2007年12月21日(金)「しんぶん赤旗」
薬害肝炎
当たり前の願い 国は応えよ
解説
薬害肝炎訴訟全国原告団代表の山口美智子さんは、「和解という最後の山に登る途中で、握っていた手を解き放された」と、谷底に突き落とすような政府の対応を批判しました。
「全面解決を図る」「年内に決着させる」と国会答弁や原告との面談などで表明してきた舛添要一厚労相。一日一秒でも早い解決を願う被害者の切なる願いをもてあそぶ二枚舌の言動にはとりわけ原告団の失望と怒りが集中しました。
国は大阪高裁の和解骨子案の枠に固執しました。国と製薬企業の責任範囲を一九八五年八月から八八年六月までと最も狭く限定した東京地裁判決を基準としたのが骨子案でした。
原告はこの和解骨子案を「命の線引きだ」と拒否し、「命の重さは平等」とあくまで被害者全員の一律救済を求めてきました。そのために、文字通り命を削りながら体力の限界ぎりぎりまで「政治決断」を福田首相に迫ってきました。
大阪高裁は、骨子案のほかに「所見・説明書」で「全体的解決のためには原告らの全員一律、一括の和解金の要求案は望ましいのではないか」とのべています。こうした考え方が貫かれれば解決の道筋はつけられます。
原告は、国が承認し、製薬企業が製造・販売した危険な血液製剤によって被害を受けました。原告にはなんの落ち度もありません。
原告が求める一律救済は、国と企業が薬害肝炎の責任を認めて謝罪し、すべての被害者を汚染血液製剤の投与の時期、種類にかかわらず救済することです。当たり前のこの原告の願いにこたえることが、スモン、薬害エイズ、そして薬害肝炎と今なお続く薬害を根絶する一歩となります。(菅野尚夫)
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