2007年12月24日(月)「しんぶん赤旗」
年金施設 たたき売り
2年で147物件
69件は営利企業に/54億が8億円落札も
年金記録が二千万件近くも「特定困難」となっているなか、国民が納めた年金や健康保険の保険料をもとに全国各地に建設された「サンピア」「ハートピア」などの「年金福祉施設」が、この二年間に百四十七物件(二十三日現在)も売却されていたことが、本紙の調べでわかりました。建設会社や大手マンション業者を含む営利企業には、判明しただけで六十九物件が売却されており、国民の貴重な財産がもうけの対象となっている実態が浮かびあがりました。
本紙が調査
年金福祉施設の売却は、二〇〇五年十月に発足した独立行政法人「年金・健康保険福祉施設整理機構」がすすめているもの。社会保険庁による年金流用や巨大施設への年金積立金投入などへの批判が高まりましたが、自民・公明両党は同年六月、問題の原因究明をすることもなく、年金・健康保険福祉施設整理機構法を成立させました。〇九年度までに全国の年金福祉施設三百十三施設、四百八十物件を廃止・売却しようとしています。
同機構は、入札によって売却をすすめていますが、〇五年十二月から〇七年十二月二十一日までの入札百五十一件のうち、落札されたのは百四十七件。うち、落札者の同意が得られず、落札者名が「法人」(五十四件)、「個人」(三件)とだけしかわからないのが、五十七件。落札者名が公表されている九十件のうち、学校法人や医療法人、財団法人、自治体などを除くと、営利企業は六十九件にのぼります。
企業名は明らかになっていませんが、約五十四億円を投じて建設された石川県の「サンピア小松」の落札額がわずか八億三百三十万円など、国民の財産がたたき売りされているのが実情です。
企業名が明らかになっている六十九件のうち、穴吹工務店(高松市)グループは、三件を落札しています。(表参照)
「サンピアさぬき」を取得した「穴吹ハートレイ」(高松市)は、地元紙によると、「国民年金健康保養センターかがわ」(同市)も〇六年十一月に一億円で取得しています。同社は、機構側が落札者を公表していない「法人」のなかに含まれています。
問われる拙速さ
大手マンション業者の「長谷工コーポレーション」は、東京・錦糸町の土地(約千六百八十平方メートル)を二十八億円で落札、すでに十五階建てマンションがほぼ完成して入居募集を始めています。さらに、「サンピア和歌山」を、「日本商業開発」とともに四十二億六千五百万円で落札、商業・住宅の複合施設開発を計画しています。
温泉レジャー会社「大江戸温泉物語」(東京・江東区)は、岐阜県の「ヘルシーパル下呂」を〇六年十一月に一億七千百万円で落札、一泊四千九百八十円の「宿泊プラン」を宣伝したり、同年十二月、岡山県倉敷市の王子が岳温泉の健康保険保養センター「ホールサムインせとうち」を一億二千万円で取得しています。
売却・廃止が予定されている施設のなかには、経営状況のよいものや、リハビリテーション医療など地域医療に欠かせない存在となっている厚生年金病院もあるだけに、拙速に売却をすすめるやり方は厳しく問われる必要があります。
穴吹工務店グループが取得した物件
名古屋健康づくりセンター 15億1000万円
ハートピア松江 2億6062万円
サンピアさぬき 5億1384万円
(金額は落札額)
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