2007年12月25日(火)「しんぶん赤旗」

姥捨て山か

75歳以上医療制度

列島中で「やめよ」


 75歳以上の高齢者を対象に2008年4月から導入がねらわれている「後期高齢者医療制度」。すべての後期高齢者から保険料を取り立て、年齢によって医療を差別する内容に、「現代の“姥(うば)捨て山”ではないか。許せない、やめさせよう」との声が列島中に広がっています。


老人会

「暮らせない」

 「姥捨て山の医療は許せない」「少ない年金から介護保険料に加えてさらに保険料も引かれたら暮らしていけない、負担増ばかりではないか」

 後期高齢者医療制度の内容が知られるにつれ、こんな驚きと怒りが広がり、中止・撤回を求める声が上がっています。

 高知市の老人クラブ連合会(一万三百人)は理事会で、「高齢者は暮らしていけなくなる」として、国と県に後期高齢者医療制度の実施中止・撤回を求める決議を全会一致で採択し、署名運動に取り組んでいます。

 社会保障推進協議会(社保協)や日本共産党がすすめている中止・撤回を求める署名は、二百万を超えました。

 北海道の老人クラブは社保協の申し入れに応じ、約一万人分の署名を返送してきました。青森県の老人会では「共産党から署名要請がきた。みなさんぜひ署名しましょう」と会長が声をかけて用紙をまわしています。

 山梨県や長崎県では町の有権者の10%、人口の15%の署名を集めたところもあります。三重県では、創価学会員が「これは創価学会、共産党といっている場合ではない」と署名。「あの人のところにいったら」と訪問先を紹介してくれました。

医師会

「皆保険崩す」

 医療関係団体も異議を唱えています。日本医師会は制度の全面見直しを要求。大阪府医師会では日本共産党の申し入れに、「後期高齢者医療制度は医療費抑制政策そのもの。年齢によって医療内容が変わってはいけない。安心して受診できる制度とするよう取り組みたい」とのべました。

 日本共産党の中林よし子衆院比例中国ブロック候補と懇談した碓井静照・広島県医師会長は、制度の導入によって国民皆保険制度が崩されることを危ぐしているとのべ、「アメリカに追従して貢ぐカネを減らし、社会保障に向けるべきだ」といいました。

地方議会

意見書300超

 世論を反映して、三百をこす地方議会で中止・撤回や見直しの意見書が可決されています。

 福島県議会の決議は、制度そのものの凍結を要求しています。東京の区市町村の七割にあたる四十四議会、北海道の三十六市町村議会、高知の六市七町村(県人口の67%)が意見書を可決しています。

 和歌山県御坊市議会では、制度の見直し決議を可決した日に、保守系や公明党の議員が連名で、「制度の凍結・廃止」要望書を地元選出の国会議員に送りました。

広域連合

困惑を深める

 制度の実施主体である「広域連合」も困惑を深めています。広域連合は、市町村から選出された広域連合議員で構成されています。

 これまで東京、北海道、京都、埼玉、千葉、神奈川の六都道府県の広域連合から国へ意見書が出されています。負担軽減のため国の財政負担を求めることなどが中心ですが、制度の説明や広報を国の責任で行うよう求めるものが増えています。

 広域連合の議員には、日本共産党から二十二都道府県で三十八人の地方議員が選ばれ、活動しています。日本共産党の議員は、広域連合のなかで制度の内容を明らかにして中止・撤回を国に働きかけるよう求めるとともに、高齢者の医療が守られることを求めて奮闘しています。京都では「実施凍結を求める意見書」に日本共産党や民主党系議員など三分の一近くが賛成しました。

自公与党

批判にあわて

 国民の批判の高まりを前にあわてた福田内閣と自民・公明の与党は、七十四歳以下の窓口負担の値上げを一年間凍結(一割)し、後期高齢者の保険料についてサラリーマンの扶養になっている人だけ、半年凍結(徴収なし)するなどの「見直し」を決めました。

 しかし、制度全体は四月にスタートさせるとしており、負担増を遅らせるにすぎません。


ひどい中身知らせて必ず撤回を

小池晃政策委員長の話

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 後期高齢者医療制度の内容を急いで知らせることが、今一番大事なことです。各地の話を聞くと「七十五歳からよくなると思っていた」(大分)との声もあります。署名用紙を手に対話を広げ、懇談し、学習会やシンポを開き、内容を伝えていきましょう。

 そのさい、役立つのはパンフ『10問10答とことんわかる後期高齢者医療制度』です。自治体職員の間で「この制度を知るには『赤旗』が一番」と活用されています。

 老人クラブは全国に十二万六百五十(会員数八百五万人)あります。共産党支部や党員が地域の老人クラブを訪ねて、懇談し、交流しましょう。私も二十日、全国老人クラブ連合会を訪ね、一緒に中止・撤回の声を高めようと申し入れました。齋藤秀樹事務局長は「拙速で高齢者の理解も追いついていない。高齢者の医療抑制はあってはならない」とのべました。

 広域連合や自治体にも働きかけ、自治体ぐるみの運動を発展させていきましょう。医療が年齢で分けられ、切り捨てられるのは憲法二五条が定める生存権をないがしろにするものです。医療・社会保障の各分野でのたたかいと合流させて、中止・撤回させるまで運動を発展させましょう。


パンフレットひっぱりだこ

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 パンフレット『10問10答とことんわかる後期高齢者医療制度』(日本共産党中央委員会発行、写真)がひっぱりだこです。二十二日に発行されて数日で注文は九万を超えました。後期高齢者医療制度の内容が簡潔に紹介されています。

 仕組みは…自民・公明両党が強行した「医療改革」法によって導入が決められ、七十五歳以上の人を対象にしています。導入されると二〇〇八年四月から、今まで加入していた国保や建設国保、健保から脱退させられ、新しくできる「後期高齢者だけの医療保険」に加入させられます。

 保険料は…保険料が年金(月一万五千円以上)から、介護保険料と一緒に天引きされます。サラリーマンなどの扶養家族だった人も新たに保険料を払う必要があります。保険料は、収入や都道府県ごとに決められ、一律ではありません。政府は全国平均で月六千二百円と説明してきましたが、多くの都道府県でこれを上回る見通しです。国保料を超える例もあります。二年ごとに改定されるため、値上げが確実視されています。

 医療は…保険料を一年以上、納めることができなければ、保険証がとりあげられます。医療抑制を招くと批判をあびている国保と同じ資格証明書が発行されます。政府は保険のきく医療に上限をつけることを検討しています。年齢によって受けられる医療を制限しようというのです。



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