2007年12月21日(金)「しんぶん赤旗」

主張

薬害肝炎訴訟

政府は患者の見殺し続けるな


 薬害C型肝炎訴訟の和解協議で舛添要一厚労相は二十日、患者を救済する期間を限定した大阪高裁の和解案をもとにした「修正」案を提示、あくまで被害者の「全員一律救済」を求める原告患者や弁護団らの願いをはねつけました。

 「差別することなく救ってほしいという当たり前の願いが、なぜ通じないのか」―原告らが政府側の姿勢に憤慨し、和解協議の打ち切りを表明したのは当然です。「全員一律救済」の当たり前の願いが実現するよう、政府が態度を変えることが求められます。

薬害を生んだ責任を放棄

 薬害C型肝炎は、肝炎ウイルスが混入した「フィブリノゲン」など血液製剤によって起きた医原性の感染症です。患者に何の責任もなく、責任はすべて血液製剤を製造した製薬企業と、製造・販売を認めた政府にあります。

 被告の政府と製薬会社は、「フィブリノゲン」など血液製剤による感染の危険性を早くから知っていました。いまだ製剤の有効性の科学的な立証もされていません。国・厚労省と企業は薬害を引き起こした加害責任を認め、肝炎訴訟の原告らの「全員一律救済を」の願いを、いまこそ決断して実行すべきです。

 患者の多くは原因も分からぬまま長期にわたって肝炎に苦しめられ、放置すれば肝硬変や肝がんによって、生命さえ脅かされることになります。厚生労働省は血液製剤を投与され、肝炎が発症する危険がある患者の名簿を持っていながら、その公開さえ怠ってきました。その責任は重大というしかありません。

 東京、大阪など全国五つの地方裁判所で国と企業を相手取って起こされた薬害肝炎訴訟は、仙台を除いてすべて国と企業の責任を認めています。高裁段階で初めて和解案を提示した大阪高裁は、血液製剤を投与された時期で救済される患者を限定しましたが、和解案提示に当たっての意見では「紛争の全面解決のためには」「全員、一律、一括」が望ましいと述べていました。患者らが、政府の決断を求めたのは当然です。

 にもかかわらず舛添厚労相は、「高裁の案と矛盾する内容での和解はできない」と述べるだけで、「全員救済」の願いを切り捨てたのです。記者会見で舛添氏が口にした「おわび」の言葉が、白々しく響くだけです。

 政府の「修正」案は、被害者の救済範囲を限定する一方、その範囲から外れる患者には「訴訟活動支援」などの名目で一定の「和解金」を支払うなどとしました。いわば「手切れ金」を多少増やして幕切れを図ろうとする狡猾(こうかつ)な態度です。

 いくら和解金を積み増ししても、汚染された血液製剤を投与された時期や、提訴の有無によって薬害被害者の救済範囲を「線引き」するのでは、命の重みに差別を持ち込むことに変わりはありません。人間としての尊厳を踏みにじる、絶対に許されない態度です。

被害者の一律救済こそ

 政府の修正案を拒否した原告らの「苦しんできた五年間を笑って思い出せる日が来ると信じて、言葉を投げてきた。しかし届かなかった」「期待を持ってしまった自分がばかだった」との言葉が胸に迫ります。

 政府の対応には、薬害をおこしたことへの自覚も反省もまったく感じられません。

 C型肝炎訴訟の原告や弁護団などが一貫して求めているように、国・厚労省は直ちに患者の一律救済と薬害の根絶に踏み出すべきです。



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