2007年12月25日(火)「しんぶん赤旗」

主張

政府予算案

展望なき「構造改革」への固執


 福田内閣が二〇〇八年度予算の政府案を決定しました。一般会計総額は八十三兆円、政策的経費である一般歳出は四十七兆円で、税収見込みが五十三兆円と低迷し、国債による借金が二十五兆円となっています。

 福田康夫首相は「構造改革」路線を堅持した予算案だと強調しています。額賀福志郎財務相は記者会見で、「一言でいえば『成長と改革』の予算だ」とのべました。

くらしと経済の障害

 ゆきづまりが明確になっている「構造改革」路線への固執こそ、くらしと経済を立て直す最大の障害となっています。

 「構造改革」路線を財政面で具体化した二〇〇六年の「骨太方針」は社会保障を歳出抑制の標的とし、消費税増税を税制「改革」の柱にしながら、経済成長によって税収を増やすという方針を打ち出しました。

 同時に歳出面ではグアム基地の建設を含む米軍再編など軍事費を聖域とし、歳入では国際競争力を名目に大企業への減税の大盤振る舞いを前提に据えています。

 この「構造改革」路線の矛盾が噴出しています。

 政府予算案は来年度も、高齢化で増える社会保障予算の二千二百億円の削減を盛り込みました。米軍への「思いやり」予算をやめれば、即座に二千億円の財源を生みだせるし、生活保護の「母子加算」の段階廃止は兵器価格の水増しを一部改めるだけで中止できる予算額です。

 高齢化に伴う社会保障の増加を無理やり抑える「構造改革」路線は、貧弱な社会保障を底割れさせ、「医療難民」「介護難民」など悲痛な現実となって表れています。

 歴代厚労相さえ社会保障費の削減は限界だと表明しているほどです。これ以上患者や家族、庶民の負担を増大させることは許されません。

 厚生労働省の調査によると、国内総生産に対する社会保障給付費の割合が30%近いドイツ、フランス、20%を超えるイギリスに対して日本は17%程度にすぎません。社会保障を中心とする社会的な安全網が極めて貧弱なまま放置されていることが、一九九〇年代後半の不況をより深刻にしたように、日本経済の大きな弱点になっています。

 世界経済の結びつきがますます強まり、国際的な経済環境の変化の影響が大きくなればなるほど、国内経済、とりわけ内需・家計の安定がいっそう重要になってきます。ところが「構造改革」路線は、社会保障の削減や雇用の不安定化などを通じて、もともと弱かった日本の家計を徹底的に痛めつけてきました。

 内需・家計を冷やす「構造改革」の矛盾が、アメリカ経済の変調によって改めて表面化しています。

 「構造改革」路線の「成長戦略」は、大企業の競争力・収益力を強めていけば、企業収益がいずれ家計にも波及するというものです。ところが、リストラと輸出頼みの大企業の好業績はすそ野が広がらず、政府予算案でも税収の頭打ちが鮮明になっています。内閣府が発表した「日本経済2007―2008」は、「景気回復の家計部門への波及が停滞した状況にある」と分析しています。

家計を温める予算に

 「構造改革」路線は、額賀財務相が自慢する「成長」と「改革」の両面で、展望のないゆきづまりが鮮明になっています。

 「構造改革」路線を転換し、大企業減税と軍事費の「二つの聖域」にメスを入れ、家計を温める予算に抜本的に改めることが必要です。



■関連キーワード

もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp