2007年12月13日(木)「しんぶん赤旗」
許すな生活保護切り下げ
貧困の広がり示す「報告書」
厚労省 解決する姿勢見せず
「憲法で国民には、勤労の義務ということが書いてある」。十日、開かれた参院決算委員会の席上、日本共産党の仁比聡平参院議員の追及にたいする舛添要一厚生労働相の答弁です。生活保護世帯は仕事もせずにいる怠け者だといわんばかりの発言に、「人間らしく働き生きる権利を保障する義務を負う厚労相のいうべきことか」と批判の声があがっています。
舛添氏の発言は歴代政府の体質といえます。柳沢前厚労相は六月の衆院厚労委員会で、生活保護世帯にたいし「遊んでいた方が高い手当が手に入る」と非難したことからも明らかです。
病人の申請拒否
厚労省の出した「生活保護行政を適正に運営するための手引き」(二〇〇六年)は生活保護法(二七条)をゆがめ、生活保護利用者の意を解さぬ就労指導を異様に強調しています。この結果、福祉の現場では病気で働けない状態にあるのに、「働け」といって生活保護の申請が拒否され、または廃止され、死にいたる悲惨な事件が頻発しています。
生活保護問題対策全国会議が開いた集会(七日)で、全盲で手、足に障害を持つ男性が、生活保護の申請をしたさい「『働けないのですか』といわれたことに衝撃をうけた」として、こうのべました。「働くことができず生活保護で暮らしている私は、社会のゴミではないかと思うときもありました。学校で講演する機会があり、子どもたちから寄せられた感想文を見て、微力であるが、社会に参加し、多少なりとも生きていてもいい人間じゃないかと思えるようになりました。それは間違いなんですか」
舛添氏の発言は「勤労の義務」をふりかざし、懸命に生きている人々の人権を奪うものです。
利用をしやすく
厚労省社会・援護局長の私的研究会である「生活扶助基準に関する検討会」の報告は、低所得層の消費水準の一部(生活扶助にあたる部分)が生活保護より低いとしました。この報告に舛添氏は「一生懸命働いて税金を払っている。そういう勤労世帯の一番下の十分の一の人たちの水準に比べ生活保護の水準が高い数字が出ている。さあどうするかだ」と答弁しました。
しかし、この報告書は、舛添厚労相がいう「勤労の義務」をはたし、まじめに働きながらも生活保護水準以下の暮らししかできないワーキングプアの広がりを明らかにしたものです。先の集会で布川日佐史静岡大学教授は、「検討会」の報告書について、「生活保護よりも貧困の世帯が5―7%あることを認めたものだ。その世帯が生活保護を利用しやすくすることが求められる」と強調しました。
「さあ、どうするかだ」の答えは、ワーキングプアにある人々の生活水準を引き上げることであり、生活保護基準を引き下げることではないのです。
本末転倒の手法
ワーキングプアの広がりは、政府が財界の要求をいれ、労働法制を次つぎと改悪、緩和してきたことによるものです。非正規雇用は労働者の三割に達し、年収二百万円以下の労働者は一千万人を超えました。
この打開のために最低賃金の引き上げが世論となり、今国会で不十分ながら改定最低賃金法が成立しました。同法は労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営めるよう「生活保護との整合性を考慮する」ことを盛り込んでいます。
最賃法改定をすすめた同省が、調整をはかるとした生活保護基準を引き下げれば、最賃引き上げの形がい化を招きかねません。
全労連の佐藤幸樹・社会保障闘争本部事務局長はいいます。「多くの労働者が働く場もなく、働いても生活保護基準にも達しない低賃金にさらされているのが現実です。それを改善すべき担当官庁の大臣が、この貧困状態を放置し、生活保護(扶助)基準を引き下げるのは本末転倒です。保護基準の引き下げは、国民、労働者の生活を底抜けにする。絶対にすべきではありません」
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