2007年12月17日(月)「しんぶん赤旗」
南京事件70年 国際シンポ
東アジア和解へ
歴史対話が力
「南京事件70周年 国際シンポジウム―過去と向き合い東アジアの和解と平和を」の二日目が十六日、東京都千代田区の明治大学で開かれ、約三百五十人が参加しました。二日間で、のべ七百人が参加。国境を超えた「東アジアの真実・和解委員会」の立ち上げを提案した宣言(別項)が満場の拍手で採択されました。
「ヨーロッパでは戦争責任をどう議論しているか」をテーマに三人が発言。東京大学特任准教授の川喜田敦子さんは、二〇〇六年にドイツとフランスの間で共通の歴史教科書ができたことを紹介しました。「歴史について対話する経験がヨーロッパでなかったならば、共通の教科書が作られることはなかっただろう」「歴史の対話を重ねることで政治をも変える力に変わっていくことを信じる」とのべました。
フランス・プロバンス大学教授のジャン・ルイ・マルゴランさんは、市民による文化的交流をへて、戦争認識の話へと移行していったヨーロッパの過程に触れ、「遅々とした動きであったが、下から上がってくる動きこそ大事だ」と参加者を励ましました。
総括討論で、同シンポジウム共同代表で都留文科大学教授の笠原十九司さんは「私たち民間人が歴史をつくっている。東アジアの平和を築くため奮闘しよう」と語りました。
今年三月から欧米とアジア八カ国で開催してきたシンポジウムを振り返り、発言した実行委員長で弁護士の尾山宏さんは「同じ過ちを二度と繰り返すまいと南京事件の記憶を人類の記憶にとどめる営みが世界で起きている」とのべました。
また、「国境を超えた市民の連携と対話、学者による研究を基礎にして初めて国家間の和解が進められる」と指摘。「和解の実現を達成できるのは市民運動である」と強調し、運動のさらなる前進を呼びかけました。
宣言の要旨
南京事件70周年国際シンポジウムで十六日に採択された宣言の要旨は次の通りです。
私たちは、東アジアの人々が共同してこの事件の実相と責任を明らかにし、和解への道を模索することが喫緊の課題であると考え、各国政府と市民・学者代表を含めた地域機構として「東アジアの真実・和解委員会」を立ち上げることを提案する。
また日本政府に対して、以下の3点を実行するよう要望する。
1 南京事件を含む戦争犠牲者に対し、閣議決定および国会決議を行って公式に謝罪し、これに反するいかなる言動に対しても毅然(きぜん)とした態度で反駁(はんばく)し、被害者の尊厳を守ること
2 謝罪が真摯(しんし)なものであることを表すため、戦争被害者に個人補償を行うこと
3 アジア・太平洋戦争の真実を国民とりわけ次の世代の子どもたちに誠実に伝えること
日本政府が戦争被害者に人間としての尊厳を確保するための営みを行うことは、日本とアジア諸国との間で真の意味での和解を成立させ相互信頼を確保することにつながり、そのことが21世紀の東アジアと世界の平和構築に大きく貢献するものと確信する。
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