2008年1月4日(金)「しんぶん赤旗」
08社会保障
矛盾深める抑制路線
後期高齢者医療制度に批判
貧困と格差を拡大した「構造改革」の基本を引き継いだ福田政権。しかし、「社会保障費抑制」路線は、自民党内からも「限界」という声が出るなど、国民との矛盾を深めています。与党が過半数割れした参院の状況や解散・総選挙の行方もからみ、命と暮らしを守る世論と運動が一段と重要になる一年になります。
約五千万件にのぼる「宙に浮いた年金」記録問題や「消えた年金」問題は、二〇〇八年も引き続き福田政権・与党を揺さぶり続けています。
問われる年金
政府は昨年十二月から、年金記録を国民自身に確認してもらうため、年金受給者と加入者合わせて約一億人に送付する「ねんきん特別便」の発送を開始。今年十月までにほぼすべての受給者・加入者の手元に届く計画です。
しかし、「特別便」では、年金記録の漏れが本人に通知されない仕組みになっており、すでに受け取った人たちから、「これでは役に立たない」と不満が上がっています。本人に記録漏れの情報がきちんと伝わるように改善が必要です。
与党は、「一人残らずきちんと年金を払う」と昨年の参院選で公約していましたが、昨年末には約二千万件の年金記録が「特定困難」であることが判明。政府のずさんな年金記録の管理への不信の拡大は必至となっています。
公的年金の制度そのものも問われています。政府・与党は〇四年、「百年安心の年金制度」などといって、国民の負担を増やし、給付を減らす年金改悪を強行しました。しかし、すでに高すぎる保険料が払えない「未納問題」など制度の根本的な矛盾が噴出しています。政府・与党は〇九年度から年金財源の国庫負担を現行の三分の一から二分の一に引き上げることを法律に明記しましたが、実現が危ぶまれています。
政府・与党は「社会保障にあてる」名目で、消費税増税を狙っており、空前のもうけを続ける大企業に応分の負担を求めることなど、社会保障財源をめぐる議論が政治の焦点となってきています。
「うば捨て山」
医療では、〇六年の医療改悪法に盛られた制度が動き出します。
後期高齢者医療制度は四月実施予定です。
同制度は七十五歳以上の高齢者全員から高い保険料を徴収(基本的に公的年金からの天引き)。保険料を滞納すると、保険証を取り上げる無慈悲な制度です。また、治療内容の制限も狙っており、「現代版『うば捨て山』」という批判が巻き起こっています。
参院選で大敗した与党は、現在扶養されている高齢者の保険料負担を一年先送りにするなどの一部「手直し」を施して、あくまで四月実施の構えです。しかし、制度の欠陥が大問題になっている以上、中止・撤回こそが必要です。日本共産党は、制度に危ぐをいだく自治体関係者、老人クラブ、医療関係者などに、政治的立場の違いを超えて、「四月実施の中止」の一点での共同を呼びかけています。
中小企業に勤めるサラリーマンが加入する政府管掌健康保険(政管健保=約三千六百万人加入)は十月から大きな組織改変が実行されます。現在、全国で一本化されている政管健保を社会保険庁から切り離し、全国単位の公法人「全国健康保険協会」を設立。都道府県ごとに支部を新設して、財政運営を任せるとしています。
その結果、現在全国一律の保険料率(収入の8・2%。これを労使折半)は、組織改変後には、都道府県によって異なることになります。保険料引き上げの仕組みもあり、「地域で保険料負担が異なるのは不平等だ」という批判があがっています。
〇七年は、医療費抑制政策による医師不足のもとで、各地で「医療崩壊」といわれる事態が深刻化しました。
四月の診療報酬(いわゆる「医療の値段」)改定では、医療本体では八年ぶりのプラス(0・42%アップ)だったものの、薬価を含む全体では引き下げに。小児科・産科などの医療危機を本格的に打開する方向ではありません。また、政府は、全国の公立病院の再編・統廃合を促進する「公立病院改革ガイドライン」を策定しました。これは「効率化」の名の下に、地域医療の切り捨てを進めるものです。
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