2007年12月24日(月)「しんぶん赤旗」
ゆうPress
若者に仕事を
氷河期の就職→会社倒産→少ない求人→違法面接…
派遣哀史を訴えた
愛知の若者たち
「事前面接は派遣先の品定め。“人買い”と同じで違法です。きっちり取り締まってほしい」。東京・霞が関の厚生労働省で先月、名古屋市の五十鈴幸江さん(32)=仮名=が派遣労働の深刻な実態を訴えました。民青同盟愛知県委員会が街頭などで集めた若者アンケートにもとづく要請行動の一環です。(菅野尚夫)
厚労省で「取り締まりを」
「働いても働いても手取り月11万円。やせ細っていく」―。厚労省1階の「共用会議室」で若者の怒りの声が響きます。
民青同盟の串田真吾県委員長が舛添要一厚労相への要請書を手渡し、仲間の窮状を告発しました。「1日休めば1カ月分の時給が8割になる」「残業してもただ働きさせられた」「派遣なので首切られたらネットカフェ難民(ホームレス)になってしまう」。若者アンケートに寄せられた声は切実です。
セクハラ質問
五十鈴さんもみずからの体験を切々と訴えました。愛知労働局に申し入れたものの、らちがあかず上京したものです。
「20代後半から30代の私たち世代は“派遣社員哀史”ですよ」という五十鈴さん。芸術短期大学を卒業したのは1995年の春。就職氷河期に就職活動をしなければならなかった世代です。そのころの求人倍率は0・7倍。「17社と面接して、ようやくジーンズを販売する会社でアルバイトの仕事に就けました」
そこで4年間働き、正社員で働ける事務職に転職しました。パチンコの両替プリペイドカードを作っている会社は7年後、倒産しました。
やむなく派遣会社に登録したものの、「30歳を過ぎると求人がないのです」。泣きだしそうな顔で話す五十鈴さん。この1年間で16社の「事前面接」を受けたもののすべてが不採用でした。
「(事前面接は)労働者派遣法違反ではないですか。違反しても罰則規定がないためにやりたい放題。法律を改正して処罰できるようにしてほしい」。厚労省の担当者にただす五十鈴さん。「事前面接に行かされても交通費は出ません。根本的解決は正社員をもっと増やすこと」と怒ります。
同法26条は、事前に面接をしたり、履歴書を送付させたり、年齢の若いスタッフに限定したり、性別を指定したりする行為を違反として禁止しています。そのために派遣先の企業は「顔合わせ」「業務打ち合わせ」などと称して脱法行為をしているのです。
違法な事前面接だけでなく、五十鈴さんが怒りを感じるのは、派遣先の人事担当者から「結婚はしていますか」とか、「結婚の予定はありますか」などとセクシュアルハラスメントの質問を浴びせられることです。
履歴書の事前提出は違法になるため、派遣会社は「スキルシート」という名の職歴や資格取得などの個人情報を網羅した資料を派遣先企業のために用意します。事前面接で「1分間自己PRしてください」と露骨に要求されたという五十鈴さん。こうした違法な事前面接を行った企業は食品会社や電機会社などの大手です。「法律事務所でも事前面接されました。厳正に取り締まってほしい」と、厚労省担当者に迫りました。
担当者は「適切に対応していきたい」と、指導を約束しました。
運動の成果も
愛知県では今年、最低賃金額が20円引き上げられ714円(時給)になりました。民青同盟愛知県委員会は、まだ要求からかけ離れていますが、日本共産党や労働組合といっしょに運動してきた一定の成果だと確信しています。
県内すべての高校に配布された小冊子(愛知労働局の委託事業)に、今年から有給休暇制度などの解説が付け加えられました。これも民青同盟などが繰り返し要求してきたものです。
12月6日には、ネットカフェ難民の実態調査を県に要請しました。県内には厚労省の調べでネットカフェ難民が全国の24%、1300人いると推計されています。他県から働きに来た若者が体を壊して会社の寮から追い出されたケースや、トヨタの下請け企業がネットカフェを労働者の寮として利用している実態も告発しました。
串田県委員長は来年への抱負を語ります。
「名古屋市だけでなく近郊にも活動の輪を広げていきたい。豊田市は4割が青年です。子育て中の青年もさまざまな問題を抱えており、告発調査をしたい。それに来年こそ、青年のためのユニオンを結成したいですね」
■民青同盟が日本共産党と共同で行った厚労相への要請書(11月12日)
1、最低賃金を全国一律時給1000円以上へ引き上げ、正規と非正規の均等待遇を実現すること
2、日雇い派遣などの雇用形態を禁止し、偽装請負、サービス残業などの違法行為を根絶すること
3、有給休暇の取得の保障、労働時間の短縮、社会保険の加入、健康診断の実施など、雇用主に責任を果たさせるとともに、青年労働者に権利の周知・徹底を行うこと
4、短期雇用の女性たちが保育などの労働福祉サービスを利用できるよう行政が援助すること
お悩みHunter
遠距離恋愛を4年間彼女の親が結婚反対
Q 来年、4年間の遠距離恋愛をしてきた彼女が首都圏で就職できるようになり、結婚しようと思っています。ただ、彼女の両親が「共産党だから」と結婚に反対しています。なんとか一緒に祝っていただきたいと思っているのですが…。(28歳、男性、東京都)
愛情を理解してもらえば…
A 憲法上、結婚は「両性の合意のみに基づいて成立」するとされ、2人が成人であれば「親の反対」は法的に何の障害にもなりません。
ところで、彼女の両親に祝福されて結婚したいというあなたの気持ちはもっともなことです。
彼女のご両親が一番願っているのは、彼女の幸せではないでしょうか? このご両親の気持ちにあなた自身がよりそい、尊重する姿勢を忘れないでください。
そして、あなたの人柄を信頼してもらうこと、あなたの彼女を幸せにしたいという気持ちや、彼女との関係をまじめに築いてきたあなたの彼女に対する真摯(しんし)な愛情を両親に理解してもらうことが大切だと思います。
そのうえで、あなたの信条や生き方は、結婚生活においても、彼女を尊重し対等なパートナーとして、ともに生活を築いていくという姿勢と不可分であることなどを率直に情熱をもって話してはいかがですか。
すぐには理解してもらえなくても、焦らないでください。時間をかけることが必要な場合もあります。
4年間の遠距離恋愛を成就させたあなたたちのことですから、誠意をもって両親と接していけば道は開けると思いますよ。
弁護士 岸 松江さん
東京弁護士会所属、東京法律事務所勤務。日本弁護士連合会両性の平等に関する委員会委員。好きな言葉は「真実の力」。
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