2008年1月4日(金)「しんぶん赤旗」
主張
08年の経済
ドルの覇権が転換期を迎えた
アメリカの経済覇権を支える構造に大きな転機が訪れています。その象徴となっているのが、国際経済をゆるがしている「サブプライムローン」(米国の低所得層向け住宅ローン)の破たんと原油の暴騰です。
基軸通貨体制のゆらぎ
アメリカの住宅バブルが崩壊し、低所得層を食い物にしたサブプライムローンの焦げ付きが世界の金融市場に不安の連鎖を広げ、株価やドルを下落させています。借金まみれで消費を増やし、「最先端」の金融市場が世界の投機資金を引き寄せるという、米経済の膨張の仕組みそのものが打撃を受けています。
石油価格の国際指標となっているニューヨーク先物市場では、ヘッジファンド(国際投機集団)や機関投資家が巨額の「ペーパー取引」を繰り返し、価格をつりあげています。
一九八〇年代にレーガン政権がエネルギー市場を自由化し、ニューヨークで先物取引が始まりました。原油市場の「カジノ化」は、エネルギーを市場にゆだねる「市場原理」政策の根本的な失敗を示しています。
サブプライム問題と原油暴騰の二つの衝撃が明るみに出したのは、市場万能論の土台の上に金融投機で利益を蓄積するアメリカ経済と、その血液であるドルへの不信です。
ドル安はかつてなく深刻です。アメリカは貿易と財政の「双子の赤字」を抱えていますが、黒字を続けてきた「所得収支」も国の借金返済の増加で急降下しています。FRB(米連邦準備制度理事会)によると、主要通貨に対するドルの価値は過去四十年で最低に落ち込んでいます。
ドルが下落し、資金が流出してもドルが世界の資金決済で通用する基軸通貨である限り、FRBが金融緩和し、ドルを増刷すれば支払いには困らないかもしれません。しかし、いま、アメリカが戦後六十年間ほしいままにしてきた基軸通貨国の地位が曲がり角にさしかかっています。
ユーロの定着、産油国のドル離れの動きに加えて、中南米・アジア諸国が、ドル基軸体制を支えてきたIMF(国際通貨基金)から自立し、地域の自主的な通貨政策を模索し始めていることです。
こうした流れは世界経済の構造変化に根ざしています。各国通貨の実力を表す購買力平価で見ると今年、世界経済に占める先進国の比重が初めて五割を割り込む見通しです(IMF推計)。米国の比重が二〇〇〇年の21%から19%に低下し、代わって中国の比重は11%から17%弱に伸びています。
経済の自主的発展の道
世界経済に重大な混乱をもたらしてきたアメリカの経済覇権体制の根幹が崩れ始めるとともに、アメリカに深く従属してきた日本経済の進路が鋭く問われています。
アメリカの介入と財界・自民党政府の追従は、日本経済の危機と矛盾の大きな要因となってきました。八〇年代には金融政策への介入で急激な円高に見舞われ、九〇年代以降は公共投資基本計画や米国流の規制緩和の押し付けで、財政赤字、雇用悪化、地域経済の疲弊など、国民のくらしに深刻な被害が及んでいます。
異常な対米追従は自民党の経済運営ゆきづまりの大きな原因です。アメリカのくびきを離れて自主的な経済政策を確立することは、財界・大企業中心の政治の転換とともに、くらしと経済を安定的に発展させる上で避けて通れない課題です。
アジア諸国との連携を深め、日本経済の自主的な発展の道を切り開くことが、いまほど強く求められているときはありません。