2007年12月24日(月)「しんぶん赤旗」
アフガン問題
派兵国も“対話重視”
軍事中心は限界
新テロ法案
政府・与党が再延長した今国会での成立を狙う新テロ特措法案。アフガニスタン問題で国際社会はいま、軍事中心から対話による政治的解決へと戦略を切り替えつつあります。この世界の流れに逆行し、あくまで再派兵に固執する政府・与党の異常な姿が、この間の参院審議のなかで浮き彫りになっています。
アフガンのカルザイ政権は、タリバンを含む武装勢力との交渉による和平を追求する「平和と和解のプロセス」を進めています。
国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長も「国内の和解のための包括的な政治的対話の推進にいっそうの努力をおこなうべきだ」と発言し、支持する考えを示しています。(九月)
最近では、アフガン派兵国からも、軍事中心ではなく、対話による政治解決の重要性を指摘する声が次々とあがっています。
■英・豪の転換
日本共産党の井上哲士議員が、参院外交防衛委員会(二十日)で指摘したのは、英国と豪州の例でした。
英国のブラウン首相は十二日の下院演説で、「すべての勢力を民主的憲法の下に和解させるアフガン政府の努力を支持する」と表明。この方針については「力でねじ伏せる手法には限界」「軍事中心の手法から、和解を促進させる戦略に重心を移していく考え」(「朝日」十三日付夕刊)とも報じられています。
豪州のフィッツギボン国防相も、十五、十六日の北大西洋条約機構(NATO)国防相会議で、アフガンでの軍事作戦について「大幅な方向転換をしない限り、敗北するおそれがある」とし、アフガン国民の「心をつかむ」努力が必要との考えを示しました。
井上氏の指摘に高村正彦外相は、海上自衛隊の再派兵という軍事対応は具体的に語れても、対話を通じた政治解決になると「カルザイ政権が何をやってほしいかをよく聞きながら、お手伝いする」と、主体性のない答弁をしました。
■解決の障害は
カルザイ政権や派兵国が、こうした戦略的転換に足を踏み出そうとしているのは、派兵国の一つであるカナダのハーパー首相が「アフガンは非常に困難な状況にある」というように、軍事中心の手法が限界に直面しているからです。
日本共産党の山下芳生議員は参院外交防衛委(十一日)で、ロンドンに本部をおく外交政策のシンクタンク・SENLIS評議会の報告書(十一月)を示しました。
同報告書は「いまや問題は、タリバンが首都カブールに現れるかどうかではなく、それがいつ、どのような形で起きるかだ」と指摘。アフガン民衆がタリバンに加わっていく理由に「戦闘の拡大と地方への爆撃によって引き起こされた、きわめて多数にのぼる民間人の殺傷」を挙げています。
民間人を殺りくする掃討作戦が、政治解決の障害になっていることの明確な指摘です。
高村外相も「今おっしゃったような面があるだろうと私も思う」と認めざるをえませんでした。
日本政府はかつて、民間人に犠牲をもたらすことを理由に、他国の軍事作戦を批判したことがないわけではありません。
たとえば昨年七月にイスラエルが、拉致された同国兵士の解放を理由に、レバノン国際空港を空爆した際、日本政府はイスラエルに対し「軍事行動は、問題の解決に資さない」とし、「強く自制を求める」との談話を発表したことがあります。
井上氏は、この事例を挙げ、米軍のアフガン空爆も、同様に中止するよう米政府に求めるべきだと迫りました。(二十日)
しかし高村外相は「われわれが口を出すことではない」などと答弁。相手が米国になると、追従してしまう日本政府の姿勢があらわになりました。(田中一郎)