2007年12月17日(月)「しんぶん赤旗」

NHK「日曜討論」

市田書記局長の発言(大要)


 日本共産党の市田忠義書記局長は十六日、NHK「日曜討論」に出席し、与野党幹事長と年金記録問題や再延長された臨時国会での新テロ特措法案への対応について討論しました。出席者はほかに、自民党・伊吹文明、民主党・鳩山由紀夫、公明党・北側一雄、社民党・又市征治、国民新党・亀井久興の各幹事長。司会は影山日出夫解説委員でした。


年金記録問題

政府の公約違反否定発言――責任感のなさの表れ

 はじめに、持ち主不明の約五千万件の年金記録のうち約18%に当たる九百四十五万件が、最後まで誰の記録か照合できない可能性が明らかになったことについて議論になりました。「公約違反というほど大げさなものか」(福田康夫首相)、「すべての問題を片付けると言った覚えはない」(舛添要一厚労相)などの発言に批判が集中しました。

 与党側は「誤解を与える言葉や開き直りととられたことがあれば、おわびしなければならない」(伊吹氏)、「明日から『ねんきん特別便』を発送し、国民に記録を確認していただく」(北側氏)と述べました。

 市田氏は次のように発言しました。

 市田 (与党側の説明は)納得できないですね。年金問題というのは、自分の払った保険料がきちんと記録されているのだろうか、きちんともらえるのだろうかと、多くの人が心配を持っていたと思うんです。そのとき、選挙のさなかに「最後の一人、一円まで責任を持って全部お支払いします」と言われた。(それなのに)それができないことが分かった段階でも「そんな公約したかな」「国民に誤解を与えたかもしれない」(と言う)。

 私は国民は“誤解”していないと思うんです。言葉通り受け取って、期待していたと思うんですね。それができないことが分かったら、きちんとおわびして、どう解決するかを言うべきなのに、「選挙だから縮めて言った」などという言い方をするのは、国民の権利を守る責任のある政府の人が、何の責任も感じていないことの表れだと思うんです。

 同時に、ただ「公約違反だ」と言うだけでは、それだけで終わってしまう。一人の被害者も出さないためにどうするか。参院選のさなかにも私どもは「これは党利党略でやるべきではなく、いま政府が把握している一億人の加入者・受給者の記録を『一億人レター作戦』として送ることを先行させれば、五千万件の記録の持ち主を発見する上でも役立つではないか」と(主張しました)。先ほど北側さんが(「特別便」について)おっしゃったけど、(発送は)三段階に分けている。(来年十月までかけて段階的に送るのでなく)前倒しして早くやるべきだし、死亡した人には遺族に送ることもやるべきです。

 また、「特別便」は「記録が漏れている可能性があります」という通知だけなんですね。標準報酬月額や加入期間、事業所の所在なども含めて通知してこそ、未統合の問題の発見にもつながる。そういう解決策も含めて国会で大いに議論していくべきだと思います。

 鳩山氏は、八億件以上にのぼる紙台帳のデータとコンピューター内のデータとの照合について「税金や国民の掛け金を注ぎ込まなければならなくなる」などとした舛添厚労相の発言を批判しました。

1人の被害者も出さないため全党の知恵あわせるべきだ

 影山氏から現内閣の責任について問われ、市田氏は次のように答えました。

 市田 前の内閣の責任であると同時に、十一月の参院厚生労働委員会での、十月末に出た「四割は誰のものか分からない可能性がある」という総務省のサンプル調査報告に基づく審議のときに、「大丈夫か」とうちの議員が追及したら(舛添氏は)「徹底してやるから一割くらいは残るかもしれない。いや、5%、3%かな」と。97%までは大丈夫だとおっしゃっていたんです。それが、この間(十一日に)改めて追及したら「あれは勘で言った」と。「それはないよ」と国民は思うと思います。

 自民党の(参院選)法定ビラには「最後のお一人にいたるまで責任を持って年金をお支払いします」とある。これを読めば、五千万件の最後の一人まで払うと読むのが当たり前だと思います。政府広報でも似たような言葉が出ています。(今になって)「あれは選挙のときの勢いで」とごまかすことはだめだ。きちんと支払いをして、二度とこういうことが起こらないようにして、一人の被害者も出さないための解決策のために全党の知恵を合わせるべきだと思います。

新テロ特措法案

アフガンの現実から出発し民生支援への切り換えを

 続いて、海上自衛隊によるインド洋上での給油活動を再開させるため、与党が成立を狙う新テロ特措法案が議論になりました。鳩山氏が「油を出すより(防衛省の)うみを出せ」「ガソリン、灯油を安くしろ」と主張すると、伊吹氏は「油を出すために(定例日以外にも審議するなど)汗を出せ」「(民主党は対案を出すなど)知恵を出せ」などと応じました。また、北側氏は「海上輸送の安全確保は国益、日本経済にとっても大事だ」と述べました。

 市田氏は次のように発言しました。

 市田 今度の一月十五日までの会期再延長は、何が何でも新テロ特措法案を通すためだと思います。

 「テロとのたたかい」「国益、輸送路の確保」などと言われたが、本当にテロを撲滅するには、アフガニスタンの現状、現実から出発するべきだと思うんですね。カルザイ政権自身が、アルカイダとは関係のないタリバンや反政府勢力とも和平の話し合いをやるべきだと言っているし、国連の事務総長もそう言っている。アフガンの上院自身も、軍事掃討作戦をやっている軍隊は撤退してもらわないと、和平の方向に進まない、と決議しています。イギリスのブラウン政権もそういうことを言い出した。

 党首会談で、伊吹さんも同席されていましたが、福田総理にそういう話をしましたら、「タリバン掃討も民生支援も両方やる」とおっしゃった。でも、右手で人を殺しながら左手で握手というのは成り立たない話です。和平の方向に切り換えて民生支援をやるというのが一番の解決の道です。

 もう一つ、(この法案を)推進する勢力が軍事利権にまみれているわけでしょう。そういう人々に国際貢献を語る資格はないと思います。

再可決問題

悪法ゴリ押し許さぬ世論、国会論戦を

 最後に、新テロ特措法案が参院で否決され、与党が衆院で三分の二以上で再可決した場合、野党は首相の問責決議案を出すのか、それを受けて首相は解散・総選挙に踏み切るか、が議論されました。鳩山氏は「選挙をしたいか、したくないかで問責決議案を出すかどうかは考えない。あくまで問責に合理性があるかどうかだ」、伊吹氏は「三分の二条項は憲法に書かれている。その後の展開は世論次第だ」と述べました。

 市田氏は日本共産党の立場を次のように表明しました。

 市田 新テロ特措法は国論が二分しており、賛否相半ばです。「臨時国会で通す必要はない」という声がおよそ50%です。私たちの立場から言えば、テロ根絶に逆行する。インド洋での海上阻止活動だけではなくて、イラクやアフガンへの空爆のための給油も別に違法ではないんだと(政府・与党は)おっしゃっている。そういう悪法をごり押しするために、何が何でも三分の二条項を使うということは許されない。それを使えないように世論を高めていくし、国会論戦もやる。

 それでもごり押しした場合、国民の世論動向もよく踏まえながら、問責をするかどうかはよく考えたい。


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