2008年1月9日(水)「しんぶん赤旗」
主張
08年の食料・農業
農政転換に踏み出す年に
食料の安定した生産と供給、農漁村など地域社会の健全な発展にむけた取り組みが、新しい年の緊急な国民的課題になっています。
輸入に頼れなくなる
昨年後半から顕著になった国際穀物価格の急騰は、食料品や飼料の価格を上昇させ、国民生活をじりじりと圧迫しています。同時に、地球温暖化による農漁業の生産条件の悪化や食料資源の減少、発展途上国の人口増とバイオ燃料による需要の急増などのため、国際的な食料不足が現実の問題になっています。
昨年秋から、インド、ロシアなど六カ国が、自国消費を優先しコメ、小麦などの輸出規制を実施しました。中国も大豆、トウモロコシ、ソバなどの輸出数量制限を設けたと報道されています。金にあかせて世界中から食料を買いあさってきた時代は、確実に終わろうとしているのです。
自民党政府が続けてきた自由化一辺倒、国内生産の切り捨て、小泉内閣以来の「構造改革」路線のもとで、日本の食料自給率は39%と四割を切りました。コメをはじめ農産物の生産者価格の低落で、生産をあきらめる農家や耕作放棄農地が激増するなど農業生産の基盤崩壊がすすんでいます。地域経済と地域社会の崩壊も深刻になっています。
農業の再建と地域社会の再生に道をひらくことは、新しい年のまったなしの課題です。昨年は一部の大規模経営だけを農政の対象にする品目横断的経営安定対策と政府がコメの需給にいっさい責任をもたない「農政改革」が全面実施され、参院選挙ではこの農業・農村切り捨て政策に対する怒りが与党を敗北させました。
さらに、品目横断対策の農家選別による現場の大混乱、昨年産米の米価の大暴落は、農民・農業団体の怒りをいっそう高めました。農民連を先頭にした集会と政府交渉、農協関係の決起集会などで、コメ政策、品目横断対策の中止・変更を求める声がわき起こりました。
その結果、米価暴落対策では、備蓄米の三十四万トン買い入れ、備蓄米の安値放出中止などを実施させ、米価の大暴落に一定の歯止めをかけました。品目横断対策について政府は、対象農家や集落営農の要件緩和、米価暴落対策の拡大、助成金の早期支払いなどの手直しを行い、名称も「水田(北海道は水田・畑作)経営所得安定対策」に変更しました。国民の声が政治を動かす新しい政治の流れとともに、「農政改革」が政策的に破たんしていることをも示しています。
政府は、「制度の内容の普及・浸透が十分でないことによる不安」があり、「制度の基本は維持しつつ、地域の実態に即した所要の見直し」(農水相の年頭所感)をしたという認識です。昨年の米価暴落要因の一つである備蓄米の安値放出も次年度には再開する計画であり、米作減反については、目標達成に国が積極的に関与する、強制減反に戻そうとしています。米価暴落の原因も農家・農村の危機も解決するものではありません。
激動の情勢に立ち向かい
日本共産党は、農業を国の基幹産業に位置づけて、適切な国境措置と価格保障を柱に、家族経営と国内生産を発展させ、食料自給率を向上させる農政に転換するために奮闘してきました。米価暴落をくいとめ、農家・農村を守る当面のたたかいも、農民連をはじめ関係者と共同して推進してきました。
新年を農政転換に踏み出す年とするために、この取り組みを激変する食料・農業情勢にふさわしく発展させるよう、いっそう力をつくします。