、プログラムに沿ってメンテナンスは可能でしょう。しかし、予想外のトラブルが発生すれば、人間の労働が必要になります。普段でも、設計やコンピューターで生産工程を管理したり、機械やロボットを監視し、保守点検したりする労働は必要です。

 つまり、ME(マイクロエレクトロニクス)とかFA(ファクトリーオートメーション)がいかに進んでも、労働が不要になり、すべてが情報処理の労働だけになるようなことには、実際ならないのです。

 つぎに、搾取(剰余価値の生産)は、個別の工場ごとに計られるのではなく、「社会的な必要労働」をもとに計られますが、その商品が全社会的に無人化された状態で生産されているかというと、そうなってはいません。実際には、ロボット導入など技術革新を進めた企業ほど、省力化と「合理化」を進め、賃金切り下げなど経費の節減によって、個別的な価値を切り下げることで、他の企業よりも多くのもうけを手に入れます。つまり、他の「有人工場」でつくり出された特別剰余価値を得ているのです。

 なぜ、「無人工場」のロボットが価値をつくり出すかのように見えるのでしょうか。人間は物をつくるとき、効率よく生産するために必ず機械や道具といった労働手段を使います。そこには、過去における労働者の労働力が投入されていて、価値が形成されています。それらは、労働が加わることで、価値を新たな生産物に移転し、さもロボットが新しい価値をつくり出すかのように見えるのです。

 そもそも資本家は、もうけるために工場をつくります。どんなに技術革新を進めた「無人工場」でも、『資本論』でマルクスが解明した価値と搾取の理論は貫徹しているのです。

 なお、技術が発展して「無人工場」化が進むことは、確かに剰余価値生産の基盤を狭めてゆきます。マルクスは『経済学批判要綱』のなかで、「労働が富の偉大な源泉であることをやめてしまえば…交換価値を土台とする生産は崩壊」すると、資本主義の崩壊を述べ、「社会の必要労働の最小限への縮減」と、「諸個人の自由な発展」を書いています。(柳)

 〔2007・11・5(水)〕


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