2007年12月29日(土)「しんぶん赤旗」
イラク戦争 民間軍事会社とは?
〈問い〉 イラク戦争に深くかかわっている民間の戦争請負会社とは? 高額の給料にひかれた日本人も犠牲になったとか、40カ国近くの国から加わっていると聞きました。資金がどこからでているのかをふくめて実情を知りたいです。(京都市・一読者)
〈答え〉 民間軍事会社(PMC=プライベート・ミリタリー・カンパニー)とよばれる、軍事分野での民間請負会社の活動は、イラク戦争においても活発で、世界中から4万人以上が警備員などの身分で仕事に就いているといわれています。
PMCに雇われた要員の数は、イラクに部隊を派遣している米国を除く各国のそれぞれの派兵数をはるかにしのいでおり、民間の請負なしにはイラク占領もありえないという状況になっています。要員は、特殊部隊に所属していた元兵士や、その道の経験がなく訓練もまともにうけていない「まがいもの」まで多種多様といわれています。
PMCは、イラクを占領している米軍が、国内の「治安維持」活動に専念するため、米大使館員などの警護や、復興事業にかかわる各施設の警備、兵站(へいたん)・補給、輸送など、占領活動の一端を「代行」しています。米英などのPMCは米政府と多額の契約を結び、戦争特需で大もうけしているのです。
ニューヨーク・タイムズ紙は、過去4年間、米国務省がイラクで活動するPMCに支払った額は、10億ドル(約1150億円)から40億ドル(約4600億円)にはね上がったと報じました。
イラクでのPMCの存在が世界で知れ渡ったのは、2007年9月16日に17人の死者を出した米ブラック・ウォーター社要員による民間人射殺事件です。米下院政府改革委員会が07年10月にまとめた報告書によると、同社は05年から195件の銃撃事件に関与し、これらのうち実に8割が、同社要員の方から最初に銃を発射していることが判明しています。イラクで問題を起こしているのは同社だけではありません。
不審者とみなしたら民間人を無差別に殺し、イラク国民から「無法者」とみられているPMC要員ですが、占領直後に発足した暫定行政当局(CPA)は、同要員にたいし政府の訴追を受けない免責特権を与える法規を定めました。現在、イラク政府は、この免責特権をはく奪する法案を議会に送っています。
PMCの活動は、イラク戦争以前から存在します。とくにソ連崩壊後の90年代、アフリカや旧ユーゴスラビアなど世界各地で起きた紛争で、PMCが戦争コンサルタントとして暗躍したといわれています。
PMCの増大は、一国の安全保障に大国の民間企業が介入するもので、国家主権をないがしろにしかねない事態を招く危険性をはらんでいます。(遠)
〔2007・12・29(土)〕