2007年12月11日(火)「しんぶん赤旗」
悲痛な叫びぶつけた
参院決算委員会 仁比議員質問
「3千円で1週間」のシングルマザー
食パンとマヨネーズだけ 入院した青年…
「総理は自助というが、本当にぎりぎりの生活をしている皆さんから、さらに給付を奪い、負担軽減策を奪うものだ」。十日の参院決算委員会で、日本共産党の仁比聡平議員がおこなった渾身(こんしん)の追及。生活保護基準の引き下げ、異常に高い国民健康保険料、さらには全国注視の薬害肝炎の問題で、国民生活の実態と悲痛な叫びを正面からぶつけ、政府の姿勢をただしました。
生活保護引き下げ
膨大な世帯に影響
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「生活保護基準以下での暮らしを余儀なくされながら、生活保護を受けていない、受けられない世帯がどれくらいあるか、国は調査したのか」。仁比氏は、こう述べ、低所得者に最低限度の生活を保障する政府の責任を具体的にただしました。しかし舛添要一厚労相は、「生活保護は申請主義なので、どの方が生活保護の必要を感じているかは分からない。数はつかめない」と述べるだけ。
仁比氏は、「調査すらしていない」と、政府の無策を厳しく批判し、同志社大学の橘木俊詔教授らの調査結果を紹介しました。
橘木教授らは、生活保護基準以下の生活者のうち、実際に保護を受給している人の割合(捕そく率)は16・3%ないし19・7%にすぎないと推計。「一般世帯に対する安全網として生活保護がほとんど機能していない」と指摘しています。一方、外国では英国が八割、米国が六割ほどの捕そく率です。仁比氏は、「安全網というのなら、これ(英国、米国)くらいの水準は当然だ。政府が調査しようと思えばできる。実態を直視すべきだ」と強調しました。
さらに仁比氏は、「生活保護水準の引き下げは生活保護を受けている世帯だけの問題ではない。膨大な世帯に、重大な影響を及ぼすことになる」と、パネルを掲げて追及しました。
生活保護基準は、収入が少ない世帯の負担軽減のさまざまな支援策と連動しています(表)。たとえば、基準が引き下げられれば生活保護法による最低生活費を下回っている場合と規定されている地方税の減免は受けられなくなる危険があります。今国会で成立した最低賃金法の「改正」にも生活保護基準を下回らないことが盛り込まれました。
「生活保護基準を引き下げれば、所得減と負担増で苦しむ一般世帯の家計を直撃する。その認識はあるか」と仁比氏。ところが、福田康夫首相は「これから激変緩和を考えていかなければならない」などと述べ、生活保護基準の引き下げを前提とした姿勢を示しました。
仁比氏は、「生活保護水準で暮らしている人々の生活実態をまったくみていない答弁だ」と厳しく批判。とことんまで切り詰めた生活に、「三千円あったら一週間はもつ」と語る三人の子をもつシングルマザー、食パンとマヨネーズで何カ月も過ごし病院に運ばれた心臓病を抱えた青年、「眠ったまま死にたい」と望む高齢者の声を紹介し、「その低所得層にあわせて、生活保護基準を引き下げようというのか」と政府の認識を重ねて追及しました。
舛添厚労相は「みんな一生懸命働いている。その一番下の人の水準に比べて、生保の水準が高いからどうするか、という議論なんです」などと言い放ち、より貧しい水準にあわせるのが当然だとする姿勢を示しました。
国保の実態
仁比氏は「国民の現実をまったく分かっていない」とし、低所得者の生活を極限に追い込む国民健康保険の実態を具体的にただしました。
仁比氏が示したのは、年所得二百万円以下の低所得世帯を襲う、高すぎる国保料徴収の実例です。
世帯主六十四歳、配偶者五十五歳、四十歳未満の扶養者一人の三世帯をモデルに試算すると、福岡市の国保料(介護分含む)は年所得の四分の一にあたる四十七万円。同市医師会によれば、このほか、国民年金の掛け金が約三十四万円、住民税が約十一万円、所得税が約四万円、あわせて年額約九十六万円が引かれ、手元に残るのは年所得の半分、わずか百四万円という計算です。(パネル)
仁比氏は「耐えがたい負担増を押しつけ、生活保護基準まで引き下げる。こんな生存権保障の施策の後退は許されない」と政府の姿勢を厳しく批判しました。
生活保護基準と連動する施策
介護保険の保険料・利用料
世帯の年間収入が生活保護基準額の1.2倍以下。保険料の減免に該当した場合の利用料の軽減
障害者自立支援法の利用料
定率負担で生活保護の適用対象になる場合、月額負担上限額の区分を下げる
地方税の非課税基準
生活保護基準額を勘案して、限度額を定める
地方税の減免
生活困窮のため、その収入額が生活保護法による最低生活費を下回っている場合
公立高校の授業料減免
収入が生活保護世帯と同程度と判断された場合(全額)、準ずる場合は半額
国民健康保険料の減免
収入等が生活保護基準の1.15倍を上回らない程度
公営住宅の家賃減免
生活保護法第8条に基づき算定した最低生活費認定額に1.4倍以下の所得金額
生活福祉資金貸付金
所得が生活保護基準の1.7倍以下の場合
就学援助
収入が生活保護受給者に準じる額以下であるとき
*法令及び市町村の実施施策から作成
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薬害肝炎
被害の実相をみよ
「つらい体をおして、あなたに会う、その思いで集まっている。総理は直接面会し、被害者全員の平等の救済を決断すべきだ」
薬害肝炎集団訴訟で大阪高裁から和解案が提示される十三日が迫るなか、仁比議員は、福田康夫首相への面会を求めて全国から被害者が官邸前に集まっていることを示し、首相に正面からただしました。
十三日に提示される予定の和解案をめぐり、原告の願いに反して、被害者の救済対象を限定する動きが報じられています。
仁比氏は、三十年前の薬害スモンでの福岡地裁の判決を紹介。同判決は、被害者が早期完全救済とともに「薬害根絶」を訴えていたことの「道義性の高さ」を指摘し、“国と製薬企業は、その叫びに応えるべきだ”と断じています。
仁比氏は「いまの薬害肝炎の被害者のみなさんの姿そのものだ」と力説。その後の三十年間、薬害があとを絶たないのは、「国が、いくたびも断罪されながら、被害から目を背け、国と加害企業による早期全面救済、被害根絶という当然の立場に立とうとしないからだ」と糾弾しました。
そのうえで、薬害肝炎の原告団が「薬害根絶の最後の裁判」と位置付けたたかってきたこと、原告団がすべての被害者の平等救済を求めていることを示し、首相が被害者たちと面会するよう繰り返し迫りました。
しかし、福田首相は「和解の判断をみて、適切な対応をしたい」と述べるばかりでした。
仁比氏は、被害者たちが、予想される和解勧告に納得がいかない思いで集まっていると述べ、「被害の実相に目を向けてこそ、初めて政治決断はありうる」と力を込め、重ねて面会を求めました。
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